通常国会が開会し、国会論戦も本格化しました。今国会も前半戦はコロナ国会の様相を呈していますが、一方で国会議員の不祥事や4月の国政補選などによって、政局も変化しつつあります。菅内閣の支持率が低下の一途を辿る中、内閣支持率低下の理由と今後の見通し、さらに国政補選のみどころについて考えてみます。
内閣支持率の低下を3つのフェーズで考える
菅内閣の支持率低下は、その要因から3つのフェーズに分けられます。
第1に、就任時のご祝儀相場から低下していった昨年9月から11月頃の時期ですが、この時期は菅総理としては内閣総理大臣としての独自色を出したい、オリジナル政策の推進をしたいという考えと、新型コロナ対策をしっかりとやってほしいという国民との思いがミスマッチしていました。携帯電話料金の引き下げやデジタル庁創設といった政策は国民生活に直結する内容で平常時であれば国民の支持を得られた可能性が高いですが、このような非常時において国民に訴求する内容ではなかったことが最初期の支持率低下に繋がったとみています。
第2のフェーズが、いわゆる第3波と呼ばれる感染急増期です。特に昨年末にかけての感染者急増時期に際し、臨時国会を閉会したことや特措法改正を通常国会に持ち越したこと、さらにトップメッセージとしての記者会見が少なかったことなどから、リーダーシップとしての資質が問われることとなりました。特に感染急増期は知事などの首長が日々記者会見などを行いますが、小池東京都知事や吉村大阪府知事と比べて会見の回数も少なく、また棒読みとも評された対応も内閣への評価や期待が下がった要因とみるべきでしょう。

そして第3のフェーズが、一連の不祥事による政治不信が報道された時期です。年末には農林族を中心とした鶏卵業界による贈収賄疑惑で与党議員が辞職する出来事がありました。さらに年が明けて緊急事態宣言下で開かれた通常国会では、与党議員による「銀座会食」や、公設秘書のカラオケ参加によるクラスタ発生などといった報道がなされるなど、国民に我慢を強いている中での不祥事があり、内閣・与党支持率に影響を与えています。
支持率低下「第4のフェーズ」で青木率を下回る可能性
これら3つのフェーズにより内閣支持率は歴代内閣と比べても最悪の部類に入る下がり方をしてきましたが、ここで支持率の低下が止まるでしょうか。実は先に述べたフェーズでも、第2フェーズと第3フェーズの間、1月中旬頃には内閣支持率が下げ止まる動きも見られました。ところが与党議員の不祥事によって再度下降フェーズに入ってしまい、危険水域間近となっています。筆者は、この後第4のフェーズとして3月7日に明ける予定の「緊急事態宣言」が再々延長になるリスクや、3月には決まるはずの「東京五輪の開催可否最終判断」に注目をしています。
まず緊急事態宣言再々延長のシナリオを考えます。すでに緊急事態宣言の延長という事態で国民の中につかれも見えてきていますが、仮に緊急事態宣言解除が3月7日にできなければ、内閣の見通しが甘かったという指摘はもちろん、中小企業をはじめとする事業主の事業継続意欲が削がれる可能性が高まります。また、雇用調整助成金や各種休業補償といった施策こそあるものの、事業主による雇用維持意欲が低下すれば、年度末で雇用契約が終了する失業者が増える可能性も高まり、「失業率が高まれば内閣支持率が下がる」という方程式に基づいてさらに支持率が低下する可能性もあるでしょう。
この点、菅内閣はこの方程式を理解した上で「雇用維持」を景気対策の筆頭に持ってきていますが、事業主の事業継続意欲すら無くなってしまえば、これらの施策も難しくなります。また、再々延長の判断には「ワクチン接種」が順調に始まるかどうかも大きなファクターになるでしょうが、すべてスムーズにいくかどうか、西村大臣や河野大臣の手腕も試されています。

また、東京五輪の開催可否についても大きな焦点となるでしょう。1月のIOC理事会では、東京五輪開催の方向性でまとまっていますが、3月に予定されている次回のIOC理事会ではより具体的な開催方法について決める必要が出てきます。国内世論では東京五輪開催に否定的な声も大きく、開催主体と世論との乖離が大きくなる中で政府が開催を強行するような構図になれば、これが第4のフェーズとして支持率低下に繋がる可能性もあります。
いずれにせよ、第4のフェーズに入ってしまえば、いわゆる「青木率」(元内閣官房長官でもある青木幹雄氏が提唱した、内閣支持率と与党第一党支持率の和が50%を切ると与党は次の選挙で下野するという方程式)を下回ることが視野に入り、与党にとって選挙戦は相当厳しくなるでしょう。