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世襲制限よりも在職年齢制限と被選挙権の引き上げが必要

 民主党の執行部は、特にマニフェストをさすのであろうが、党議に賛成しなければ公認しないなどと言い出した。突然のことである。もう一つ急に強硬なことを言い出したのに、世襲の制限がある。そして、羽田雄一郎国土交通大臣は、参議院から衆議院長野3区への鞍替えを断念した。前者については、際どい事もあるので、今回は触れるのをやめておく。世襲制限については、いろいろ考えることがあるのでまとめておく。

<本当の世襲と単なる鞍替え>

 民主党の世襲制限は、決めたこととはいえ、非常に偏ったルールである。同一選挙区で息子なり妻が続けて選挙に出ることを禁止している。したがって羽田大臣の場合でいうと、13年前に羽田孜元総理(衆議院議員)の息子が急遽同じ県内の参議院に出馬しても世襲に当たらない。しかし、13年前こそ世襲であって、今回は、大臣まで経験した参議院議員が「鞍替え」するだけで、親の七光りで選挙するわけではない。結果として、世襲となるだけで、世襲の程度はずっと軽いような気がする。

<政治にはなるべくいろいろな人が必要>

 政治が家業になってはいけないということで、世襲を制限するには一理ある。つまり、政治というのは、なるべくいろんな声が反映されなければならない。そのためには、いろいろな経験を積んだバラエティに富んだ人たちが、それぞれの意見を交わして、政策を打ち出していく必要がある。

 これを徹底した例が、北欧の市町村にみられ、完全に直接民主制を地でいっており、市町村議会議員は、2期8年まででそれ以上は許さない。そして、議会は夕方6時以降から行い、選挙に出るときは、公的な休みを与えられる仕組みがあり、かつ落ちた場合も元の職場に戻れることも約束されている。普通の人を順番に議員にということになっている。

<何十年も国会議員をする弊害>

 国会議員は兼業(パート)ではとてもつとまらない。一方で、だからといって、あまりにプロ化、職業化することはよくないというなら、私は、何よりも1代で家業・職業になってしまっていること、つまり1人が何十年も国会議員を続けることこそ禁止する必要があるのではないかと思っている。その点で言えば、今回日本維新の会の代表となり、中央政界をにぎわしている石原慎太郎前東京都知事が、勤続25年表彰を期に衆議院議員をやめると宣言したのは、一つの見識だった。ただ、息子2人(伸晃、宏高)を衆議院議員にしているのはいただけない。更にその後80歳になってまた中央政界に出てこられるというのは、いくら若い者がだらしないと言い訳しても予想外のことである。

<25年永年勤続を花道に引退が筋>

 長すぎる政治というのはどこでも制限がなされる。アメリカ大統領は2期8年で3期目はない。民主化の遅れるロシアの大統領の任期も2期8年と決められていて、プーチンは8年やった後、メドヴェージェフが8年間大統領をやり、また大統領に復帰している。その点、民主党がお山の大将になりかねない都道府県知事や政令指定都市の市長を2期8年までとし、3期以上は推薦しないのは極めて合理的なルールである。

 こうしたことを考えると、国会議員も永年勤続表彰を受ける25年というのが一つの区切りではないかと思っている。となると、例えば、7期の大畠章宏は23年経っており、あと1期、6期の前原誠司は、既に20年弱経っており、あと5年、つまり2期ぐらいしか残っていないことになる。

 制度として確立しているわけではないが、産別の単組の参議院比例区議員は通常2期12年で交代しているし、かつてたくさんいた中央官庁OBの比例区参議院議員も、2期12年で交代している。これらは多くの人を国会に送り込むための自然に成立したルールなのだ。

<アメリカは州知事から大統領の理由>

 組織的経験という観点から見ると、アメリカの大統領は最近は、オバマ大統領を除くと、ブッシュ(子)、クリントン、レーガン、カーター、ニクソンと最近はほとんど州知事経験者がなっている。州の統治経験がそのまま国の統治につながるからである。20年前の細川護煕政権は、本人(熊本県知事)もさることながら、官房長官の武村正義も滋賀県知事であり、アメリカ型政権だったのだ。だからこそ、当選回数が少なくとも経験の座につけたのかもしれない。また、今、石原、橋下に始まり、日本未来党の党首、嘉田由紀子と、知事経験者が国政参加をし出すのは、中央政界のだらしなさの裏返しであり、ある意味必然かもしれない。

