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選挙公報が選管サイトに初掲載、その最大受益者は

10月16日付け当ブログで、米大統領選でのプライバシー無視とも言えるネット活用の一端を紹介した。それに比べたら、日本は周回遅れというのも恥ずかしい。トラックにも入っていない状態に見える。

民主党は前回総選挙のマニフェストで<誹謗中傷の抑制策、「なりすまし」への罰則などを講じつつ、インターネット選挙活動を解禁する>と約束し、同時に発表した政策インデックス2009では<インターネット選挙運動解禁法案を成立させる>とまで踏み込んでいた。

民主党政権は、公約を何も果たせなかったけれど、唯一の前進は、今回総選挙から候補者の履歴や政見を述べた選挙公報が、従来の「紙」のみから、各都道府県選管のサイトにも掲載されることになったことだ。これも民主党議員が主導したのではなく、民間から登用された片山善博氏が総務相だった昨年7月に、参議院の委員会で「公選法で禁じているのは、候補者による選挙運動のネット利用であって、選管の利用は可能」という答弁をして一挙に動き出したもの。

その背景には、福島第一原発で県外避難を余儀なくされている多くの有権者にとって、地元選挙区の候補者の情報が得にくいという状況があった。それに対して、片山氏は「いろんなところに避難されているそういう方々にできるだけ多く早く情報を提供したいということでありますれば、そういうネットを通じて選挙公報に掲載しているような情報を一種の選挙公報として選管のホームページに掲載するというのは非常に有効な手段だろうと思います」という考えを示した。

そう判断するにいたった道筋もストレートだった。「今までは、正直言いまして、候補者のサイドのネット利用というものが解禁されていないといいますか、ネガティブな解釈をしておりましたので、言わば共連れのようなことで、選挙管理委員会のネット利用というものに対しても、恐らく総務省自体もネガティブな見解を各選挙管理委員会にお話をしていたと私は思います。ですけれども、法的には可能だと思います」

この結果、明日4日の公示後、各都道府県選管は、紙の選挙公報を配布するとともに、すみやかに、各候補者の選挙公報をサイトにアップするはずだ。避難した有権者に便利なだけでなく、一般の有権者にとっても、故郷やゆかりのある選挙区の候補者情報が得られて便利かもしれない。

実は、この前進の恩恵を受ける大きなグループが別にある。推定で88.7万人という海外在住有権者だ。在外選挙制度は1998年の公選法の改正で実現した。2005年までは比例代表制への投票のみだったが、現在は選挙区への投票が可能になっている。

しかし、総選挙は公示から投票まで12日間と短いため、海外有権者への「紙」の選挙公報は配布されてこなかった。一方で、候補者のネットを活用した選挙運動は禁止されているため、選挙公約などを詳しく知ることは出来ないままだった。それが改善されるわけだ。

とはいえ、ニューヨークの邦字紙「週刊NY生活」の最新号特集記事(座談会)によると、2010年参院選当時の海外有権者85万人中、実際に投票したのは2万8千人にとどまったそうだ。投票率3%!

この特集によると、投票には、まず在外選挙人登録証を取得する必要があるが、その取得に2ヶ月もかかりる。それを持っていても、投票には大使館や領事館などに出向くか、郵便投票しかない。在外公館に出向くのは地理的に面倒な人も多く、郵便投票は煩雑で、短い選挙期間では間に合わないこともあるのだという。

そこでインターネット活用の余地があるわけだが、インターネット投票は、ネット選挙先進国米国でも、安全性への懸念からまだ普及していないことからハードルが高いとしても、2か月もかかる選挙人登録には活用できそうだ。

国立国会図書館の「調査と情報514号」所収の「在外選挙制度」というレポートには「諸外国では(選挙人登録の)申請用紙をインターネットからダウンロードして使用できるようにしている 国が多い。申請用紙及び証明書類等に所定の事項を記入した後は、日本のように在外公館 に出向くことなく、それらを郵送するだけで登録が可能である」とある。

このレポートが書かれたのは、なんと6年半前である。選挙人登録の改善を怠ってきた日本。それゆえ、90万人近くの海外有権者中、在外選挙人登録者はわずか11万人にとどまっているという。

さらに、悪いのは、先の国会図書館のレポートによれば、「諸外国では、一旦、選挙人登録を行えば、選挙毎に自動的に投票用紙が送られてくる」とあるが、日本の場合は、そのつど、申請するのだという。しかも、そこでもネットは使えない! あらゆる面で周回遅れどころではないのだ。

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