・【映像】女性の共感を得るマーケ戦略とは...笛美さんと考える
また、「お母さん食堂」についても「いいコピーだと思う人もいるかもしれないが、そのイメージを次の世代にも伝えたいか、というところで引っかかっている人がいるということだ。そういう人の価値観を踏みにじってまで、そのコピーを使い続けるべきかということをみんなが考えるようになった。
少し前の事例だが、ゼクシィが“結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです”というコピーを使って話題になった。これは価値観が複雑化する社会において、結婚をしないという選択をした人たちを否定することなく、自分たちをアピールできている。このような表現を求められてきているということだ」との見方を示した。
「お母さん食堂に関して言えば、確かに今も家事の主体的な担い手はお母さんだし、私もお母さんが作った料理は美味しくて大好きだ。一方で、お母さんなら料理をしろという押し付けはどうなんだ、という考え方もある。広告というのは、世の中の人々の憧れを描くもの。
それに対して今回のような表現は、お母さんが料理をするのが理想だ、料理をすべき、という方向に持っていってしまうのではないかと危惧している。むやみに“母”などという言葉を使わなくとも、“おうち食堂”や“ふるさと食堂”など、おいしくて安全安心というコンセプトを表現することはいくらでもできる」。
おっしゃるとおり、女性の選択肢を狭めてしまう可能性もあるかもしれないが、やっぱり料理が作りたいというお母さんもいっぱいいるし、そのイメージ、アイデンティティを大事にしている女性もいっぱいいる。そういう方々の声が聞こえてこないのはちょっと寂しい。僕の場合、バーベキューには自信があるから、“お父さんBBQ”というのがあってもいいと思う(笑)」と話す。
「“ジェンダーの問題は怖い。触れないようにしている”と言っていた人がいたが、それは“もっと知ろう”と考えることで消えていくと思う。あるいは、いい広告の事例には気づきがある。例えばNEWクレラップの“僕は手伝わない”というコピーには、家事は手伝うものではないのだという気づきや発見がある。
これまでのジェンダー観を見直すことで、私たちはもっとクリエイティブになれる。だから追いつめられたというよりはこれが新しいチャンスだと捉えていきたい。お母さん食堂のキャンペーンについても、強制するものではなく、ファミリーマートとの会話だと思っている。そこからどういう判断をするのかは、ファミリーマートが決めること」。
他方、「私も出版社で経済記者をやっていた頃は仕事が楽しかったし、男性が多い組織の中で長時間労働しているうちに、感覚が世の中の多くの女性のとかけ離れたものになっていた可能性があると思っている。大切なのは、単純に性別や見た目の多様性を確保するだけではなく、中身の多様性だ」とも指摘した。
笛美氏は「確かに制作側に女性がいてもダメだったというケースもある。やはり男社会で長時間労働をしていると、どんどん意識が“男性寄り”になっていく。私にもそういう時期があった。だからこそジェンダーの専門家の話をもっと聞き、勉強することが大事だと思っている。
そして、正直言ってすごく時間がかかる問題だとも思う。森喜朗さんのような人は、男性だけでなく、女性もいると思う。それでも、少しずつ塗り替えていこうとしている人たちが出てきていると考えている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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