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政治の意思で「脱原発」を━━「2030年代原発ゼロ」をめぐるたたかい

政治の意思で「脱原発」を━━「2030年代原発ゼロ」をめぐるたたかい

中央道笹子トンネルで起きた崩落事故で、9名の方のいのちが奪われた。心からお悔やみを申し上げるとともに、二度とこのような事故が起こらないように徹底した原因究明を行い、他のトンネルの安全確認を急がなくては。

12月1日に、私の地元・高槻で公開討論会が行われた。とくに違いが際立ったのは、やはり原発政策だった。「原発推進か、脱原発か。脱原発なら今後いつまでに、どのようにゼロにするのか」という質問に対し、自民党の討論者は「今回の原発事故は人災。事故が起こったことを想定しての対策をぜんぶ、やれることやったうえで、イエスかノーかを議論すべき。イエスノーだけにしばられるべきではない。次の世代にとってもっとも安全なものは何か、という観点から考えていきたい」と回答。

しかし公約に脱原発依存をうたうはずの維新の会の討論者は「フェードアウト、原発ゼロ、20年代や30年代やと数字が踊っているが、数字を躍らす割には具体策がかけている。まだこれから技術開発や使用済み燃料がどうなるかわからないなかで、そんな10年先20年先の問題に政治家がきっちりと約束できる、こう考えるほうが無理がある」「(CO2を)削減せずに脱原発という方々は、どれくらいの二酸化炭素が増えるのか、ということ。失敗した場合は電気料金が倍、3倍になるリスクはおいますよということ。そして、日本の経済が空洞化するリスクも負いますよ、ということまで言ったうえで、覚悟をもって原発ゼロと言わなくてはいけない」と回答。

あれ、フェードアウトというのは維新の会の公約ではないかと思っていたら、橋下さんも「原発ゼロは無責任、期限を切れるわけがない」と言い出した。これは、福島原発を視察した際に、故郷を失ったひとたちの前でわざわざ「原発ゼロは無責任」と言い放った核武装論者の石原さんと同じ。いったいどうしちゃったのか。

「原発ゼロは無責任」「期限を切れない」という政治家は、要はいままでの利権構造をそのまま認めます、と言っていることに等しい。官僚や財界などとは初めからたたかえません、と言っているのと同然だ。そんな政治家たちが、原発をいつの間にか54基も日本につくった。

何より、20年30年先のことを考え、実現の道筋をつけるのが政治家の仕事だ。自民党政権からずっと続いてきた利権があるのだから、抵抗があるのは当たり前。それでも私は、例えばJALをいったんつぶして再建させ、赤字の関西空港も再生させた。国民世論の過半数が「原発ゼロ」をのぞんでいるこの状況で、2030年代に原発をなくすことすら決断できなくて、いったいどんな改革ができるというのか。官邸のなかで、そして政権与党のなかで激しくバトルした私だからはっきり言える。原発ゼロは政治の意思で道筋を描ける。

そもそも、解散が決まってから橋下さんはいっさい市役所にいかず、役人への支持はメール、とのこと。大阪市長の仕事が片手間でできるとは思えない(かつて石原さんも週の半分しか都庁に行っていないことが大問題になっていた)。その感覚で国政を考えているとしたら、国の運営をなめている。誇張ではなく、24時間、どんなときでも国政を考え続けて走り続ける決意と覚悟と体力がなければ、国会議員としてのまともな働きはできない。

原発をめぐる国会の議論も、とても片手間にできるようなものではなかった。

私は、17年間の国会議員生活のなかで、公開討論会で出たような「脱原発はムリ」「原発がなくなれば日本経済はだめになる」という意見とたたかってきた。業界団体とべったりな国会議員は与野党を問わず、多数存在したからだ。

国会議員になる前のピースボート時代には、いまは亡き原子力情報室・高木仁三郎さんらといっしょに、海から日本の原発をめぐる「日本一周原発クルーズ」などの企画を実現させた。

一年生議員のときは、科学技術委員会に所属した。当時はJOCの事故などがあり、科学技術委員会は「事故処理委員会」といわれた。私も、事故現場を視察するなどして、やはり高木さんたちと連携して追及を重ねた。

