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TPP交渉参加問題 国民的議論を欠き、拙速

「例外なき関税撤廃」を掲げる環太平洋連携協定(TPP)への即時参加は、あらゆる商品を事前準備なしで世界の激しい市場競争にさらすことを意味する。

確かに、中国など新興国が急成長しているのも、市場で必要な商品の売買ができるからだ。その恩恵は日本による輸出の増加として表れる。

この点だけを見れば市場経済は万能に思えるが、その一方で、市場は「市場の失敗」と呼ばれる負の面も持っている。市場の失敗とは、市場競争の結果が産業への打撃や公害など思わぬデメリットを社会にもたらすことである。

その代表例が2008年のリーマン・ショックだ。巧妙に欠陥が隠された金融商品が市場で大量に売買された結果、世界経済は「100年に一度」の大混乱に陥った。

市場の失敗を防ぐのは政府でも容易ではないが、例えばコメなど国民生活に必要不可欠な商品が関税で保護されているのは、まさに市場競争になじまないからである。

公明党が、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を積極的に推進し、将来的にはAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の加盟21カ国・地域によるFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想を実現すべきと考えているのも自由貿易のメリットとデメリットを慎重に比較考慮した上での判断だ。

TPP交渉参加問題に多くの人が疑問を投げかけるのは、対象が医療、介護、食品安全など生活に関係する広い分野にまで及ぶため、どのような市場の失敗が起きるか予測不可能だからだ。

特に農業はTPPの悪影響が最も懸念されている。

農業が地域産業の要である北海道は、TPPによる経済損失を2兆1254億円とし、道内全体で17万3000人の雇用が失われると試算するが、悪影響の範囲はこれだけでとどまらないだろう。

そもそも政府は、TPPの議論に必要な情報を国民に十分に示していない。野田首相は「国益の視点に立って結論を得る」(昨年12月)と主張し、TPP交渉参加に向けた関係国との事前協議を開始したが、国益とは何かを具体的にしていないことも不信感を高めている。

情報開示、国民的議論、国益に関するコンセンサス(合意)―の3条件を満たさず、TPP交渉参加を決めるのは明らかに拙速である。公明党が主張するように、国会に調査会か特別委員会を設置し、十分審議できる環境をつくるべきだ。

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