 そういえばかつていた会社経営者(小坂徳三郎、藤山愛一郎)も政界から姿を消してしまった。会社の経営と国の運営も相通ずるものがあり、こうした者が国会議員になりにくくなったのも、日本の政治の劣化の一因でもある。

 アメリカの大統領の政治歴の平均を調べたところ、18年であった。20年以上はともにベテランの副大統領として仕え、大統領の辞任で大統領になったジャンソンとフォード以外にいないのは意外であった。つまり、緊張感が強いられる政治は、30年もやれるものではないという証拠である。となると、よくいわれる年齢制限よりも在職年数制限が先である。

<必要な社会的経験>

 次に、もう一つ、被選挙権の制限が浮かび上がってくる。衆議院と市長村議会議員は25歳、それに対して、知事と参議院議員は30歳になっている。後者のほうが見識を要するということである。

 バラエティに富んだ経験、社会的な経験というならば、社会的な経験をほとんど積まずに政治家になることこそ問題である。だからといって、社会人としての経験を何年か積まなければ国会議員になれない、という制限はしにくい。そのかわり、平均寿命が80才を越える今、国会議員の被選挙権を35歳に上げ、それなりに社会的な経験を積んでから政治の世界に入るようにするのも、一つの考え方ではないか。何よりもこれ以上杉村大蔵もどきの政治家を作らないためである。松下政経塾もその弊害に気付いたのであろう、数年の社会人経験を条件として大学新卒は受け入れないようになったという。

 いろんなことを調整したり、根回ししたりするといった極めて常識的なことが、政治オタクの幹部クラスに欠如している。ただ、これは本人の資質の問題ではなく、あげて社会経験、特に組織人として仕事をした経験の欠如によるものである。

<40歳まで仕事をする二世議員のほうが20代で政界入りする野心的な若手政治家よりまし>

 二世議員と社会的な経験を全くしていない政治家とで、どちらがましかというと、社会経験の点では二世議員のほうがずっとましである。つまり、父親が政治家として70才ぐらいまで活動しているので、父親が早く亡くならない限りそう若くして政治家になることはできない。その他、だいたいが40近くまで普通の仕事をしていることが多い。その間に人並みの経験を積むことになる。今回、70歳過ぎて引退する、福田康夫、中川秀直、武部勤、大野功統、田野瀬良太郎は皆この類型である。

 そう考えると、今、秘書法により、配偶者だけが公設秘書になることが禁じられているが、息子・娘禁止する制限が必要になってくる。いきなり父親の秘書として政界に入ってしまうと、他の社会での経験を積む機会がなくなってしまう。また、中には、他で働いているうちに親の跡を継ぐのが嫌になる人もいるだろうし、いくらかでも政治の家業化も防ぐことになる。

<世襲制限と私の選挙>

 世襲については、私は政治家になったあと、2人の全く違ったタイプの政治家からアドバイスを頂いた。一人は、エコロジストの中村敦夫元参議院議員であり、国会議員の中で最初に私の応援に駆けつけてくれた人である。中村さんは4代目を叩けということで、昼間ほとんど人通りのない長野駅前で1時間以上街宣をしてくれた。その内容は江戸時代でも3代続くと徳川家以外の大名は移封された(領地を変えさせられた)。それを小坂家は4代も続いていると、痛烈に政治家業を皮肉った。その当時、小坂家は110年も続く政治家系で、世界一長い政治家系といわれていた。ちなみに、マスコミは第一回目の選挙を「50日対110年の戦い」と表現した。

 農水族議員として交流のあった鈴木宗男議員も、やはり4代目を叩けと手紙をくれた。しかし、私は演説等でただの一度も世襲について発言したことはない。なぜなら、私は人それぞれであり世襲が絶対的にダメだとは思っていないからだ。なおかつ現実的な問題として、4代目はおかしいと言っても、すぐ隣で、3代目の羽田雄一郎が応援に来てくれているのであり、とても触れられない事情があった。

<人生の盛りに政治家として活動>

 天才政治家小泉純一郎のDNAをそのまま受け継いだ進次郎を見ても分かるとおり、非常に優れた資質の4代目もおり、政界にとって世襲を絶対禁止することは得策ではない。バラエティに富んだ政治家を集める観点から言うと、一に25年の在職制限、二に被選挙権の年齢を35歳に引き上げることのほうが、やたら若くして政治をやりたがることがなくなり、有効ではないかと思っている。その結果、社会経験を積み、人生の盛り(例えばある人は体力を活かした30~55歳を選び、ある人は一仕事をした経験を引っ提げて50~75歳を選ぶ)に政治に身を置く人が増え、政治の質が高まることになる。

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