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「給料の電子マネー支給」にリスク多数…不正利用で全額消えても補償ゼロ?

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写真・朝日新聞

 かつて、給料は現金を手渡しでもらうものだった。それが銀行振込みになったのは、1968(昭和43)年に発生した「三億円事件」がきっかけだったという。そして、その銀行振込みすら「懐かしい」と思う時代が、すぐそこまで来ているらしいーー。

 1月28日、厚生労働省の労働政策審議会で議論されたテーマは、「給与の電子マネー払い」についてだった。電子マネーに詳しい、「ポイ探」代表の菊地崇仁氏が解説する。

「今回、議論されたのは、給料を『〇〇ペイ』などの電子マネーの口座に振り込むことも認めよう、というものです」

 じつは現在でも、給料は現金での支給が原則で、銀行振込みは例外として認められている。今回はこの例外に、電子マネー口座への振り込みをくわえてはどうか、という提案が議論された。その背景には、社会のキャッシュレス化を進めようという、政府の思惑があるという。

「日本のキャッシュレス化率は20%台と、海外に比べ著しく遅れています。また、外国人労働者のなかには、日本で銀行口座を開設するハードルが高いため、給与を現金でしか受け取れない人もいる、という問題があります」(菊地氏)

 この「電子マネー給与」が実現したら、我々の生活には、どのようなメリットがあるのか。菊地氏に聞いた。

「まず、銀行でお金を下ろす際の、余計な手数料を払うことが減ると考えられます。電子マネーの利用者は現在、現金やクレジットカードでチャージして、買い物に使うのが主流ですが、電子マネーの口座に給与が直接、振り込まれるようになれば、『チャージ』という行為をする必要がなくなります」

 また、送金の手数料も無料だ。今回、利用が議論されている電子マネーは、「資金移動業者」と呼ばれる業者が提供しているサービス。スマホでQRコードを読み取り、あるいは読み取らせる「ペイペイ」や「楽天ペイ」などが、その代表だ。その名のとおり、お金を別の口座に移動させることは認められているが、利息をつけることなどは禁じられている。

「家族の口座や、他人の口座へ送金する場合、銀行を使ったら手数料が発生しますが、これらの電子マネーサービスなら手数料無料で送金できます。なお、こういった送金サービスのない、Suicaやnanacoなどの電子マネーは、今回の議論では対象外です」(菊地氏)

 電子マネーは、使うたびにポイントがつくものも多い。給与が電子マネー振込みになったら、効率よくポイントを貯められる可能性がある。

「たとえば、『この電子マネーを給与の振込み先に指定したら、ポイントがつく』といったサービスが出てくる可能性はありますね。『給与振込み口座に指定したら優遇します』という、同様のサービスをおこなっている銀行もありますから。

 また、実際に給与の電子マネー振込みが動き始めるとなったら、最初は各業者が顧客獲得を競って、かなり大きなポイント関連のキャンペーンを仕掛けてくると思います」(菊地氏)

 もちろん、給与が電子マネーになることには、不安な部分もある。なにより、現金ほどの “汎用性” がない点だ。

「たとえばペイペイなら、買い物にはペイペイの加盟店など、限られた場所でしか使えません。送金についても、同じ電子マネー同士なら送金手数料は無料ですが、ペイペイと楽天ペイの間では送金ができないなど、使い勝手が悪い部分もあります」(菊地氏)

 また、銀行などを経由して、電子マネーを現金として出金することもできるが、その場合の手数料は現在、非常に高く設定されていることが多い。まったく現金を扱わずに生活するのは、実際には難しいので、結局どこかで手数料を払うことになりそうだ。

 そして、さらなる不安について、サイバー犯罪に詳しいジャーナリストの山田敏弘氏が指摘する。

「銀行口座に給料が振り込まれて、それを下ろして現金として使えば、どこで何に使ったかは第三者にはわかりません。でも電子マネー決済なら、いつ、どこで何にお金を使ったか、すべて記録に残ります。いわば、個人の行動が丸裸にされるわけです。

 中国では、すでに多くの人の収入が電子マネーの口座に入り、そこから住宅ローンなどをネット決済で支払うようになっています。個人の収支データが、当局によって蓄積されているわけです。日本も、中国のようになるかもしれません。私は、できるだけ使いたくありませんね」

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