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2012年度の犯罪白書からセーフティネットの必要性を考える

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先日私のMixiの友人経由で知ったのですが、2012年度の犯罪白書が公開されました。
この白書について朝日新聞は
「仕事なければ、再犯率5倍 11年、過去最高の再犯率」
また、毎日新聞では
「犯罪白書:検挙16%が高齢者 「暴行」増加、過去最悪に--12年版」
という報道がなされています。

報道の詳細については各々のリンクを確認頂きたいのですが、法務省のHPから白書の内容は確認することが出来ます。

今回はこの白書を読み込んでみようと言うことです。
しかし大部ですので、このブログに関係するところ、具体的には上掲2紙の指摘する部分を読み込んでいきたいと思います。
とはいえ議論の前提として現在の犯罪傾向は見る必要があるでしょう。
同書は


刑法犯の認知件数は,平成8 年から毎年戦後最多を更新し,14年に369万3,928件を記録したが,15 年から減少に転じて,23 年は213 万9,725 件(前年比13 万1,584 件(5.8%)減)まで減少した。最近の認知件数の減少は,例年,刑法犯の過半数を占めてきた窃盗の認知件数が15年から毎年減少したことが大きな要因となっている。また,窃盗を除く一般刑法犯(刑法犯全体から自動車運転過失致死傷等を除いたもの)の認知件数も,16年まで増加を続けていた後,減少に転じているが,20年前の約1.6倍の水準にある。

刑法犯の検挙人員は,平成10年に100万人を超え,11年から毎年戦後最多を更新し,16年に128万9,416人を記録した後,17年から減少に転じて,23年は98万6,068人(前年比4 万3,049人(4.2%)減)まで減少し,100万人を下回った。
(中略)
最近は,全般的に高年齢化が進み,特に,60歳以上の者の構成比は,昭和57年には3.5% (1 万5,363人)であったのに対し,平成23年には,22.9%(7 万83人)まで上昇し,65歳 以上の高齢者が15.9%(4 万8,637人)を占めている。
(第1編 犯罪の動向1 刑法犯(1)認知件数・検挙人員)

人が被害者となった一般刑法犯の認知件数及び被害発生率は,いずれも,平成15年以降, 減少・低下している。男子の被害発生率は,女子の2 倍以上である。
一般刑法犯による死傷者総数は,平成17年から7 年連続で減少している。死傷者中に女子が占める比率は,3 割前後である。

財産犯(強盗,窃盗,詐欺,恐喝,横領及び遺失物等横領)の認知件数及び被害総額は,平成15年から減少していたが,23年は,被害総額が前年から若干増加した。
強姦及び強制わいせつによる女子の被害は,平成16年以降,認知件数・被害発生率ともおおむね減少・低下している。
(第5編 犯罪被害者1 統計上の犯罪被害者)


これらを読むと「刑法犯の認知件数は,平成8 年から毎年戦後最多を更新」したが「平成15年から減少に転じている」こと、被害者という観点からは「死傷者が出るいわゆる凶悪犯罪は減少の傾向にあるが、財産犯は増加した。しかし若干の増加に止まっている」ということがわかります。

刑の厳罰化の潮流があり、その影響で減少したと言えなくもないのですがどうもそれだけではないようです。むしろ凶悪犯のカテゴリーに入らない財産犯が微増していると言うことは犯罪の原因の大きな要素に景気があり、昨今の経済状況が犯罪に反映しているとも言えるのではないでしょうか。
また高齢者の割合が増加していることは言うまでもないことですが我が国の急速な高齢化が大きな原因であることは言うまでもありません。

それでは上掲朝日新聞の指摘する「過去最高の再犯率」についてはどうでしょうか?

