
会社員時代に休職したのをきっかけに、繊細な人の心について研究をスタート。「人生が大きく変わった」と語る武田友紀氏(HSP専門カウンセラー)。自身の繊細さを知り、それを長所として活かすことで、肩の力が抜けてのびのび働けるようになったのだという。武田氏が確立した「繊細さん(HSP)が人間関係や仕事をラクにするノウハウ」は、「誰かのため」に日々働いている介護従事者の心のケアや悩みを抱えるご本人へのアドバイスとなる。ストレスを抱えた日々の中でありのままの自分を大切にして生きるには何をすればいいのか。話を伺った。
取材・文/木村光一
頭が心を抑えつけると、心の声が症状として身体に出る
みんなの介護 武田さんの著書の中で最も印象に残ったのが「自分のままで生きることが元気につながる」という一節でした。しかし同時に、同調圧力の強い日本社会の中で「自分のままに生きる」というのはかなり難しいのではないかとも感じたのですが、この点についていかがでしょうか。
武田 自分の本音の見分け方がわかれば、だいぶ生きやすくなると思います。自分の「こうしたい」という本音を感じ取って、一つひとつ叶えようと行動してみる。すると、「私はこれが好き」「こうしたい」と、自分の軸が太くなっていきます。自分の軸が太くなれば他人の感情や意見にも左右されにくくなり、やりたいことができるようになって元気になれるんです。
みんなの介護 なるほど。自分自身を解放すればエネルギーが湧いてくるというわけですね。ただ、肝心の「自分」というのものを掴むのに、案外苦労している人もいるかもしれません。
武田 これは精神科医の泉谷閑示先生が提唱している概念なのですが、「人間は頭と心と身体からできている」「心と身体は一心同体で、心が“いやだ”と言っているにもかかわらず、頭が“そんなことを言うな”と蓋をしてしまうと、心の声が、身体に症状として現れる」というんですね。
カウンセリングをしていると、本当にその通りだと実感します。ストレスが溜まって休養が必要なのに、無理して会社へ行くと肩凝りがひどくなったり、女性であれば生理痛が重くなったりすることがあります。それらはまさに心の訴えを頭が抑えつけている状態です。
休息でエネルギーが補充されれば、その先にやりたいことが見えてくる
武田 頭は、「みんなに受け入れられるにはこうすべき」「以前はこうだったからこうした方がいい」など、過去をもとに未来をシミュレーションします。それに対し心は、「好き・嫌い」「したい・したくない」など、「今・ここ」に焦点をあてます。本音とは心の声のことなんです。
まず、言葉によって、本音かどうかを見分けることができます。「〜しなきゃいけない」という言葉が頭に浮かんだら、それは頭による “べき思考”であって、本音ではない。反対に「〜したい」という言葉が浮かんだなら、そちらの方が本音になります。
みんなの介護 その方法であれば本音に気づける機会が増えそうですね。ただ、思っていても体が動かない、といった人もいるのではないでしょうか。
武田 そうですね。「〜したい」と言いつつ体が動かないときもあります。「働きたいのに体が言うことを聞かない」といった場合ですね。心と身体は一心同体ですから、この場合、本音は体の方に現れています。「働きたい」というのは頭が言っていることで、心は「働きたくない」と言っている。だから体が動かないんですね。
「〜したい」と思ったとき、なんとなく体に重くなる感じがあったり、義務感にかられている感覚があったりしたときも、それは本音ではありません。少なくとも「今は」やりたくない。本音というのは、思い浮かべたり口にしたりしたとき、自然に明るい気持ちになるものだと覚えておくといいかもしれません。
繊細さんにありがちなのは、頑張りすぎて疲れ果てているケース。やりたいことが「休みたい」「眠りたい」でもかまわないんです。無理をせずにどうか自分を休ませてあげてください。そうすれば心身に再びエネルギーが充ちてきます。エネルギーが充ちてくれば自ずと何かしたくなってくる。本当にやりたいことは、その先に見えてきます。