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「家族」「会社」以外の繋がりを作らないと終わる

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リアル30's
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毎日新聞社
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 毎日新聞の連載企画「リアル30’s」が単行本化された。2012年11月10日には、刊行記念のトークライブが行われて(参照)、Parsleyもお邪魔させて頂いたので、本書やイベントの感想のようなものを記しておきたい。

 本書は、毎日新聞のくらし面に連載された取材記事とツイッターでのやり取り、そして記者の取材記が掲載されている。記事に関しては、NPOを立ち上げ事例という「成功」と、失業者・精神疾患になった例などの「失敗」にフォーカスされて間がないような印象があったが、それを編集部とユーザーとのtwitterでのやり取りが補完されていて、より「リアル」度が高まっている。
 また、各記者の皆様が、当事者である30代の方が多く、ご自身の軌跡を振り返る文を寄せているのも興味深く読んだ。新聞記者というと「勝ち組」というイメージを持ちがちだが、職を得るまでの紆余曲折やお仕事をする上での悩みというものは多かれ少なかれ共通するものがある。それが素直に告白されていて、日々の記事では分からない記者の素顔が垣間見えるというのは、双方向なメディアの時代ではとても大切なことだと感じた。

 類型書として挙げられるであろうシロクマ先生の『ロスジェネ心理学』が30代の過去にさかのぼり心象風景を描いた上でその心理面と処方箋のヒントを詳らかにした一方で、『リアル30’s』は30代が現在直面している問題と、その振る舞いや立ち位置について、どのようにしているのかが明らかになっている。両書とも、30代よりも特に上の世代に読んで貰いたいな、と思う。

 さて。トークイベントでは写真家の青山裕企氏が「人間関係がどんどん広がり、会社で上司と後輩に挟まれ、結婚して親族との付き合いが始まり、身動きが取りづらくなるのが30代だと思う」というコメントをしているのだけれど。Parsleyとしては、狭い人間関係の中で安住しているというのはリスクが高いと考えている。

 私の場合、2004年からブログを書き続けていたおかげで、それまでの毎日とは知り合えなかったであろう方々に知遇を得たり記事の執筆を貰えたおかげで、2010年に広告企画会社を解雇になっても、なんとか食べ繋ぐことができた。もし、自分がブログを書いていなかったら、とっくの昔に社会の隙間へ押し込まれて消えていただろう。
 家族だからといって本当の苦境に陥った時に助けてくれるとは限らない。離れて暮らしている場合は、自分の状況を理解してもらうためこと自体がストレスのかかる作業になる。また、自分が本当に望むことから後退を余儀なくされる場合もあるかもしれない。
 また、「家庭」というのは想像よりも脆くはかない。長い年月に渡ってパートナーでいられるような結婚相手かどうか見極めて選ぶケースはそれほど多くないような印象を受けるし、「日々のすれ違い」といった曖昧な理由でも解消されてしまうものに、過度に頼るのは危険。また、パートナーを解消するために払うコストも低いものではないし、物心両面で疲弊する可能性がある。

 同じように、「会社」も個人を守ってはくれない。正社員といっても労働組合がカバーしている企業の方が一握りでしかないし、「業務のために」と月200時間以上残業したとしても、一度心身を崩した場合は「つかいものにならない人材」とみなされてリストラ対象に成り下がる。
 しかも年齢を重ねるごとに転職するのは難しくなる。専門的な資格もなく、数社を渡り歩いているような「汚れた」経歴だと採用担当者から敬遠され、能力はあっても数ヶ月から1年以上に渡って新しい会社が決まらない、ということもザラにある。これも今の30代が直面している現実だ。

 となると、身内はもちろんだけど、家族や会社以外での「横」の繋がりを積極的に作っていかないと、自分自身が困った時に詰んで身動きが取れなく可能性が非常に高い。
 そのように「終わる」前にすべきこと。会社での業務や、家事をするリソースのうち少しずつでいいから、自分のやりたいことや趣味の時間を作っていくこと、それにより人間関係を多重にしていくことだとParsleyは考える。
 幸い、今はSNSなどで自分の趣味志向と近いひとと繋がるのに払うコストは以前よりも低いし、自分の考えをブログにまとめたり、Youtubeやニコニコ動画に投稿したり、様々なプラットフォームを使うことで自分を表現することができる。そこから新たなひととの繋がりが出来るための「道具」は揃っている。
 また、社会と繋がりを持つために、自治体やNPOなどが開催するフォーラムやイベントも増えている。同じ職種や異業種の交流会も探せばたくさん実施されているはず。そういう場に積極的に参加して、家族や会社とは違ったネットワークを作っていくと、有事の際に物心両面で支えになるし、なにより人生が豊かになると思う。

 そう考えると、一番ヤバいのは、「やりたいことがない」というひとや、「人間関係がめんどくさい」というひと。
 漫然と生きていけるのは僥倖に過ぎず、個々が何らかの努力をしたわけではないということに気付けないと、孤独死という最悪の結末にも現実味を帯びてくる。そうならないためにも、自分から興味のあることにはどんどん首を突っ込んで生きていった方がよっぽど安全だし楽しいよ。それくらいひととひとの繋がりって大切だ。

 閉塞感に潰されがちなのは何も30代には限らないと思うけれど、個人が孤立しがちだからこそ、「家族」「会社」「学校」といった組織単位ではない、一対一の人間関係を築いていくことが重要になっている。そうすれば、どこかの組織からこぼれ落とされたとしても、何とか生きていくことは出来るから、今ある人間関係だけが全てだとは思わずに、貪欲に他者の輪に入っていくことが求められているのだと再認識させられた次第です。

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