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焦点:逆イールドは今や昔、長短金利差拡大が示す株高要因


伊賀大記

[東京 9日 ロイター] - 米長期金利が上昇しているにもかかわらず株高が止まらない。その「秘密」を解く鍵の1つは長短金利差にある。逆イールドカーブ(長短金利差の逆転)は過去となり、大規模な財政対策による景気回復期待やインフレ懸念で長期金利が上昇する一方、金融緩和で短期金利が抑えられ、利回り差は拡大。足元の景気が悪い中でも株高が進む原動力になっている。

<先行き期待を織り込む長期金利上昇>

リセッション(景気後退)の兆しとして警戒された逆イールドカーブが米国で発生したのは2019年秋から20年春にかけて。新型コロナウイルス感染症の影響を完全に織り込んでいたわけではないとしても、昨年は大きな景気後退となった。しかし、今や長短金利差はコロナ前を大きく上回る。

米2年債と10年債の利回り差は2017年4月以来、3年10カ月ぶりの大きさに拡大。2年債と5年債や、3カ月物政府短期証券(Tビル)と10年債なども、一時逆転していた長短金利差が開く中、株価も連動するように上昇してきている。

その要因の1つは、先行き期待を織り込む長期金利の上昇だ。「バイデン民主党政権による大規模な財政拡大に伴う景気回復期待に加え、国債増発やインフレに対する懸念を織り込んでいる」と、野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は指摘する。

バイデン米大統領が掲げる1兆9000億ドルの経済対策がそのままの規模で議会を通過する予想する声は少ないが、8000億ドル程度に縮小したとしても、先に決定した9000億ドル規模の追加経済対策と合わせると1.7兆ドルと米国の国内総生産(GDP)の1割弱に相当する規模になる。

一方、米国の向こう10年間の平均年間インフレ率の見通しを示す10年物米物価連動債(TIPS)のブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.2%付近と、2018年半ば以来の水準に達している。一般物価が2%を超えて大きく上昇するとの見方はまだ少ないが、期待インフレの高さも長期金利上昇の要因となっている。

<クリントン型とオバマ型>

短期金利が低位に抑えられていることも、長短金利差の拡大と株高には必要な条件だ。長期金利よりも短期金利が低いことが株高の大きな要因になることが、バイデン大統領と同じ民主党大統領の1年目の金融市場の動きをみるとわかる。

1993年にスタートしたクリントン政権は当初、財政赤字削減を進めたが、景気回復に伴い米連邦準備理事会(FRB)が94年2月から利上げに踏み切ったことで、政権期前半は長期金利と短期金利がともに上昇し、長短金利差は縮小、株価は伸び悩んだ。

一方、2009年からのオバマ政権ではリーマン・ショックからの回復で長期金利が上昇したが、FRBが政策金利をゼロに15年末まで据え置いたことで長短金利差が拡大。株価はそれまでの反動もあり、大きく上昇した。

ダウ平均株価の上昇率は、それぞれ発足年から2年間でみると、16%と32%と約2倍の差がついている。

足元の株高も「オバマ型」に近い。金融緩和による低金利環境が過剰流動性を生み出し、先行きの景気回復期待を材料に株式などリスク資産市場にマネーが流れ込む構図だ。今回もコロナからの回復と、低い短期金利環境の長期化を織り込んでいるとすれば、株高が長期化する可能性がある。

<日米比較、株価とドル/円>

株価と長短金利差の関係は、超長期の期間でみると相関性が強いわけではないが、長短金利が縮小した後に株価が下落トレンドに入るケースは多い。足元の株高も、長期金利よりも短期金利が上昇し始めるタイミングで、株価に強いネガティブ圧力が働く可能性がある。

日本の長短金利差は米国よりも小さい。短期金利は同様にゼロ%近辺に張り付いているが、長期金利が米国よりも低いためだ。「ワクチン普及のスピードの違いが、先行きの経済成長力の見通しの差となっている」と、シティグループ証券のチーフエコノミスト、村嶋帰一氏は指摘する。

2%の物価目標が遠い日本では、日銀による低金利政策は米国よりも長期化するとみられ、この面では長く株高を支えるとの期待もある。しかし、経済成長力やインフレ率が低い中では長期金利は上昇しにくく、株価は米国よりもアンダーパフォームする可能性がある。

GDPに対する政府の債務残高は米国の2倍以上あるが、この点を材料に長期金利が上昇し長短金利差が拡大したとしても、それはいわゆる「悪い金利上昇」であり、株価ににとってもネガティブだ。

ドル/円は105円半ばまで上昇してきたが、「ドル/円と関係性の深い米短期金利が上昇しない限りは上昇にも限界がある」(外資系証券)との見方も聞かれる。米株高が波及し、日本も株高が続く可能性もあるが、円安といったプラスアルファの材料には期待しにくい。

(伊賀大記 編集:田中志保)

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