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問題発言でも森会長を擁護する側の〝論理〟 - 新田日明 (スポーツライター)

国際問題にまで発展しそうな雲行きだ。東京五輪・パラリンピック大会組織委員会・森喜朗会長が3日に開かれた日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で「女性がたくさん入っている理事会っていうのは時間がかかります」などと口にし、女性蔑視の問題発言として国内外から批判の嵐にさらされている。

日本国内では国会でも取り上げられ、野党側から菅義偉首相に森会長への辞任を促すよう求める意見が出るなど波紋は広がっており、数日経ってもまったく沈静化する気配はない。欧米のメディアでも大々的に取り上げられ、米ニューヨーク・ポストや米ワシントンポストなどの世界的に影響力の強い主要な報道機関も「決して看過してはならない大きな問題」として批判的なトーンで報じている。


(BalkansCat/gettyimages)

森会長は翌4日に会見を開いて自らの発言について謝罪した。しかしながら集まった報道陣に対して「辞任する考えはありません」と言い切り、その後も「一生懸命、献身的にお手伝いして7年間やってきた。自分からどうするってことはない。みなさんが邪魔だとおっしゃるなら、おっしゃる通り老害を掃いてもらえたらいい」と居直った。「会長職は適任か否か」と質問を向けられると「さあ、あなたはどう思いますか?」と逆に問いかけ「責任が問われないとは言ってません。場所をわきまえてちゃんと話したつもりです」と語気を強めた。

この日の会見はわずか約20分。日本国内のみならず海外にまで拡散する大問題となったにもかかわらず、短時間で一方的に打ち切られてしまった。会見の終盤で森会長は自らへの厳しい質問責めで責任を追及する報道陣と丁々発止のムードとなり「面白おかしくしたいから聞いているんだろ?」「だから(発言を)撤回すると言っているんですよ」と完全にイラつきを隠せなくなっていた。日本の多くの主要メディアによって「逆ギレ会見」と酷評され、さらにネット上でもかえって猛烈な形で批判を強め、世間の怒りの炎に油を注ぎ込んでしまった。森会長の辞任を求める署名活動も始まっており、わずか数日で何と10万人を超えたとの報道も出ている。

ここから述べることは、あくまでも「個人的な感想」と前置きさせていただく。今まで20年以上、スポーツメディアの世界に携わってきたが、これほど当事者が強気な「謝罪会見」は初めて見た。国際大会の組織・運営に携わる機構や委員会のトップの立場に立つ日本の有力者が、言い逃れのできない失言にも〝謝って撤回しているんだから、もういいだろう〟と言わんばかりに開き直って終始強がる対応を見せたのだ。

なぜ、もっと謙虚になれないのだろうか。これこそが日本人の美徳でもあったはずではなかったか。そして「一視同仁」の姿勢が求められる五輪を開催国の責任者が茶化すような女性蔑視発言をはっきりと口にしておきながら、その追及の声に対しても逆に食ってかかる――。この姿はあまりにも浮世離れし過ぎていて、恐ろしく衝撃的だった。非常にショックを覚え、残念な気持ちになっている。

いまさら説明するまでもないだろうが、女性蔑視は五輪憲章にも抵触する。IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長は森会長の問題発言について不問にする考えを明かしているものの〝身内〟であるはずの女性有力者たちからは、ここまで次々と批判の声が上がっている。日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事は「日本はまだ男女平等が進んでいないと世界に発信してしまった」と指摘し、国際オリンピック委員会(IOC)委員で女子アイスホッケーのカナダ代表として冬季五輪4大会連続の金メダルを獲得した経歴を誇るヘイリー・ウィッケンハイザー氏もツイッターで「朝食会場のビュッフェでこの男性を追い詰めます、絶対に。東京で会いましょう!」とつづり、森会長への激しい怒りを露にした。

「もう森会長を叩くことはやめにしませんか」

東京五輪に携わる日本側の全ての関係者からすれば、森会長の失言は残り半年を切った大会開催へ向け、世界中の主要メディアも一貫して断じているように明らかな「致命傷」だ。ところが驚くことに、それでも組織委内部では森会長を擁護する声も少なくない。大手企業から出向扱いとなっている組織委の中堅幹部クラスの1人は「もう森会長を叩くことはやめにしませんか」と世間に訴え、次のように続けている。

「確かに今回の問題発言には弁明の余地などないかもしれない。ただご本人も深く反省しており、世界中から批判を向けられていることが、ある意味で〝厳罰〟につながっていると思う。それを反省材料として必死に前へ進もうとしている姿勢を見ていただければ、お許しいただけるのではないか。もう80歳を超えている方なのですから。日本のスポーツ界に尽力してきた功労者であり、その森会長ご自身が東京五輪の成功を『最後の奉公』と仰っていることを、どうか叶えさせてあげてほしいです」

かつて総理大臣として政界のトップに君臨。その後は学生時代に没頭したラグビーへの情熱と経験を礎に2015年まで11年間に渡って日本ラグビー協会の会長職に就き、2019年に行われた第9回ラグビーワールドカップの日本初招致にも尽力している。森会長が水面下で日本スポーツ界の〝キングメーカー〟と呼ばれているのは、過去の経歴を振り返ってみれば確かに一目瞭然かもしれない。

前出の組織委幹部はこうも述べている。

「正直に言えば、森会長の代役は誰にも務まりません。無限のコネクションを持ち、世界中の政財界に顔が利く。何よりもスポーツの世界に理解を持っていただける元首相経験者は森会長を置いて他にいないでしょう。大会開幕まで約5カ月しかない中、森会長に代わる新会長を選任することなど不可能。組織委を筆頭に東京五輪の大会運営は大混乱に陥って暗礁に乗り上げてしまうことは必至です。ここまで組織委はスタートから一丸となって〝森体制〟で邁進してきました。どうか国民の皆様には東京五輪の『大会成功』という、大目標を完遂させていくためにも我々組織委、そして森会長を今後も叱咤激励していただきたいというのが願いです」

いずれにせよ、組織委内部では今も世界中から森会長バッシングが鳴り止まないことで深刻な〝内憂外患〟にさいなまれている。10都府県で緊急事態宣言が3月7日まで延長されるなどコロナ禍収束への出口も見えてこない中、東京五輪はまたしても新たな壁にぶち当たってしまった。今年7月23日の開会式まで残されている時間は限りなく少ない。

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