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地方経済を救うために思い切った金融緩和を 山本幸三×飯田泰之

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衆院選公示まで残り1日。なぜデフレから脱却し、円高を是正する必要があるのか。疲弊した地方経済を救うにはどうすればいいのか。選挙の争点となっている金融政策の重要性について、経済学者・飯田泰之が自由民主党山本幸三衆院議員に緊急インタビューを行った。

――ここ20年の低成長によって地方経済は疲弊しきっています。

山本 私の地元である北九州市では、デフレと円高の影響を受けて、東芝の大工場が閉鎖し、海外に移転してしまいました。新日鐵住金も中国や韓国に押されて生産が落ちていますし、日産やトヨタの工場も業績を落としていて、その影響で下請け会社が疲弊しています。商店街は閑散として、目も当てられません。

よく日本企業の努力が足りないという議論を耳にしますが、これはまったくの間違いですよ。企業の経営者は必死に頑張っています。生き残るためにやりたくもないリストラをし、そのリストラによって景気はさらに悪くなっていく。この悪循環を終わらせるためにも、問題の根源であるデフレと円高を終わらせなくてはいけません。彼らを救ってあげないといけない。

――そのためにも大幅な金融緩和が必要ということですか。

山本 その通りです。

東日本大震災の直後、早急な復興のために財源を確保する必要があると考えました。でも国民に負担を強いる増税は避けなくてはいけません。そこで安倍さんに会長をお願いして「増税によらない復興財源を求める会」という議連を立ち上げ、勉強会を何度も開きました。そして、増税ではなく、国債発行と買いオペによって20兆円の財源を作るべきだと提言していました。

そもそも、復興の前に増税の話が始まっていたことがおかしいんですよ。被災された方は「自分たちのことよりも増税が重要なのか」と落胆するに決まっています。あの悲惨な状況でそれがどれだけ追い打ちをかけたか。当時、日本銀行は国債を引き受けるのを嫌がり、財務省は増税を狙っていたため、両者の思惑が一致してがっちり手を握ってしまいました。結果的に野田政権下で増税が決まり、復興の対応に遅れが出ている。酷い話です。

増税が決まってから「増税によらない復興財源を求める会」は、デフレを脱却するために物価安定目標政策を導入する議連として衣替えをしました。連日報道されている安倍さんの発言はこれら議連の勉強会をもとにしたものです。いまの市場の流れを見てください。安倍さんの発言だけでも市場の好転がはじまっているじゃないですか。早く政権交代を果たして、景気回復を実現したい。

――安倍発言に対して、成長率の低下を招くとか、なかにはハイパーインフレや財政破綻を心配している人までいます。

山本 いやいや、財政破綻を避けるために、プライマリーバランスをプラスにするか、名目成長率を名目金利よりも高くするかのどちらかをやらなくてはいけないんです。どちらにせよ名目GDPが上がらなければ財政再建はありえません。そのためにも早々にデフレを脱却して、名目成長率をあげる必要がある。名目成長率があがれば税収はすぐに伸びます。今すぐそれをやらなくてはいけないのに、増税で名目成長率を落とすなんてまったく馬鹿げた話です。

実例だってあります。2004年、財務官の溝口善兵衛さんによる、いわゆるテイラー=溝口介入によって円安傾向に傾き、2007年の日銀総裁・福井俊彦さんの量的緩和によって、2007年に110円台の円安を達成しています。デフレが終息しかけ、名目成長率も上がり、プライマリーバランスも国と地方あわせてマイナス数パーセントまで改善されている。これを再現すればいいだけなのに、なにを躊躇することがあるのでしょうか。

――リーマンショック以降、アメリカとイギリスはデフレに突入しませんでしたが、日本はデフレ脱却を失敗し、深刻化を招いてしまいました。民主党が脱デフレできなかった理由はどこにあると思いますか。

山本 やはり日銀の金融政策の問題点を理解できていなかったことでしょうね。

日銀は金融システムが安定していればなにもしなくていいという態度でしたし、白川総裁はバランスシートを拡大しても意味がないと考えていました。

それに対してFRBやバンクオブイングランド、韓国銀行はバランスシートをおよそ3倍以上拡大しました。そして、アメリカもイギリスも韓国も、デフレには陥っていません。日本と日本以外――どちらが間違っていたかは結果を見れば明白です。心配されているハイパーインフレだって起こっていないじゃないですか。それを「ハイパーインフレが起こる」とオオカミ少年のように繰り返し発言していて、まったく困ったものです。

そりゃ何百倍もマネーを増やせばハイパーインフレになってしまうでしょう。でも我々はそんな議論をしていません。世界中がやっているように、バランスシートを1.5倍から2倍に拡大しろと言っているだけです。この程度の規模の緩和にハイパーインフレの心配なんてまったくありません。

――日銀法改正についてはどのようにお考えですか。

山本 詳細の議論は政権奪回後ということになるでしょう。私は説明責任までで十分で解任権は必要ないと思っています。

日銀の独立性も重要です。でも政策手段・選択の独立性が確保されていればいいのであって、目標は政府と協調して考えるべきです。そちらのほうがかえって日銀の独立性は確保されると思いますよ。政策の透明性も高まりますし、安定した中央銀行運営ができる。日銀にとってもいいことだと思うんですけどね。

――当初、建設国債を増やして、公共事業を中心に景気対策をとらなくてはいけないという議論がありましたがいかがお考えですか。

山本 確かに、今回のような大震災に備えるためにも、公共投資を行って防災・減災対策をしなくてはいけません。その代わり、思い切った金融緩和を同時に行って公共投資の弊害を取り除く必要もある。どちらも中途半端が一番いけません。結局、効果のない無意味なバラマキだけで終わってしまっては元も子もないでしょう。

――自民党マニフェストにある「官民協調外債ファンドの創設」についてはいかがお考えでしょうか。

山本 私自身は、財務省をしっかりと管理できていれば無用のものだと思います。先ほどもお話したように、手段については日銀が独立して考えたほうがいいと思っています。それに円高対策が必要なら、それこそ溝口介入のように、財務省が思い切って介入すればいい。あくまで日銀には政府と協調した目標を与えればいいんです。日銀法改正の細部についてはこれから党内で協議していきます。

――最後に、デフレが解消し、円高が是正されたとき、地方経済はどのように復活していくとお思いか、お聞かせください。

山本 地方企業は円高の影響で大変苦しい思いをしています。デフレから脱却し、円高が解消されれば、中小企業も地元の商店街も活性化して、もう今までのような苦しい思いをしなくてすむ。それにデフレが解消されれば、年金の目減りもなくなって将来の安心感につながるでしょう。増税で帳尻を合わせたって、結局じり貧になるだけですよ。

――ご活躍を大いに期待しています。お忙しいところありがとうございました。

(2012.12.29 電話取材 構成 / シノドス編集部・金子 昂)
山本幸三(やまもと・こうぞう)
1948年福岡県出身。東京大学経済学部卒。46年大蔵省入省、62年大蔵大臣秘書官を経て、93年衆議院議員に当選(現第五期)。主な役職に自由民主党政務調査会副会長、組織運動本部副部長、社会保障制度調査会医療委員会事務局長など。

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