記事

「性格がズボラだから…」母親の遺体を10ヶ月放置した男の不可解な動機

1/2

裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは、1月27日に東京地裁で行われた大森昌弘被告人(55)の死体遺棄の初公判。自宅アパートに母親の遺体を10ヶ月間放置して逮捕されたと報じられた事件です。

死体遺棄の事件は、殺害後に死体を隠す目的というパターンがほとんど。そのため、ニュースを耳にした時は母親の死に被告人が関係しているのかなと思いましたが、実際は全く違う斜め上の犯行理由が法廷で語られたのです。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一席空けで着席する傍聴席は満席。それくらい注目されていた事件なのでしょう。上下灰色のジャージを着た被告人が手錠と腰縄を付けられた状態で刑務官2人に連れられ、被告人席に着席して裁判はスタート。

起訴されたのは、2020年1月上旬に東京都豊島区内の被告人の自宅で実母(83)が死亡した事に気が付いたのに埋葬せず、11月10日まで死体を放置遺棄したという内容。被告人は罪状認否で罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は専門学校を卒業した後に飲食店などで働き、犯行当時は会社員として仕事をしていたといいます。被告人に前科はなく、今回が初めての裁判。母親と2人暮らしで、2019年10月頃に母親が体調を崩してから外出はしなくなっていたそうです。

2020年1月。被告人は母親が死亡した事に気付いたものの、埋葬せずにいたといいます。そして2020年11月10日。被告人の母親と連絡が取れないという事で役所の人が被告人宅を訪れ、白骨化した遺体を発見し110番通報をしたというのが事件の流れになります。

冒頭陳述を聞いただけでは、犯行の理由や動機はハッキリとしません。一体何があったのか……。

母親の遺体を放置「性格がズボラで…」


取り調べに対し被告人は「2019年10月か11月に母親の体調が悪くなり、外に出たがらなくなった。2020年1月6日に母親が亡くなった事に気付いたがそのままにしていた。日が経つと放置しているのが明らかになるので葬儀の連絡はしなかった」と供述しているそうです。この調書でも隠さなくてはいけなかった理由は見えてきません。

特に情状証人などはなく、被告人質問です。まずは弁護人から。

弁護人「お母様との最後の会話はいつでしたか?」
被告人「(2020年の)1月6日の朝だったと思います」
弁護人「どんな内容ですか?」
被告人「毎日母の食事を用意していたので『食べるか?』と。で、『食べる』と返事が返ってきました」
弁護人「お母様が亡くなっていると思ったのはいつですか?」
被告人「1月6日の夜です」
弁護人「なぜ亡くなっていると分かったんですか?」
被告人「仕事から帰ってきたら、朝会話したままの姿勢で電気つけっぱなしだったので」
弁護人「病院とかに連絡しなかったのはなぜですか?」
被告人「性格がズボラで……。どうでもいいと連絡を怠ってしまって」

犯行の理由はまさかのズボラ。母親の死亡を連絡しない原因をズボラの一言で片付けられても……。一応『ズボラ』を辞書で調べてみたところ「行動・性格がだらしのないこと。また、そのさまやそのような人」と書いてありましたが、10ヶ月も母親の遺体を部屋に放置する人は含まれていないでしょう。

弁護人「面倒臭がりなのですか?」
被告人「その通りだと思います」
弁護人「いろんな手続きを後回しにしてしまってた?」
被告人「はい。役所の手続きも……」
弁護人「家族に連絡はしなかったんですか?」
被告人「妹がいるんですけど、介護の相談もしていませんでしたし、一任されてたので疎遠になってました」

とにかく母親が亡くなったことは誰にも言ってなかったようです。

弁護人「お母様と2人暮らしを始めたのはなぜですか?」
被告人「10何年前に父が亡くなったんですけど、父が生きてる間に体が不自由になって母が面倒を見てたんです。で、お互いに高齢なので手伝ってくれないかと。私も独身なので同居することに」

老老介護が社会問題となっていますが、被告人の一家では70才くらいの母親が父親の介護をしていたようですね。大変なので被告人が呼ばれて3人で一緒に住む事になったようです。そして父が亡くなり、被告人と母親の2人で暮らしていたと。

弁護人「どんな介護をしていましたか?」
被告人「食事、買い物、洗濯。あとは入浴の補助くらいです」
弁護人「お母様とはよく会話をしていたのですか?」
被告人「いや、そうではありません」
弁護人「妹さんは介護をしていましたか?」
被告人「いや、していません」

弁護人「本件が発覚したきっかけは何ですか?」
被告人「役所の人が自宅を訪れたのですが私が出なくて。臭いで気が付いたのか110番したみたいで」
弁護人「お母様の確認はしていた?」
被告人「夏……いや6月か7月に見ました」
弁護人「どんな感じでした?」
被告人「黒く変色していました」
弁護人「警察に連絡しようとは?」
被告人「発覚するのを恐れてしませんでした」

1月に亡くなって、部屋に寝かした後は6月までそのままにしていたのでしょうか。そして6月か7月に見たのが最後という意味なのでしょう。これはズボラなのかと首を傾げてしまいますね。

弁護人「今後はどうしていきますか?」
被告人「生活保護で支援して頂き、いち早くどんな仕事でも見つけてアパートを借ります」

このように今後の生き方を述べて質問は終了しました。

あわせて読みたい

「介護」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「現場の国家公務員はお茶菓子も食べない」国家公務員の士気を下げる接待騒動

    国家公務員一般労働組合

    02月26日 22:33

  2. 2

    各国が頓挫するなか日本の教育支援が起こした南東欧の国・ボスニアでの「革命的変化」

    BLOGOS編集部

    02月27日 07:05

  3. 3

    地銀を三重苦の崖っぷちに追い込む「給与デジタル払い」解禁の裏事情

    大関暁夫

    02月27日 11:20

  4. 4

    政治未経験だったトランプ前大統領が受け、政治家30年以上の菅総理が受けない理由

    青山社中筆頭代表 朝比奈一郎

    02月27日 07:34

  5. 5

    「SDGsな未来へ」が意味するもの

    自由人

    02月27日 11:16

  6. 6

    スター・ウォーズファンたちが熱狂の『マンダロリアン』 日本のサムライ影響?

    BLOGOS映像研究会

    02月26日 07:09

  7. 7

    3月4月頃から世界や社会の流れが「逆流」するかもしれない話

    かさこ

    02月27日 09:52

  8. 8

    そろそろ、バブル崩壊はじまるかな!

    澤上篤人

    02月26日 15:50

  9. 9

    致命傷にはならないだろうが、やはり菅さんが受けた傷は深い

    早川忠孝

    02月25日 19:06

  10. 10

    養老孟司が語る「コロナの壁」とは? パンデミックで暴かれた“日本的空気”の問題点 - 伊藤 秀倫

    文春オンライン

    02月26日 19:50

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。