《ボクシング井岡タトゥー論争》「隠すべき・消すべき」55%がタトゥー否定の厳しい声【アンケート結果発表】 から続く
【写真】この記事の写真を見る(7枚)
2020年12月31日に行われたWBO世界スーパー・フライ級タイトル戦。試合中のリング上で井岡一翔のタトゥーが露出したことで、その是非を問う論争が巻き起こった。
国内のプロボクシングを統括するJBC(日本ボクシングコミッション)は「入れ墨など観客に不快の念を与える風体の者」は「試合に出場することができない」というルール(第86条)を定めている。これは入れ墨の禁止を意味するものではなく「リングに上がるときは何らかの方法で入れ墨を隠さなければならない」という決まりだ。
試合中にタトゥーが露出してしまった井岡一翔選手 ©AFLO
「文春オンライン」特集班では井岡一翔のタトゥー問題について、緊急アンケートを実施し674人から回答を得た。そのうち、「タトゥーを隠さなくてもよい」と答えた人が36%だったのに対して、「隠すべきだ」「そもそもタトゥーを消さない限りリングに上がるべきではない」と答えた人たちが合せて55%と過半数を占める結果となった。
「タトゥーに対して、そんなに多くの人が否定的な意見をもっていらっしゃるんですか。私が裁判を担当したときに感じたタトゥーに否定的な世論から、一歩も進んでいないことに大変ショックを受けました」
そう語るのは、「タトゥー彫り師医師法違反事件」で主任弁護人を務めた亀石倫子弁護士だ。
亀石弁護士が担当した「タトゥー彫り師医師法違反事件」では、医師免許を持たず客にタトゥーを入れたとして、現役の彫り師が医師法違反の罪に問われた。しかし2020年9月16日、最高裁は1審の有罪判決を覆し、逆転無罪の判決を下した大阪高裁判決を支持し、検察官の上告を棄却する決定をした。その際、草野耕一裁判長はタトゥーについて以下の補足意見を述べた。
最高裁の決定に、彫り師に対する敬意を感じた
《タトゥーを身体に施すことについて「反道徳的な自傷行為と考える者もおり、同時に、一部の反社会的勢力が自らの存在を誇示するための手段としてタトゥーを利用してきたことも事実である。
しかしながら、他方において、タトゥーに美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者もおり、さらに、昨今では海外のスポーツ選手等の中にタトゥーを好む者がいることなどに触発されて新たにタトゥーの施術を求める者も少なくない。
このような状況を踏まえて考えると、公共的空間においてタトゥーを露出することの可否について議論を深めるべき余地はあるとしても、タトゥーの施術に対する需要そのものを否定すべき理由はない》
この補足意見に亀石弁護士は、「タトゥーへの理解が一般社会で前進することに大きな期待を寄せていた」という。
「最高裁の決定には、彫り師という職業に対する敬意を感じました。この判断をきっかけに日本社会において締め出しを受けてきたタトゥーについて、前向きな方向に議論が進めばいいなと期待していました。