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《コロナ医療崩壊の真犯人=開業医》批判を現役医師に直撃!「僕ら医者の“善意”を搾取するな」 「なぜ開業医がコロナの最前線に行かないのか」に答える #2 - 「文春オンライン」特集班

コロナ病床不足でも「民間病院」活用が進まない“一目瞭然のデータ”公開《受け入れで24%が入院収益減》 から続く

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「『開業医はコロナ患者も診ずに、私腹を肥やしている』とか、『開業医はカネ持ってるから、高級車を乗り回して、ヒマしてんだろ』みたいな批判があることは知っています。でも、本当に黒字で潤っているのは美容外科などをやっている一部の開業医だけ。多くの開業医はそもそもそんなに潤っているわけではありません。はっきり言って、赤字です。でも、みんなギリギリのところで通常診療をこなしながら、その一方でコロナ患者をなんとか救うための努力をしている。僕ら開業医が『悪者』のように言われることは、本当に我慢ならないですね」

 こう明かすのは、都内でクリニックを経営する耳鼻科医のA氏だ。A氏の元には乳幼児から高齢者まで幅広い世代が通院している。


©iStock.com

「誤解を恐れずにいえば、医師の7割はヒマになっています」

 政府は2月2日に10都府県に及ぶ緊急事態宣言を3月7日まで1カ月延長することを決めた。新規の感染者数は減少傾向にあるものの、医療ひっ迫の状況が未だ改善されないことが延長の決め手となった。

 医療ひっ迫解消のための“次なるポイント”と言われているのが、日本の病床の7割を占める「民間病院」でコロナ患者の受け入れが、なぜ進まないかだ。

 1月6日、日本医師会の中川俊男会長は民間病院のコロナ患者受け入れが少ないことを記者会見で問われ、「コロナ患者を診る医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」と答えた。しかし、その「役割分担」がうまくいっていないと嘆くのは、コロナ患者を実際に受け入れている中規模病院の勤務医だ。

「誤解を恐れずにいえば、今医師の7割はヒマになっています。コロナ患者を診る医療機関は圧倒的に忙殺されている一方、通常の医療機関は、コロナで患者が減って閑古鳥が鳴いている。しめつけられているのは、地域の中核病院で、全体のマネージメントをしながら、現場もみて、受け入れもして、コロナでの損失をカバーできなかったら、お前らの責任だと上から責められる現場の『勤務医』です。

一方で槍玉に挙げられているのが、『開業医』です。医療崩壊の一因が開業医にある、という声もある。忙殺されている勤務医からは『ヒマの状態になっている開業医たちに、コロナ対応にあたってもらうべき』という怒りに近い声も上がっている。実際に都内では第一波のころに『発熱患者お断り』という張り紙がされていたり、患者が実際に発熱をして診てもらおうと電話をかけると『発熱のある方は診察していません』と応対するクリニックもありました」

「なぜ開業医がコロナの最前線に行かないのか」

 コロナを診ている勤務医が激務に耐えている一方で、「ヒマをしている」のが開業医であるという指摘だ。こうした「開業医がコロナを診ないのが今の医療崩壊の一因だ」とする批判に対して、前出のA氏が反論する。

「『なぜ開業医がコロナの最前線に行かないのか』と糾弾するような声があることは知っています。しかし、我々も普段の診療を日常的にこなす一方で、医師会の求めに応じて、ホテル療養の患者さんのオンライン診察、保健所やPCR検査センターでの検査のお手伝いなどを、診療時間外で行っています。

 昨年の春にPCR検査の数が不足していた時期に東京都医師会が中心になって、東京都では、23区プラス市町村に計40のPCR検査センターを開設しました。その運営には開業医が広くかかわっています。われわれ開業医がコロナ対策に全く協力していないというわけではないのです。むしろ、医師会を通しての『協力要請』はファックスで毎日のように届きます。早晩行われるワクチン接種も私たち開業医が行います。

 ただ、コロナ禍で、本業であるクリニックに来る患者数は減少しており、同じ医学部出身の開業医たちに聞いてもほとんどみんな赤字のようです。私の知り合いの耳鼻科では、昨年の緊急事態宣言下でもクリニックを開業していたのですが、3月下旬の給料日の次の日から、事務スタッフが突然やめてしまった。『コロナが怖い』『もしクリニックで感染した場合、同居する高齢の母にうつすと申し訳ない』という理由だったそうです。

