
コロナ禍での巣ごもりが当たり前になるなか、ひそかに気になる、若者たちの恋愛事情。恋人のある、なしにかかわらず、同棲していない限りは、「強制おひとりさま」。出会いを求めて合コンに行くこともかなわず、さぞ寂しい思いをしているはず──と思いきや、実態はそうでもないらしい。
どうやら若者たちはもう、新たな恋愛のやり方を編み出しているらしいのだ。若者の恋愛事情に詳しいライターのトイアンナさんが指摘する。
「確かに、恋人に会う機会も出会いのチャンスも減りました。しかし、その代わり、効率的に恋愛やセックスをする若者が増えているのです」
「外出するな」「人と会うな」と言われるようになって、はや1年。いま、若者たちはどうやって愛を育んでいるのだろうか。
本気の出会いはマッチングアプリで
若い世代が新たな出会いの場にしているのが、自分のプロフィールと写真をネットに投稿して好みの相手を見つける「マッチングアプリ」だ。
「出会いの場が減って恋活・婚活市場が縮小するなか、マッチングアプリを重宝しているのは、真剣に恋愛相手や結婚相手を探す“ガチ勢”と呼ばれる人たちです。真剣な者同士が出会うので、トントン拍子で話が進むケースが多いのです」(トイアンナさん)
2016年頃から浸透し始めたマッチングアプリは、大手結婚相談所と提携しているものもある。ほとんどが身分証明書などの提出がなければ利用できず、いわゆる「出会い系」とは一線を画す。親世代にはピンとこないどころか、「危険なのではないか」と心配になるが、若者にとってはごく普通の男女の出会いの場の1つに過ぎない。
コロナで将来への不安や寂しさが増したことで「恋人が欲しい」「結婚したい」と切実に願う若者がアプリを使い始めたことで、婚活市場がより濃密になっているのだ。
厚労省が発表した2020年の婚姻数(1~10月)は、前年同期から13.3%も減少。出生数も5.1%減少し、このままでは「出生数80万人割れ」が現実のものになるのではないかと危ぶまれている。
日本中で経済的不安が膨らむなか、恋人に会えず、婚姻届を出しに行くこともできなければ当然の結果だと思えるが、意外にも、婚活に臨む人は増えているのだという。
恋愛・婚活研究家で結婚相談所マリーミー代表の植草美幸さんが話す。
「いま、ひとり暮らしでパートナーがいない人の寂しさは募るばかりです。万が一、コロナに感染したら、最悪孤独死するかもしれないという恐怖もある。そんななか、支え合える家族を求める人が増えているのです。
過去を振り返っても、リーマン・ショックや東日本大震災など、大きな災禍に見舞われたときは、決まって婚活人口が増えています」
東京大学大学院客員研究員で医師・疫学者の上田ピーターさんは、コロナで独身生活の利点が減ったのではないかと指摘する。
「『独身貴族』という言葉もあったように、コロナ以前、シングルは趣味や娯楽を楽しむ機会が多かった。しかし、そんな生活が制限されるようになった一方、既婚者は家族とともに過ごす時間が増えています。独身生活の利点が減るとともに、家庭生活の魅力が増しているといえます」
そこで、恋人探し以上に盛況なのが、ネットを利用した婚活だ。昨年4月の緊急事態宣言発出以後、「オンラインお見合い」の需要が一気に増している。
「感染リスクを下げるため、多くの婚活サイトやマッチングアプリが、Zoomなどを使ったオンラインお見合いを導入しています。住まいが遠くても距離を感じず、デート代がかからないというメリットもある。
なかには、オンラインで交際を重ねて、初めての“リアル”のデートでプロポーズしてご成婚されたカップルもいらっしゃいます」(植草さん)
オンラインなら、家にいながら運命の人を見つけられるが、負の側面もある。いくら顔が見えるといっても、画面越しではウソや誇張が見抜きにくい場合もあるからだ。