そして福島第一原発の事故が発生。背筋が凍るような思いを何度もした。首相補佐官となった私は、余震が続く中、まずともかく「もっとも危ない原発」である浜岡原発を停めよう、当時の菅総理に繰り返し進言。官邸内でも議論を重ね、浜岡原発の停止要請を行った。

もちろん、民主党のなかにも、「原発ゼロは無責任」「期限なんか切れない」「自然エネルギーが広がる保障は何もない」と、あの福島第一原発の事故の後も、強固に唱える国会議員がいまだに存在する。

私は、この8月に党のエネルギー政策を決める「エネルギー・環境調査会」の副会長に選ばれた。この会議は、「原発ゼロ」で腹を固めていた枝野経済産業大臣や古川前国家戦略担当大臣の動きを封じるため、推進派の官僚らが動いて無理矢理に設置したともいわれていた。実際、調査会の設置は突然だったし、すでに党としてはエネルギー・環境プロジェクトチームで一定の結論を出していたから、これ以上何を議論するのか、という意見も聞こえていた。

背景がどうあれ、私は「党の決定がゼロ以外なら、政府もそれにしたがわざるを得ない。きわめて重要な会議になる」と身を引き締めていた。すでに、推進派が党内であやしい動きをしていることも伝わってきていた。

民主党の全議員が参加できる平場の議論では、程度の違いはあれ「原発ゼロ」の声が7割を超えるのに、反対派・推進派がバランスよく(?)選ばれた役員会では、同数になってしまう。私は、菅前総理や福山前官房副長官らとともに数週間にわたって論陣をはり、与党としては画期的といえる「2030年代原発ゼロ」を勝ち取った。実際はぎりぎりの攻防で、結論を出す当日朝まで「2030年15%」と書かれた案が採用されようとしていたのだ。

調査会の議論がはじまると、推進側の業界団体は、推進派の議員や一年生議員を中心にペーパーをもってまわってロビイングを繰り返し、調査会ではペーパー通りの発言をする議員も多かった。また、推進派の官僚の動きも露骨だった。調査会の議論を通じて、何度も原案が出しなおされたが、私たちが文言を修正させると次の日にはまったく別の文言がこっそり忍び込んでいる。その都度文書を細かくチェックし、突き返すという作業が延々と続いた。クローズドのはずの調査会の役員会なのに、カーテンの裏で誰かが聞き耳を立てているのでは、と疑うほどの徹底ぶりだった。

この調査会の最大の争点は、「原発ゼロ」を、そして期限を定めるかどうかだった。「原発推進」の立場の議員の主な論点は、以下の4つに整理できた。

      原発を停めたら、経済はまわらない。再生可能エネルギーは原発にかわるエネルギー源にはなりえない。
      原発ゼロにしたら、家庭の電力料金が倍になり、国民生活を圧迫する。
      アメリカの原発技術はすでに日本に依存している。日本が原発ゼロを決めたら、アメリカが困る。
      「政府が原発ゼロを決めたら、なし崩し的に最終処分地になってしまうのでは」と青森から懸念の声が出ている。