 開業歴が長い先生たちは貯金を切り崩しながら、人員やバイトの医師をカットすることで固定費を減らし、規模縮小を図っています。開業したばかりの若い先生は貯蓄もないので、みんな防護衣を着て、周囲に何と言われようと危険を冒してコロナ患者を診ているのが現状です」

廊下やエレベーター、駐車場は共用だから「NG」

 実際にコロナ患者を診ている開業医も多いとA氏は強調するが、一方でクリニックを経営する開業医が、コロナ患者を診ようとする場合は、「ハードルが高い」という。

「私の知り合いの開業医は、都心でテナントのクリニックを経営していました。そこで発熱外来を行おうとしたのですが、クリニックが入っている同じビルには、飲食店やアパレルなど、ほかの業種の店や会社も入っています。共用廊下やエレベーターなどは、それらのお店のお客さんや従業員も使う。そこにコロナの可能性がある患者が来るのは『まかりならん』とビルのオーナーから反対が出て、断念せざるを得なかったそうです。

 また、別の私の知り合いの呼吸器系の開業医は、診療所の駐車場スペースを使って、コロナを疑われる患者を診ようとしたが、やはり近所から『コロナの疑いがある人が近所に集まるのは怖い』と文句を言われてしまって、周囲の理解を得ることができなかった。コロナ患者を診たい、命を救いたいという医者の善意による行動が、誹謗中傷のもとになってしまったのです」

「開業医は対策不十分のまま感染リスクにさらされている」

 A氏はむしろ開業医こそ、コロナ診療の「最前線」に立っていると話す。

「コロナの厄介なところは、初期の軽症段階が一番感染力が強いこと。やや熱っぽい、もしかしたらコロナかもと思って発熱外来にやってきている患者さんが、一番感染力が強いのです。重症化した患者を救う医療従事者も大変ですが、われわれ開業医は、発熱外来やPCR検査のお手伝いなどでコロナが疑われる患者を最初に診ることになる。つまり最初にコロナ感染のリスクにさらされているのは、開業医でもあるのです。実際に開業医で感染した人もいますし、残念ながらその感染の結果亡くなった人もいます……。

 どの科の開業医も、自分の職場では万全の感染症対策を施すようにしています。待合室でクラスターが発生したら、その風評被害は計り知れませんから。私のクリニックでは感染予防のために診察室や待合室の席をパーティションで仕切ったり、感染予防のためのマスクや手袋を揃えたり、換気扇を作る、空気清浄機を買う、エアロゾル対策のできる新規機器に入れ替えるなどしましたが、それだけで300万円近くかかりました。国から出る医療機関への持続支援金は上限が100万円です。もちろんそれがないよりかはマシですが、きちんとしたコロナ対策をしようとしたらとても足りません。

医者の善意だけに頼るだけでは限界がある

 基本的には医者は誰でも患者を救いたいという思いが第一にあります。医師は大学入学時に医学部という一種の専門学校に入って医学部教育をされてきています。その医学部教育で『パンデミックなどで医療危機が起こった際には経済的な問題は別にして、患者さんを助けなきゃいけない』という利他的な意識を徹底的に植え付けられています。『コロナなんて関係ない』という開業医がいるというのは、ちょっと信じられない現実です。

 でも、仮に自分がコロナの疑いのある患者を診ることで、逆に自分が感染して、感染を広げることになってしまったら……。それがかえって周りに迷惑をかけることになったり、物事を悪化させてしまうかもしれない。そんなジレンマはあります。日々、そうした葛藤と戦っているのが、多くの開業医の現実ではないでしょうか。本来だったら国がもっと音頭をとって抜本的に医療の仕組みを変えていかないとコロナには対応できない。『命を救いたい』という医者の善意だけに頼るだけでは限界があります」

 そう言うとA氏は静かにため息をついた――。

菅首相は「しっかりと支援」と言っているが……

 菅義偉首相は2月2日の記者会見で「重症者をはじめ、必要な方が適切な医療をきちんと受けることができるよう、医療体制の確保にも全力を挙げてまいります。現場の方々が財政面で躊躇することのないよう、また新型コロナ患者を受け入れる医療機関が損失を被ることのないよう、しっかりと支援してまいります」と述べたが、コロナをめぐる医療関係者たちの嘆きは深く切実である。

「文春オンライン」では、新型コロナウイルスに関する問題について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式」ツイッターのDMまで情報をお寄せ下さい。

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(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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