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インターネット選挙運動の解禁は政治をどう変えるか ~One Voice Campaignイベントレポート

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当日の様子(写真:One Voice Campaign・BLOGOS編集部)
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インターネット選挙運動の解禁を求め活動するOne Voice Campaignが中心となって呼びかけた第3回イベント「インターネットと『新しい政治』―その実現へ向けて」が11月29日に開かれた。日本は公職選挙法により、選挙期間に候補者本人・政党がホームページやSNSの更新を行うことはもちろん、第三者がネットで言及することも許されていない。しかし、ネットで党首討論が行われるなど、ネットと政治に関係は確実に変わり始めている。この状況を踏まえ、今回のサミットではネットが解禁されると、政治はどう変わるのか?、そして今の状態でもネットでできることは何かなど、前向きな議論が交わされた。(編集部:濱田敦子)

日本人の民度がモロに試されるツール

津田大介(以下、津田)このサミットは今日で3回目で、1・2回目を通じて超党派でがんばりましょうという機運はできてきました。それに、世の中の流れ的に通らざるを得ないという状況まで来ているので、そのうち必ず通るでしょう。だから、今日は通った後に我々と政治との関わりがネットでどう変わるかと言う話も含めて議論していきたいと思います。

オリンピックから政治の話題まで、twで発信を続けている為末さんにうかがいます。特に311以降に国民と政治が遠くなったと言われていますが、為末さんはどんな風に感じていますか?ネットで政治はどう変わると思います?

為末大・プロ陸上選手、株式会社R.project取締役(以下、為末)政治って、何と何が争っているのかよくわかりません。協力できないのはわかるんですが、じゃあ何が協力できるのかが全然見えてこない。その雰囲気と、twで相手を踏みにじる感じや、徹底的に違うものを避ける雰囲気がなんとなく似ているように感じています。だから、ネットを解禁しても日本人に民主主義的感覚が生まれるか疑問で、今のままでは解禁したところで「こいつを当選させようぜ」みたいなノリの運動が起こったり。民度がモロに出るものなので、プラスだけでなくマイナスの面も出るのではないか思うのですが。

津田:実は僕の新刊『ウェブで政治を動かす!』にそのあたりの答えが書いてあるんですが(笑)、非常に重要なご指摘ですね。メディア化されたら紙代などコストダウンになるとか、政治が身近になると言いますが、ネット選挙運動先進国のアメリカを見ていると違う問題も出てきました。先日の大統領選ではオバマだけでなくロムニーもネットをがんがん使い、大量の献金を集めた。そのお金を何に使ったかと言えば、メディアコントロール。つまり、紙代などのコストは減ったものの今度は情報戦になり、ネガティブキャンペーン対策にメディアコンサルタントや代理店がつける必要が出てきたんですね。

藤末参議院議員「インターネットだけの戦略で議員を誕生させてみたいんです」
藤末参議院議員「インターネットだけの戦略で
議員を誕生させてみたいんです」
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藤末健三・民主党参議院議員(以下、藤末)アメリカのように何でもやるのが前提だと暴走するでしょうが、日本は元々がんじがらめの中で、さらにネットもダメ。解禁してもやれることが増えるという段階なので、良い方向に動くと思います。それに、アメリカと日本では選挙に使うお金も桁違いですよね。とにかく私は、ここで議論をしていないで実証してみたいんですよ。全国比例の参議院選なら可能性があると思っていて、そこで一切プリントを使わず、インターネットだけの戦略で議員を誕生させたい。今は特定な政治基盤がある人しか出馬できませんが、そうなれば普通の人にもチャンスが出てくると思うんです。

平将明 自民党前衆議院議員ネット献金の話については、日本では集まらないですよ。ホームページやtwを使って定期的に「献金してください」と楽天のネット献金ページに誘導をかけていますが、集めたいお金の100分の1程度というのが現状です。でも、おそらく1億とか2億というお金が選挙にかかっていたと思われる中選挙区の時に比べ、小選挙区なら東京で2~3千万の選挙戦となったので、今までのように無理にお金を集めなくてもなんとかまわるようになりました。小選挙区になって「小者が増えた」などと言われたりもしますが、巨額のお金が必要だった中選挙区では、お金を出してくれる既得権益と結び付きやすかった。そういう意味で、お金がかからないようにするというのはとても大事だと思います。

それと、やっぱり構造を変えないとダメだと思うんですよ。今の公職選挙法では手足を縛られ、組織化された団体をもっていないと苦戦する。ここにネットという武器を与えることで、新規参入しやすくなると思います。さらに新規参入した後も、ネットを使えば既得権益の上に立つ候補者の情報発信に決して遅れを取らなくなる。民主党の組合勢力と、自民党の既得権益に新規で割って入りやすくするツールとして、ネットを解禁するのが重要だと思います。

