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ジャック・アタリの警鐘「コロナ危機がいずれ収束するというのは幻想だ」

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——あなたは、ジャック・アタリの警告を覚えているか——。

1998年
「疫病の予期せぬ蔓延により、世界は集団隔離を余儀なくされ、ノマディズムと民主主義に再考が促される」
(『21世紀事典』)。2009年
「今後10年で、破滅的なパンデミックが発生する恐れがある。パンデミックは、多くの個人・企業・国家のサバイバルにとって非常に大きな脅威である」
(『危機とサバイバル』)。
2016年
「これまでにないタイプのインフルエンザが明日にでも流行する兆しがある。だが、そのための準備はまったくできていない」
(『2030年 ジャック・アタリの未来予測』)。

今回のコロナ危機をはじめとする数々の予測を見事に的中させてきた、人類最高の叡智であるジャック・アタリ氏の「コロナ後の世界の見通し」を紹介する。

楽観的すぎる人々に私は激怒している

今回のコロナ危機が発生してから、私は怒っている。

ジャック・アタリ氏ジャック・アタリ氏

怒りの1つめの理由は、多くの人々がパンデミックという悪夢が終われば、危機が発生する以前の世界に戻ることができると考えているからだ。そうした無分別な態度に怒りを覚える。治療薬やワクチンが開発されれば、「パンデミックは終息した。社会を元通りに戻そう」という掛け声が上がる。だが、ワクチンや治療薬が開発される、あるいはウイルスが自然消滅するなどして、パンデミックが終息したとしても、社会を元通りに戻すことは絶対にやってはいけない。

「われわれは今回の危機を教訓とすべきであり、この教訓を活かせないのなら、人類は当然の報いを受けることになる」と警鐘を鳴らす。以前の社会こそがこの危機を生み出したと看破する。

怒りの2つめの理由は、2020年初頭、中国の一都市で発生した感染症は爆発的に広がった際、ヨーロッパ諸国を含め、世界中の多くの政府がパニックに陥り、中国の独裁型対応に追随したことだ。初動を完全に誤った西側諸国は中国を模倣して都市封鎖を決断し、自国の経済活動を仮死状態へと追いやった。中国政府のSNSの検閲などの情報統制が今回の世界的危機の引き金になったという。今回の危機により、発展途上にある民主主義は弱体化し、当局による国民生活の徹底した監視体制である「超監視社会」が台頭する恐れがあると危機感を募らせる。

怒りの3つめの理由は、多くの為政者が国民の健康維持は国にとって負担ではなく財産なのだと理解してこなかったことだ。医療や介護の現場に対する財源は削減され、今日、看護師をはじめとして、医療現場は過剰な負担を強いられている。国民の命を大切にしないことに対する、この怒りは「命の経済」というコンセプトにつながる。「命の経済」については後ほど述べる。

コロナ危機の次は世界経済が崩壊する

世界各国では、国の支援策が公的債務を急増させている。この政策は将来に負担を課すことになる。経済の崩壊を防ぐために、民間銀行とこれを支える中央銀行が無制限に信用供与している。経済がグローバル化して以来、この異次元の政策を真っ先に導入した国はご存じのように日本だ。つまり、今回の危機により、世界の「日本化」が始まったのである。だが、この政策により、将来世代や社会的弱者にしわ寄せが生じる恐れがある。

また、自動車、航空機、工作機械、ファッション、化学、プラスチック、化石燃料、ぜいたく品、観光などを中核とする現在の経済モデルは持続的でない。問題を先送りにしながら経済を賄(まかな)うには、政府と中央銀行は拠出を増やし続けなければならない。公的債務は毎年増加し、最も信頼のある中央銀行であっても、最終的には行き詰まる。

国民の命を大切にせず、環境に配慮しないこのような経済モデルでは、人々は孤立し、精神障害、暴力、飢餓、そして思わぬ病気が多発するだろう。このままでは、いずれ未曽有の金融危機が発生する。零細企業から大企業へと順に苦境に陥るが、国の支援はいずれ限界に達する。

コロナ禍で確信した米中同時衰退

パンデミック後の世界の支配者は誰か。現在のところ、アメリカに代わって中国が超大国になるという見方が有力だ。

その理由を簡潔に記す。中国は軍事と経済の面で大国になる。毎年大量のエンジニアを輩出する中国は、AIをはじめとする未来のテクノロジーの分野でトップクラスだ。中国領土には数多くの戦略的な資源が大量に眠っている。莫大な金融資産を保有する中国は電子マネーを創設して、これを世界通貨にしようと画策している。

一方、アメリカではパンデミックが終息に向かう見込みはまだない。アメリカの失業者の多くは無保険であり、医療費を賄う術をもたない。そうした一方で、桁外れの報酬を得る者が跋扈(ばっこ)し続ける。都市部での暴動では、著しい社会的格差や人種差別が大きな争点になっている。ジョー・バイデン氏が大統領になっても、アメリカの孤立主義は変わらないだろう。アメリカの国力は相対的に低下し、アメリカは国際舞台の中央から退き、自国内に山積する問題の解決に専念するようになる。

しかしながら、中国が超大国になるという見方は正しいとはいえない。なぜなら、中国は、軍事、金融、経済、司法、文化の面において、自国の規範を世界に押し付ける力をもたないからだ。むしろ、この危機によって、中国の力は弱まるのではないか。その理由を2つ述べる。

1つめの理由として、中国政府に対する国際的な信頼は、今回の危機で失墜したからだ。2つめの理由として、人口の高齢化が加速する中国の社会保障制度はきわめて貧弱だからだ。貧しい国や社会保障制度の貧弱な国で暮らす国民の老後はきわめて悲惨だ。これこそが現在の中国の姿だ。

中国には2つの選択肢しかない。1つめは独裁者を温存させる選択だ。だがこの場合、優秀な企業家と独創的で優秀な人材が締め出される恐れがある。2つめは、思い切って民主化する選択だ。だがこの場合、中国は旧ソ連と同様の運命をたどり、過去の内戦時代に舞い戻って熾烈な戦国時代を迎える恐れがある。

世界に規範を課すのが、アメリカ、中国、さらには、ヨーロッパや日本などの国家でないとすれば、この役割を担うのは巨大IT企業かもしれない。その証拠に、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)は、国防、文化、医療、金融などの面で、すでに決定的な影響力をもつ。

大予言! 世界を制覇するのはアメリカでも中国でもないGAFAMだ

歴史の法則として、権力を握るのは情報を操作する者だ。きわめて重要な情報を先駆けて把握できれば、国民に伝える情報を自分の都合に合わせて操作できる。そしてエネルギー経済から情報経済への移行が、情報分野における飛躍的な技術進歩により、予想以上の速度で進行したこともこの法則の効果を強めた。

GAFAMをはじめとする情報技術やAIをつくる企業が明日の勝者になるのは間違いない。だが、巨大IT企業による情報の独占を解消するため、世界レベルでの改革を断行しなければならないだろう。たとえば、これらの企業の解体である。過去には、石油会社、鉄道会社、電気通信会社が、同様の理由で解体された。今日では、中国政府でさえも自国の巨大IT企業の活動に恐怖心を抱いている。

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