一般刑法犯により検挙された者のうち,再犯者の人員は,平成9 年から増加し続けていたが,19年からは5 年連続で若干減少し,23年は13万3,724人(前年比2.8%減)であった。

再犯者率は,9 年から一貫して上昇し続け,23年は43.8%(同1.1pt 上昇)であった。
(中略)
入所受刑者のうち,再入者の人員は,平成11年から毎年増加した後,19年からはほぼ横ばい状態にあったが,23年は1 万4,634人であった。再入者率は,16年から毎年上昇し続けており,23年は57.4%であった。

女子について見ると,再入者の人員は,平成12年以降,増加傾向にあり,23年は914人であった。再入者率は41.1%と男子(59.0%)より低いが,17年からは毎年上昇し続けている。

有保護処分歴者の占める割合は,初入者,再入者ともに,若い年齢層の者ほど高い。どの年齢層においても再入者は,初入者と比べて有保護処分歴者の割合が高いが,特に,29歳以下の若年の再入者では,約6 割の者に保護処分歴がある。また,保護処分歴の中でも,ほぼ全ての年齢層において,少年院送致歴のある者の割合が高く,その傾向は再入者において顕著である。

平成14年及び19年の出所受刑者について,出所年を含む5 年又は10年の間,各年の年末までに再入所した者の累積再入率を出所事由別(満期釈放又は仮釈放の別)に比較すると,満期釈放者は,仮釈放者よりも累積再入率は相当高い。14年の出所受刑者について見ると,10年内の累積再入率は,満期釈放者では62.5%,仮釈放者では40.7%であるが,5 年内に再入所した者は,それぞれ,10年内に再入所した者の90.6%,82.0%を占めている。入所度数別に比較すると,入所度数が多いほど累積再入率は高く,特に入所度数が1 度の者と2 度の者の差は顕著であり,2 度以上の者は,おおむね半数を超える者(約55%)が5 年内に再入所し,入所度数を重ねるに従って,改善更生の困難さが増していくことがうかがわれる。
(第4編 各種犯罪者の動向と処遇 6 再犯者)


ここを読むと、若年層で犯罪加害者に一旦陥ってしまうと、再犯率が高くなる。また、仮釈放という手段で早く社会復帰への道筋が付いた方が刑期一杯まで服役した者よりも再犯率が低い(朝日新聞とはあえて逆の言い方をすればですが)。そして、社会と隔離される機会が増えるほど更正するのが難しくなっていくということです。

実際、雇用する側としても有効求人率が1を下回っている状況下であえて犯罪歴のある人間を雇用するとすれば、白書にも指摘がありますが、雇用主の半数以上が国に対し「「出所者の身元保証」,「住居の確保」及び「出所者への相談・助言」」を求めているような手厚い国のフォローが必要だと言うことでしょう。しかし、そのような援助を国がするのであれば行政の肥大を招くことは必定であり、現在の憲法上認められた権利である生活保護でさえバッシングするようなこの社会ではとうてい受けいれられることはないのでしょう。

引き続き毎日新聞が指摘する「検挙16%が高齢者」という点はどうでしょう。

高齢者の検挙人員は,他の年齢層の者とは異なり,増加傾向が著しく,平成23年は,4 年の検挙人員の約6.3倍となっている。これを人口比の推移で見ると,高齢者の一般刑法犯検挙人員の人口比は,他の年齢層より相対的に低いが,平成4 年との比較で,23年の人口比の伸び率を見ると,20~29歳で約1.1倍,30~39歳で約1.4倍,40~49歳で約1.3倍,50~64歳で約1.7倍に上昇している一方,高齢者では約3.4倍にまで上昇しており,最近の高齢犯罪者の増加の勢いは,高齢者人口の増加をはるかに上回っている。

(中略)

一般刑法犯全体と比べて,高齢者では窃盗の割合が高いが,特に女子では,91.9%が窃盗であり,しかも万引きによる者が80.8%と際立って高い。
高齢者の一般刑法犯検挙人員の大半を占める窃盗において,この20年間で検挙人員の増加が認められるが,さらに,重大事犯である殺人及び強盗,粗暴犯である傷害及び暴行においても検挙人員が増加している。

高齢者の入所受刑者人員は,最近20年間,ほぼ一貫して増加傾向にあり,また,入所受刑者全体と比べて,再入者(受刑のため刑事施設に入所するのが2 度以上の者)の割合が高いが,20年前と比べて初入者(受刑のため刑事施設に入所するのが初めての者)も著しく増加している。

高齢者の保護観察開始人員も,増加傾向にある。なお,高齢者の仮釈放率(平成23 年は31.3%)は,出所受刑者全体の仮釈放率(同51.2%)と比べて低い。高齢者では,引受人がいないなど,釈放後の帰住先が確保できない者が多いことなどによると考えられる。
(第4編 各種犯罪者の動向と処遇 4 高齢犯罪者)

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