教えないスキル: ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術 (小学館新書 せ 4-1)
作者:佐伯 夕利子
発売日: 2021/02/01
メディア: 新書
Kindle版もあります。
教えないスキル ~ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術~(小学館新書)
作者:佐伯夕利子
発売日: 2021/02/01
メディア: Kindle版
スペインのフットボールチーム「ビジャレアル」。
日本の至宝・久保健英が選び移籍したクラブであり、
Aクラスに君臨するクラブとして、人気が高い。ビジャレアルのカンテラ(育成組織)はヨーロッパ及びスペインで
最も堅実な育成機関と評されている。
自前の下部組織からの選手が多勢いることからもわかる。2014年から、チーム一丸、この育成・指導大改革に携わった著者。
彼女はスペインで初の日本人クラブ監督に就任した経歴もある。★テーブルは丸テーブルに
★注意するときは「サンドイッチ話法」で
★「こうだよ!」を「どう思う?」の「問い言葉に」
★選手が選手を指導する「学び合い」作戦
★コーチ全員にビデオカメラ。指導法は客観視する、など。
スペインのサッカーチームで「レアル」といえば、まず「レアル・マドリード」を思い出すのですが、日本サッカー界の期待の新星・久保健英選手の移籍先となった「ビジャレアル」の知名度もかなり上がってきました。
この本は、そのビジャレアルで長年、若い選手の育成にかかわり、指導の改革を行ってきた著者による、「世界でもっとも育成を評価されているサッカークラブの『人を育てるメソッド』」のエッセンスを詰め込んだものなのです。
私がビジャレアルで指導改革に没頭しているころ、日本のスポーツ界では暴力指導の問題が表面化していました。
スペインでは指導者が子どもに暴力をふるったら、親や他のコーチが怒り始めて警察沙汰になります。だから、蹴るとか叩くなってあり得ません。暴言を浴びせても同様に、周囲から責められます。小学生年代にいたっては、ルールで全員が試合に出場しなければならないようになっており、ひとりでも試合に出なかった選手がいたチームはサスペンション(試合への出場停止など)が課せられます。このルールを知っている保護者から「コーチ、うちの子、出場時間が少ない」というクレームが届きます。
日本と異なるスペインの話、それも、プロサッカーチームの育成組織の話じゃないか、と思われるかもしれません(僕も最初はそう感じていました)。
でも、読んでいくうちに、「人を育てる」やり方はスポーツの世界だからといって特別なものではないし、ビジャレアルでは、「人間としての成長を重視する」ようになってきているのです。
メッシ、ピケをはじめ1986~87年生まれの名選手が多く活躍しているため、この世代はゴールデン・ジェネレーションと呼ばれています。2000年にメッシが13歳でスペインに来た当時、同じカテゴリーのスペインフットボール協会登録選手数は8万3801人でした。その後、スペイン1部リーグデビューを果たしたのは、たったの48人。2020年現在の登録選手数は、メッシが来た2000年に比べて2倍に膨れ上がりました。プロになれるのは2600人にひとりで、その確率は0.038%。プロへの道は非常に険しいものになっているのです。
「彼らがフットボール選手じゃなくなったときに、彼らがどんな人間になっているか、責任を持つ、それがプロの指導者としての責務だ」と、ビジャレアルの育成スタッフは考えるようになっています。
プロサッカー選手を目指す子ども、若者たちのメンタルヘルスの問題も、クローズアップされるようになってきているのです。
厳しい競争にさらされ、プロサッカー選手として成功できなかった若者は、精神的に大きなダメージを受けていることも少なくありません。