
[ロンドン 9日 ロイター] - 天然資源に対するガバナンス改善を目的とした非営利組織、ナチュラル・リソース・ガバナンス・インスティテュート(NRGI)によると、国営石油会社(NOCs)が今後10年間に石油・ガスプロジェクトに投資する4000億ドルが浪費に終わる可能性がある。これらの投資は、世界がパリ協定で定めた温室効果ガス削減目標を達成できなかった場合でも収支均衡に持ち込むのがせいぜいだという。
NRGIが「リスクの高い賭け」と題するリポートの中で述べた。
リポートは、今後10年間で国営石油会社による投資額が1兆9000億ドルに達すると推計。その2割は、原油価格が1バレル=40ドルを上回って推移しなければペイしないという。
エネルギー大手BPや仏トタル、ロイヤル・ダッチ・シェルなど民間各社は、長期的な原油価格見通しをすでに引き下げている。アナリストらによると、エネルギー革命の進展次第では一段の引き下げを視野に入れているという。
NRGIのシニアアナリストでリポート共同執筆者のデビッド・マンレー氏は「国営石油各社の投資は不確実性の高い賭けだ」と述べた。
サウジアラビアなど中東の産油国は、損益分岐点が低いため比較的影響を受けにくいが、アフリカや南米の国営石油会社は問題を抱えやすいという。
リポートでは、メキシコ国営石油会社ぺメックスやアンゴラ国営石油会社ソナンゴルが抱える巨額債務を懸念材料としたほか、長年にわたって国営石油会社の多くが抱える拡張至上主義的な考え方や企業会計における透明性の欠如も問題を複雑にしていると指摘している。
中でも懸念されるのはアゼルバイジャン国営石油会社(SOCAR)とナイジェリア国営石油会社(NNPC)で、特にNNPCの投資はエネルギー革命が急速に進展した場合、およそ半分が損失になる可能性があるという。
このほか、アルジェリアや中国、ロシア、インド、モザンビーク、ベネズエラ、コロンビア、スリナムも投資を見直す必要があるとしている。