津田:議員になるには地盤、看板、カバンがないとダメで、既得権益のある人しかなれないというのを打破するものとしてネットがあるということですね。一方で、多くの人にとって投票行動を選ぶためのネット使用がありますが、それがアメリカのようにネガティブキャンペーンだらけになるかは、仕組み作り次第だと思います。アメリカではネガキャンがある反面、市民メディアがFACTチェックを行っています。自民党の世耕議員などもおっしゃっていますが、プロバイダー責任法を改正するなど、公示期間中のネガキャンに対応するシステムを作るべきですよね。それともう1つ、ネットの活用は、ポピュリズムを加速するものでもあると思うのですが、このあたり宮台さんはどうお考えですか?

不完全情報を克服しリベラル化をはかる

宮台真司(以下、宮台)ネットの特長を生かし、民主主義を妥当に機能させる条件を考えてきた人物に、アメリカのサンスティーンがいます。彼は逆に「どういう条件があると、民主主義が集合的極端化をするか」について、2つのことをあげています。第一が承認を求めてポジショントークする人が溢れたとき、第二に情報が「不完全情報」の状態であるとき。つまり情報が完全じゃない状況の下では、ポジショントークをする人が極端な発言をすると、ピュアで男気があって潔く見え、それに反対する人がまるでへたれに見えるという極端化が生じるんです。同じように丸山眞男が「共同体が空洞化すると、クレージークレーマーが増える」というようなことを言っています。さらにそういう人が知識社会から疎外されていたりすると、歴史や社会や政治を知らない人間だからこそ軍事外交問題などで「やっちまえ」となり、世論がそちらに押し流されて、最終的には政治家が抜き差しならない状況に追いやられてしまうんですね。これをなんとかしなければならない。

熟議型世論調査の提唱者であるフィシュキンは、「共同体が空洞化する中でポジショントークをする人間が溢れるのはある程仕方ないことで、これは対処し難い。しかし、不完全情報を克服することはできる」と言っています。それは、極端な発言をする人間の言った通りにすると何が起きるかやがて適切な情報が与えられたり、対立な立場の人たちの議論から、どちらが優勢かを我々が見ることで克服されます。数合わせや動員のための議論ではなく、きちんとした話し合いであらゆる熟議が行われて完全情報化していくと、必ずリベラル化して極端化を避けられるんです。

だから、ニコ生やニコ動など、コメントを見ながら動画をサイマルに配信できることもひとつの追い風になり得ますね。とにかくネットの中でポジショントーク極端野郎がただのへたれだということを明かすようなシステムや、オフラインでインターネットの弱点を克服するような仕組みを作っていく必要があると思います。

津田:ポジショントークと不完全情報という話にあったように、実行されるべき政策が歪んだものになっていくことがあると思います。ここで関さんにうかがいたいのが、楽天の薬のネット販売の件。あの審議では、人ってここまでポジショントークしかしないのかと感じました。あの問題にネットがどうかかわったか、ぜひお聞かせいただきたいのですが。

関聡司・新経済連盟事務局長(以下、関):ネットはビジネスでも日常でも活用されている重要な通信手段で、特殊なものではありません。だから、ネットだからと特別扱いしてどうこうと言うことに違和感があります。薬のネット販売の件に関しても、通信販売のひとつの手段としてインターネットを使ったという性質のもの。販売することで国民の健康に被害や悪影響を及ぼすのであれば規制が必要だと思いますが、当時の厚労省も危険だと明確にすることができなかったために、現在裁判所で争う事態になっています。

ネット選挙運動にしても同じで、重要な通信手段であるインターネットを国民に使わせないというのは国の大きな不備です。情報の発信にも受信にも、インターネットは重要な位置づけとなっているので、ことさら情報が必要な選挙で制限することはあってはいけませんね。

原田謙介・One Voice Campaign発起人(以下、原田):僕は単純に何かに興味を持ったり、もっと知ろうとするきっかけになるものとしてある情報を、選挙という政治への興味がいつもより高まるタイミングで、なぜ制限するのか疑問です。縛ってしまうことで、興味をもたないまま普段の政治が進んでしまうことにつながります。そうなると何も変わらないじゃないですか。ネットのコアユーザーである若い人の声を本当に聞く気があるのであれば、早く解禁してほしいですね。さらには選挙期間だけでなく、普段からもっとネットを活用すれば、政治家にも有権者にとっても全体としてプラスになると思います。

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