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肝炎にMRIやけど…タトゥーは百害あって一利なし」医師は“医療的問題点”を指摘《ボクシング井岡タトゥー論争アンケート》 - 「文春オンライン」特集班

「タトゥー否定派が多くショック。未だに反道徳的?」亀石倫子氏インタビュー《ボクシング井岡タトゥー論争アンケート》 から続く

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「たとえば、タトゥーが身体に施されていると、MRI(磁気共鳴画像撮影装置)を撮るときに多少なりともやけどを負う危険性があるのを知っている人はどれほどいるでしょうか。直接、命に関わることはありませんが、それ以外にも何が起こるかわからない。医学的な立場から言えば、タトゥーは百害あって一利なし。とても推奨はできません」

 そう語るのは、元順天堂大学教授で現在は湘南東部クリニックの院長、ウイルス肝炎研究財団理事長を務める市田隆文医師だ。


市田隆文医師

 昨年大晦日に行われたWBO世界スーパーフライ級タイトル戦で挑戦者の田中恒成を圧倒して8回TKO勝ちを収めた井岡一翔だったが、試合中にファンデーションで隠していた左腕と脇腹のタトゥーが露出。これが発端となり、その是非を問うタトゥー論争が巻き起こった。既に報じた緊急アンケートでも、「ヤクザや反社を連想させる」「威嚇していて怖い」という批判的な声が55%を超えた一方で、「決して違法ではない」「勝敗とタトゥーは無関係」といった肯定的な意見も飛び交った。

 そんななか、文春オンラインの取材に医学的な視点から「タトゥーによるリスク」について警鐘を鳴らすのは冒頭の市田医師だ。

特に肝炎についてのリスクは知っておくべき

「特に肝炎についてのリスクは知っておくべきです。肝炎はA型、B型、C型、D型、E型と5つの型に分類され、主に日本人に多いのはB型肝炎とC型肝炎です。B型肝炎に成人で感染すると、ときに劇症肝炎に移行して、意識障害、さまざまな臓器の障害、血が固まらなくなるなどの異常が生じるため、肝炎を起こしたことがわかりますが、C型肝炎は肝炎症状を起こすことが少なくてわかりづらく、気がついたら自分がC型肝炎だったという人が多くいます。

 C型肝炎に罹ると70%が慢性肝炎になり、ある程度時間が経つと肝硬変、もしくは肝臓がんになるリスクもかなり高くなる。最悪、命を落とすケースもあります。健常者が肝臓がんになるリスクを1としたときにB型肝炎のキャリアの人は380倍、C型肝炎のキャリアは1000倍。肝硬変になった場合は4700倍にリスクが跳ね上がるのです」

タトゥーを彫って感染する可能性はいまだにある

 市田医師によると、ウイルスの感染経路はB型肝炎が性交渉や母子感染。C型肝炎は血液感染がほとんどだという。

「現在は衛生面も改善されて、彫り師もタトゥーを彫る針を消毒して替えていると聞きますが、以前は不衛生な環境でタトゥーの針を使い回すことで人に肝炎を感染させてしまうことがありました。

ピアスも皮膚科などの医療機関ではなく、不衛生な環境の業者で穴を開けたり、無消毒で他人とピアスを共同で使うなどすれば耳から感染することもあります。タトゥーの針はディスポーザブル(使い捨て)ではないと思うので、肝炎の人に使ったものを適切な消毒を怠った環境で別の人に使えば感染する可能性はいまだにあると思います」

 ウイルス肝炎のリスクだけでなく、冒頭のコメントのように、タトゥーが入った患者はMRIで撮影する際に危険を伴うという。

タトゥーが原因で自らの身体を危険に晒すことがある

「以前はタトゥーに鉄分を含んだ顔料が使用されていたことがありました。井岡選手のようにタトゥーが幅広く施されていると、MRIを撮るときにタトゥーの部分に熱を帯びてやけどしてしまう危険性があります。タトゥーには鉄分以外にもいろいろな成分が入っている可能性があり、その範囲が広ければ、鉄分を含んだ顔料に磁場が反応するリスクがあります。

日本医学放射線学会や日本診療放射線技師学会でも禁忌ではないが、『要注意』ということになっていて、検査前のチェック項目にも入っています。もちろん個人差があり、顔料によっても違いますが、人によってはやけどするほど熱くなることもあるので、細心の注意を払う現場の検査技師にはかなりのストレスと負担を強いることになります」

 海外スポーツではバスケットボール、サッカー、野球などで、ファッションや宗教、精神的な意味合いなどから、タトゥーを施すアスリートが多い。アスリートにとって、ケガは付き物。大ケガを負った場合に身体に彫ったタトゥーが原因で自らの身体を危険に晒し、医療現場も大きなストレスを抱えることになる可能性がある。

「ボクサーは頭が重要ですが、頭部だけのMRIはなく、どうしても身体全体をMRIに通さなければなりません。命に関わるわけではありませんが、体が資本のアスリートなら、サッカー、野球、バスケットボールなどどんなジャンルの競技の選手についても、わずかでもリスクのあることは避けた方がいいと考えます」

 問題なのは、タトゥーを彫ろうと決意した人が、そうした医療的なリスクを説明されることなく、施術を受けてしまうこと。タトゥーには医療的側面からリスクがある、という理解を広めていくべきだと市田医師は主張した。

(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))

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