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テスラの購入で再びビットコイン、そして暗号資産に脚光… それでも“通貨”にはなりえない?



 昨年末から再び上昇トレンドにあった暗号資産・ビットコインの相場。今月8日、イーロン・マスク氏率いるテスラ社がおよそ15億ドル(日本円で1600億円)を購入したことが“買い材料”となり、価格は一気に1BTC=約470万円と史上最高値を更新した。

・【映像】ジョナサン・アンダーウッド氏に聞く、テスラのビットコイン大量購入

 テスラは資産の運用先を多様化する方針を打ち出しており、「今後も随時、そして長期的に取得し、保持する可能性がある」とコメント。また、米SEC(証券取引委員会)に提出した報告書で「近い将来当社製品の支払い方法としてビットコインの受け入れを開始する予定である」としていたことから、暗号資産投資家の間で期待がさらに高まっている。



 今回のテスラの動きについて、仮想通貨取引所「ビットバンク」のジョナサン・アンダーウッド(CBO=チーフ・ビットコイン・オフィサー)は「2020年第4四半期の資料によれば、テスラには190億ドルの現預金がある。これをテキサス州やドイツの工場、新型電池、セミトラック(トレーラー牽引用のEVトラック)などに投資しているが、マスク氏が先にビットコインを購入していたマイクロストラテジー社の社長とTwitterでやりとりし、自社での購入を決断したのではないか。マスク氏は特に若い世代の間で“セレブ化”しているので、テスラ株に投資している人が暗号資産に投資している事も多い。マスク氏のツイートを見て、買いを煽られる感じになっているのではないか」と話す。

■「リスクヘッジとして購入する企業が増える可能性も」



 米国ではアップルの参入も取り沙汰される一方、スターバックスではビットコインによる決済が導入されるなど、“通貨”としての側面も見え始めているようだ。

 アンダーウッド氏は「実は暗号資産については少額決済が非現実的になってくるのではないかという見方があり、技術面ではそこをいかに効率化するのかが話題になっている。一方で、高額商品である自動車を購入する場合などは、低い手数料で送金できるのが魅力的だという面もある。私の友達もネタ半分で“1BTCでテスラが買えるようになったら買ってやるよ”と言われているが(笑)、日本でももう少しで買えるくらいの相場になってきている」とした上で、「リスクヘッジとして参入する企業が増えてくるのではないか。基本的には経済が不安定になると暗号資産の価格が上昇すると言われているが、最近では金融経済やコロナ禍での一時給付金などにより、それぞれの国家がお金を刷るため、通貨の価値が下がっていくのではないかと考えている人もいる。そういう中で暗号資産を買い上げるケースもあると思う」との見方を示した。



ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「“投資”の習慣があるかどうかが、暗号資産に対する日米の認識の違いにも現れていると思う。アメリカ人は余裕資金があると投資信託や株式を買ったりするが、日本人は銀行預金の方が好きだ。そして、日本では未だに“仮想通貨(クリプト・カレンシー)”と呼んでいるが、国際社会では“暗号資産(クリプト・アセット)”、つまり、あくまでも金融資産だという認識だ。“Appleが参入”と聞くと、あたかも暗号資産を使ったビジネスをやるかのように見えるが、現預金の一部を投資するという話だ」と指摘。「価格が乱高下しすぎて普通の人では付いていけないということにもなりかねない金融商品なので、それを日常的な決済手段としてどこまで使えるかはわからない。逆に言えばテスラとしては大きなリスクを背負って参入しているわけで、投資家に対してどう説明するのかも気になる」とコメント。



慶応大学特任准教授で若新雄純氏は「国家が信用を裏付けるのではなく、世界の人々の自律分散、相互信頼が暗号資産の価値の裏付け、理念のはずだと思っていた。ところがテスラ、あるいはGAFAのように、国家に近いレベルのインフラを提供している大企業が保有することで信用が裏付けられるようになってしまえば、そもそものコンセプトとは異なるものになってしまうのではないか」と指摘した。

■やはり暗号資産は“通貨”にはなりえないのか?



 若新氏の疑問を受け、佐々木氏は「まさにFacebookがリブラ、現在ではディエムに名前を変えた暗号資産でやろうとしていたことだと思う。確かに銀行が作ったシステムを通じた企業間送金は時間もコストもかかるので、それがブロックチェーン技術を用いた暗号資産によって円滑化されるというメリットはある。ただし、それをGAFAの力によってコントロールしていいのかという問題や、デフレやインフレが起きた時に中央銀行のようなコントロールできないのではないかという問題もある。そのため、法定通貨に対して固定されたデジタル通貨みたいなものの方がいいのではないか、という考え方がある。そしてステーブルコインになってしまえば通貨としては良いかもしれないが、それは今のような投機商品ではなくなってしまうし、むしろ電子マネーと変わらないものになってしまうということだ」と話した。



 ジョナサン氏は「投機的な側面が無くなってしまえば暗号資産の意味がないという論点もあるが、ビットコインのような管理主体のない暗号資産では金融政策が取れないという問題を解決するため、法定通貨に固定されたステーブルコインもあって、日本でも1円=1コインというものが出てきている。今のところ暗号資産を使った銀行振り込みなどの手続きはスムーズに行えないため、そうしたステーブルコインを中間のステップとして使うということになっていくのではないか。

 また、例えばDeFi(ディーファイ)という“非中央集権ファイナンス”が話題になっているが、これもスマートコントラクトといって、管理主体がいない中で取引されている。しかしこれとSuicaを連携させようとすれば、管理主体であるJR東日本のシステムと連携させなければならないが、そもそも互換性がない。逆に言えば、これからは暗号資産の新しい活用法や、それらと互換性のある形で電子マネー、デジタル通貨の設計もしていかないと、別々の経済圏が次々にできてしまう可能性があるということだ。ビットコインが勝つか負けるか、そこそこのところに行くのか、ということが、その先にあると思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
▶映像:ジョナサン・アンダーウッド氏に聞く、テスラのビットコイン大量購入

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