私たちの意見はこうだった。

    1. 40年廃炉・新設はしないという原則をあてはめたら、2030年代後半に稼働する原発はわずか6基になる。うち2基は浜岡と女川なので、事実上4基の原発をどうするか、というのが原発問題の核心なのだ。日本経済がその4基の原発に頼らざるをえない現状であればあまりに脆弱。あらたなエネルギー源、新産業の創設は避けて通れない。
      再生可能エネルギーが抱える技術的課題は、核燃サイクルのそれに比べて極めてハードルが低い(ずっと莫大な税金が垂れ流されてきた「もんじゅ」は、まったく実用化のめどが立たない)。何より、政府が「いつまでにゼロ」と期限を切り、明確な政治的意思を示すことで、投資が促進され、技術革新をよぶ。これこそまさに政治の仕事である。
      そして、原発を稼働すればそれだけ使用済み核燃料が発生し、処分コストがかかる。結局、早い段階で原発を停めるほうがトータルコストは低い。
      政府が行った「参加型世論調査」で、当初「2030年15%」だった意見の人の多くが「2030年ゼロ」に流れたのは、次のような試算が示されたから。「ゼロ」にした場合の電気料金は最大2.1倍。しかし「30%」にした場合でも、最大1.8倍なのだ。わずかな差で、しかもいきなり倍になるわけではない。物価上昇や市場の拡大とリンクしながら、徐々にあがっていくのだ。第一、原発コストはあきらかに低く見積もられているのではないか。
      「アメリカが困るから日本は原発をやめられない」と福島の被災者の前でいえるのか。そもそも、日本が原発を作り続けることに対して、国際社会からは懸念の声もあるのだ。廃炉技術や除染技術を高めるなど、別のかたちの国際貢献は十分可能である。
      「青森がいやだというから原発ゼロは不可能」というロジックには怒りを感じる。これまで青森の方々には、多くの負担を強いてきたというのに。青森の方々が懸念しているのは、国に見捨てられるのではないか、国の支援がどうなるのか、雇用はどうなるのか、などの具体的問題だ。最終処分場の問題は、原発をゼロにするにせよ推進するによせ発生する。逃げずに議論すべき。
  • そしてそもそも、電気料金の決め方がおかしいといえる。いまの電気料金体系は、「まとめてたくさん買えば安くなる」から産業用は家庭用より安い。だが、限られた資源を使う以上、もはや逆にすべきではないか。東電が電気事業であげた利益の9割は、電気販売量では4割しかない家庭用であり、販売用の6割を占める産業用は利益の1割でしかない。

    結局総括原価方式は、電力会社のもうけを上乗せさせる仕組みで、原発稼働が前提になっている。また、福島第一原発の安定に必要な経費も含まれている。これは、原発事故のつけが利用者に回されているといえるのではないか。

    こうした議論を何度も繰り返したが、方針を決める当日になっても議論はまとまらない。そればかりか、最後の役員会に出されるペーパーは、「2030年15%」。私たちは座り込む覚悟で会議にのぞんだ。ピリピリする雰囲気のなかで、激しい議論の応酬。しかし、最後は前原政調会長(当時)が「2030年代の原発ゼロ」でとりまとめた。これは、自民党では決して生まれない結論だ。

    繰り返し述べてきたことだが、戦前最大の国策の過ちは、「日本は負けない」という神話のもとに突っ込んでいった戦争だ。そして戦後最大の国策の過ちは、「原発は安全だ」という神話のもとに54基もつくり、何万年にわたってシビアな管理を必要とされる使用済み核燃料を生み出し続ける原発政策だ。

    私は、勇気をもって間違いをみとめ、政治の意思でエネルギー政策の大転換をはかるべきと考える。

    全国にはさまざまな取り組みが始まっている。たとえば鶏糞を燃焼して発電することで、野積みなどで問題になっていた鶏糞の処理(年間10万トン!)をし、肥料づくり、そして発電という3つを行う「鶏糞発電」などのとりくみが始まっている。

    太陽の光を農地の作物と太陽光発電とでシェアする「ソーラーシェアリング」のとりくみも面白い。一定量を超えた太陽光は作物にとって必要ないため、細い太陽光パネルを農地の上にはりめぐらせようというアイデア。農地転用が不要で、新たな技術的課題もない。農家にとってもいい収入源になる。問題は送電網の整備になるため、国がどれだけ後押しできるかにかかっている。

    フクシマを体験した私たちの責任で、エネルギーと産業、生活スタイルの大転換をやりとげなくては。これこそが、子どもたちへの最大のプレゼントだと私は思う。

    これからの4年間は、日本の「これから」にとって本当に大事な時期となる。いわば、脱原発に向けた土台作りの期間だ。ここで、どんな政治家を国会に送り込むかで、私たちの未来は大きく変わる。

    液状化する政界の、明日は見えない。政界再編は間違いなく起こる。でも、同じ顔が看板だけ変えてもだめ。人気者にすりよるだけの「腰巾着」をいくらそろえても、この国の利権を支えてきた岩盤のようなしくみを崩すことはできない。

    政治を本当に変えるなら、「看板」よりも「人」。「政党」よりも「個人」。

    選択権はみなさんにある。

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