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【読書感想】地方選 無風王国の「変人」を追う

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地方選 無風王国の「変人」を追う

地方選 無風王国の「変人」を追う

  • 作者:常井 健一
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: 単行本


Kindle版もあります。

地方選 無風王国の「変人」を追う (角川書店単行本)

地方選 無風王国の「変人」を追う (角川書店単行本)

  • 作者:常井 健一
  • 発売日: 2020/09/25
  • メディア: Kindle版

内容(「BOOK」データベースより)
コンビニ店員、国際派テレビマン、サーファー漁師、発明家は、“再選率84.2%”の壁になぜ挑んだのか?マグロと原発の町、「飛び地」の村、60年も無投票が続く島…選挙を旅する異色ノンフィクション。

 地方選挙(地元の首長や議員を決める選挙)に、興味がありますか?
 僕自身は、長年、現職か新人の自民党公認候補と共産党の候補の2人が出馬し、公示された時点で結果も見えているような市長選や、病院に向けて大声で自己アピールする候補ばかりの(「私の母親もこの病院で亡くなりました!みなさんのご快復を願っております!」って演説していた人には、さすがに唖然としましたが)地方議員選挙ばかりをみてきて、選挙がはじまると、「また選挙カーがうるさい時期が来たなあ」というのが正直なところです。
 身内や知人が出馬しているか、原発稼働の是非のような何かその地方に特有の「争点」でもないかぎり、地方選挙って、誰が当選してもあんまり変わらないような気がします。

 ところが、「新型コロナウイルス禍」によって、存在感を増した首長がたくさん出てきました。
 逆に、多くの人に失望された首長も。

 周辺の市町村と比べられて首長の資質が厳しく問われるのはせいぜい、大災害への対応を誤った時である。

 例えば、避難勧告を出すタイミングは市町村長の判断によって分かれる。災害対策基本法は、非難の勧告・指示や警戒区域の設定などを市町村長の権限としているからだ。

それは首長個人の「危機管理能力」としてよそと比較され、その後の復旧・復興までをめぐる住民の不満が次の選挙の結果に反映されることはある。実際、2011年の東日本大震災の発生後に被災自治体で行われた首長選で現職の落選が相次いだことはまだ記憶に新しいだろう。

 しかし、それでも全1718市町村の中では、ごく一部の現象に過ぎなかった。

 大半の首長は自分の領地で起こるいさかいだけを丸く収め、あわよくば、外にも名が売れれば良かった。周辺の自治体と共通の課題に取り組む際も、隣町の老獪なベテラン首長に同調していれば事が済んだ。よそがどうであろうと、唯我独尊で許される。4年に1度の選挙さえ乗り越えられれば……。
 ただ、コロナはどうやら今までの「当たり前」に大きな変化を起こしそうだ。

 市町村レベルでも独自の救済策を講じ、スピーディーに打ち出せなければ、住民から不満が寄せられる。首長個人に発信力がなければ、埋没してしまう。先述の「給付率」のようにあらゆる行動がリアルタイムで数値化され、言い訳の通じないジャーナリズムの物差しを当てられ、他の市町村との優劣を比べられる。新しい競争の最前線に立たされる職員たちは疲弊していく一方、八方美人の国会議員はあまり当てにならない。周辺の首長たちはみんなライバルだ。

 感染抑止と休業補償のフェーズが落ち着けば、こんどは地方自治体の財政難が深刻な問題になりそうだ。国の緊急対策で市町村の大事な財源である固定資産税の減免や徴収猶予が行われた。さらに、リーマンショックを超える景気の悪化で税収が容赦なく落ち込もうとしている一方で、地域経済に向けた救済策はもちろん、検査や医療の体制を支えるための財政出動は抑えられない。近い将来には自治体の「貯金」に当たる財政調整基金も底をつき、財政破綻の危機に直面する市町村が続出するであろう。

 すなわち、首長の財政力もこれまで以上に問われる。
 こうしたコロナ以降のリアルが、有権者にとって首長の資質を判断する際の「新しいルール」となっていけば、次の選挙は今までと異なる戦い方を強いられることになるかもしれない──。

 ちなみに、現在の市町村選では、現職の再選率は84.2%だそうです。
 選挙に出て負ける現職は、6人に1人くらいという割合なんですね。

 地方の首長というのは、日頃の仕事そのものが地元民への認知度を高めることが多いですし、小さな自治体では、首長選に対立候補として出馬すると「裏切り者」的な扱いを受けることさえあるのです。2021年の日本でそんなことがあるのか、と言いたいところなのですが、日本がすべて東京、というわけじゃない。

この本で、著者は、「長期政権を築き、地元で圧倒的な力を持っている首長に挑戦状を叩きつけた『変人』たち」を追っています。長年やっている首長=悪、挑戦者=善、と外部からはイメージしてしまいがちだけれど、その地域の内部では「せっかくこれで今までうまくやってきたのに」と考える人も多いのです。

 その一方で、、長い間権力の座にあることで「地方の専制君主」のようになってしまった首長への表に出せない反発もある。

 読んでいて感じるのは、人というのは、よほどの危地に陥ったり、大きな改革の波にさらされないかぎり、変化を望まないものなのかもしれないな、ということなんですよ。
 

 著者は、大分県姫島村長選の取材のなかで、こう述べています。

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