
お笑いの殿堂・吉本興業がザワついている。
世間を騒がせた振り込め詐欺グループの忘年会などへの〝闇営業〟から2年、今度は、所属芸人の電撃的な“吉本離れ”が勃発している。吉本興業に今、何が起こっているのか?
引き金になったのは昨年12月末のオリエンタルラジオ中田敦彦の電撃退所だった。しかも、中田から退所を知らされた相方の藤森慎吾も行動を共にすることを決意したのだが、中田については3月中旬にもシンガポールに家族で移住すると言う。
吉本に詳しい芸能関係者は、「藤森は悩み考えた末にコンビでの活動を残したくて退所したのかもしれませんが、現実には中田との温度差が歴然としているので、今後については不透明な部分が多い」とした上で、
「両者ともに『円満独立』をアピールしていますが、ただ、藤森自身は想定外の部分が多分にあったと思いますね。藤森は現在、『王様のブランチ』(TBS)や『日曜ゴルフっしょ!』(テレビ東京)など、不定期出演番組も含めると5本のレギュラー番組を持っていますが、その番組については退所後も継続が決まっています。
おそらく吉本も公取委の目を気にしての措置だとは思いますが、今後は吉本からのサポートも得ない状態で個人でどう仕事の幅を広げていくのか…、早急に将来のビジョンを考えていく必要はあると思います」(芸能関係者)
中田の場合、退所することは「決意していた」だけに、今はカラッとした気分だろうが、一方の藤森にとっては、やはり本音の部分ではスッキリしないジメッとした思いが続いているのではないだろうか。
中田敦彦が許せなかったのは「3割のピンハネ」?

それにしても、中田が退所に至った理由は何だったのか? 吉本に詳しい芸能ライターが語る。
「オリエンタルラジオを結成し、『武勇伝』をネタにした芸風が受けた。さらに、ダンス&ボーカルユニットの『RADIO FISH』を結成して発売した『PERFECT HUMAN』が大ヒットし、紅白にも出場しています。
そんな中田にとって転機になったのは3年ぐらい前にダウンタウンの松本人志を批判したことでした。今の吉本のトップ陣はダウンタウンのマネジャー上がりなので、松本を擁護するのは当然です。吉本は、中田に対して松本への謝罪を要求したなんて話まであったようですが、水面下では、お互い悶々とした関係が続いていたはずです。
そんな状況の中で、中田が2019年に立ち上げた『中田敦彦のYouTube大学』が大ブレイク。チャンネル登録数は300万を超え、YouTubeだけでも年間2億円以上もの稼ぎになっていると言われています。
ところが吉本は、何もしてくれなかったのに、その稼ぎの中から3割を持って行ってしまう。もちろん吉本にとっては所属芸人なのだから“ピンハネ”は当然なのでしょうけど、中田にとっては『納得いかない』ことだったんです。
しかも、テレビの出演もロクになく、昨今は吉本との関わりも減少していたようなので『もう吉本にいる必要はない』と判断したのでしょう。ただ、だからと言って藤森までも追随するとは思いませんでしたけどね」
中田自身も「オリラジ」の名前だけは残しておきたいと思っているようだ。4年後の2025年には東京・日本武道館でライブを行う計画もあると言うのだが、現時点での中田は芸人としてのリアルな活動はひとまず停止し、家族と共にシンガポールに移住して、まずはYouTuberとして新たな人生を歩むことになりそうだ。
ところで、シンガポール移住については一部からは「節税も考えた上での行動」などとも言われている。
マネジャーに不満爆発 キンコン西野の退所騒動

そんなオリラジの退所騒動が冷めやまないうちに、今度はキングコングの西野亮廣である。さすがに「またしても、お笑いコンビか!」なんてツッコミたくなるが、1月末付で吉本を退所したことを明らかにした。
西野は絵本や映画などの制作、さらにはラオスに小学校を建設するなど、幅広い活動を繰り広げており、その“マルチ活動”ぶりは業界でも有名だった。その中で最も成功したのが「オンラインサロン」の運営だ。吉本を担当する芸能記者は言う。
「サロンは月額980円で、会員はおよそ7万5000人いるそうです。つまり、それだけで年間9億円近い売り上げになります。西野はさまざまな活動をしていますが、サロンの運営だけでも十分にやっていける計算になります。
しかも彼の場合、活動を始める時の資金調達としてクラウドファンディングなども積極的に行っており、もはや吉本に所属しているとは言っても、その枠を超えてしまっていたことは確かなんです」
とはいえ、西野自身、吉本に所属していることは何だかんだ言っても「信用」になるし、メリットも多かったはずだ。それが退所になったのは、自らのTwitterで吉本批判に加え、サロンの会員にマネジャーの不満を実名入りで流したことだったと言われる。
「西野の行為には吉本も激怒したようです。吉本としては、所属芸人はもちろんですが、マネジャーの名誉も守らないとやっていけませんからね。で、結果として退所ということになった。西野も自分の行為に対しては『やり過ぎた』と反省していましたけどね。ただ、吉本に対しては以前から不満もあったようですから、最終的には話し合いの上で円満退社となったことは確かでしょう。
正直なところ、西野はプライドも高いですし、常に強気な姿勢を見せていますが、本音の部分では吉本側から退所を切り出されるとは思っていなかったと思いますけど」(前出の芸能記者)
ここでオリラジと違うのは相方の去就だ。コンビを組んできた梶原雄太は吉本を辞めないことを宣言している。さすがに、梶原にとっては吉本を離れる選択肢はなかったのだろう。
「業界的にはオリラジの中田や藤森、さらにはキンコンの西野が退所したことは大きなニュースですが、吉本にとっては大したことがないと思いますね。なにせ6000人もの芸人が所属しているわけですから。
中田や西野などのように、クリエイターとして優れた能力があったり、ズバ抜けた才能を持った芸人やタレントにとっては、YouTubeのように自ら稼げるメディアが登場してきたことは、大きな自信になると思いますよ。
なにせテレビに出るよりYouTubeで動画を配信した方が、よっぽどメリットが大きい。そもそもテレビの世帯視聴率は100万人が1%と言われているので、中田の場合は常に3%の視聴率のメディアを手にしていることになります。個人のメディアとしては大きいと思います。
西野にしてもサロンだけで年間9億円近くも稼げるんだったら、媚を売ってテレビなんかに出るよりも効率的だと思いますけどね。いずれにしても、今回の退所は吉本にとっても、芸人にとってもメリットは大きいと思います」(前出のスポーツ紙記者)
西野はこれまで吉本のマネジャーに不満があったようだが、今後は自らパーソナルマネジャーを探してやっていかなければならず、少なくとも、これまでのように幅広い活動が出来るかどうかは疑問だ。

ちなみに、吉本では2019年秋に極楽とんぼの加藤浩次、ハリセンボンの近藤春菜、友近らもマネジメント契約からエージェント契約に切り替えている。
エージェント契約で言うと、先ごろ女優の森七菜もソニー・ミュージックアーティスツとの契約が大きな話題になった。
YouTubeやTikTokなどネットを使ってファンを増やす時代であり、芸能界も変わらざるを得ない状況に来ている。その先陣を切っているのが、あるいは吉本興業なのかもしれない。