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包括指定の意味を考える2

包括規制によって、約760種の合成カンナビノイドが一斉に規制されると発表されましたが、この発表が、日本の脱法ドラッグに、どのような変化をもたらすのか考えてみたいと思います。

日本の脱法ハーブはどう変わるのか

<希望的な観測>

アメリカでは「合成大麻」などと呼ばれて氾濫していた脱法ハーブに対して、今年夏、米連邦は包括的な規制を含んだ法改正を発表しました。また、2012年に入ってからは各州でも次々に包括規制や、徹底した販売規制などの対策が相次ぎ、米国での脱法ドラッグ対策は、急速に強化された感があります。
その結果は、すでにデータに反映され始めました。米国での乱用拡大を示す指標となってきたのは、アメリカ中毒管理センター協会(AAPCC)が発表する、全米の中毒情報センターへの通報件数ですが、今年の夏以降、その数字が目に見えて減少し始めているのです。もちろん、連邦および各州当局がとってきた多様な対策があってこそ、これだけ大幅な減少をもたらされたのでしょうが、その核心となったのは、合成カンナビノイド類に対する包括規制と、「バスソルト」成分として使われる中枢神経興奮系薬物に対する規制幅の大幅な拡大であったと思います。
わが国でも、今回の包括規制によって、脱法ドラッグ業者の製品化は大きな制約を受けることになるでしょう。規制強化と、それに続く実行力ある取り締まりによって、脱法ドラッグ販売は勢いを失い、衰退していくことが期待されます。
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↑全米の中毒情報センターへの通報件数
(AAPCCの発表データに基づいて筆者がグラフ化)
・上は「合成大麻」に関する通報(2011年1月~2012年10月)
・下は「バスソルト」に関する通報(2011年1月~2012年10月)


<危惧される側面>

そのいっぽう、いくらか悲観的にならざるを得ない情報もあります。2009年末、英国(UK)が合成カンナビノイドに対する徹底した包括規制の導入を宣言し、それに続いてEU各国でも同様の包括規制の採用が相次いだころ、ヨーロッパでは同じように脱法ハーブ製品販売の縮小がみられ、とくに英国に拠点を置く脱法ドラッグのインターネット販売業者が減少したと報じられました(EMCDDA ANNUAL REPORT 2010)。一連の動きを観察していた私にとって、一時は、ヨーロッパでは脱法ドラッグ問題は峠を越えたとさえ思われました。
ところが、早くも2011年後半には、ある種のブレーク・スルー現象を目の当たりすることになりました。全く新しいタイプの合成カンナビノイドがヨーロッパの脱法ドラッグ市場に登場し、この年、EUの早期警戒システムで確認された新規の合成カンナビノイド数が大きく増加したのです。
つい最近、英国では、合成カンナビノイドに対する包括規制の内容が大幅に拡張されると発表されました。英国に拠点を置くインターネット販売業者のサイトでは、この発表があった前後から、ハーブ製品の取り扱いに減少がみられるようになりましたが、さて、この動きが今後どうなるか、今はまだ予測がつきません。
包括規制といえどもいつか破られる・・・、これが現実だとしたら、破られるまでの時間的なリードをどう生かすかが、対策の成否を分けることになるのでしょうか。
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↑EUの早期警戒システムで確認された新規薬物
EMCDDA Annual report 2012より


<危険なオプション>

規制の強化によって、合成カンナビノイドの使用が大幅に制約された後、巷で「ハーブ」として販売される製品は、その成分をますます多様化し、得体のしれないミックス薬物への道をとるかもしれません。実は、現在わが国で販売されている脱法ハーブには、すでにこうした傾向がみられるのです。
数年前、ヨーロッパで「スパイス」が広まり始めて以来、ハーブ系の製品の成分としては主に合成カンナビノイドが使われてきました。ところが最近になって、「ハーブ」として販売されている製品から中枢神経興奮系や幻覚系薬物が検出される例が増えていることから考えると、今回の包括規制への対抗策として、業者はますますこの傾向を強め、日本で販売される脱法ハーブに添加される薬物が多様化する恐れがあります。
そういえば、以前、MDMAに対して国際社会全体で原料や製品の流通規制が強化され、MDMA不足がささやかれ始めたころ、これに代わる新たな成分として、ピペラジン系の薬物など、数種をミックスして配合した錠剤が、欧米を中心に「エクスタシー」として大量に出回り、わが国にも流入したことがあります。このころ「エクスタシー」として出回ったなかには、2C-Bなどの幻覚性薬物も含まれていました。
この流れが加速すれば、ユーザーは、まったく想定外の危険にさらされることになります。さらに言うなら、個人的な薬物使用体験をベースに手探りで脱法ドラッグの調合をする業者のちょっとした油断や勘違いから、ユーザーに致命的な影響を及ぼすような製品が流通してしまう恐れもあります。

やがて、日本で販売される脱法ハーブが大きく変貌し始めます。この変わり目にあたって、何より必要なのは、ユーザーのこうむる危険性をミニマムに抑え込む対策です。
取り締まりにあたる皆さんは、規制強化への備えに忙殺されることでしょうが、市場を監視し、危険な製品が現れたら、すかさず警告情報を発することをぜひとも実行していただきたいものです。

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