オンライン掲示板やSNSの普及が金融市場を根底から変えようとしています。
アメリカのショッピングモールでよく見かけたゲームストップというお店の株価の乱高下は、アマチュアの個人投資家がネットを使って集団でひとつの方向に動くとヘッジファンドなどのウォール街の機関投資家を打ち負かすこともできるとして、金融市場版の“アラブの春”なんて言われています。
アメリカでは新たな規制の議論が始まっているそうです。
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WIREDはWhat the Arab Spring Can Teach Us About GameStop(アラブの春とゲームストップ株取引との共通点)の中で、オンライン掲示板「レディット」でのやりとりを通じて、経営難のゲームストップの株取引で利益を得ようとしているヘッジファンドをやっつけようとする構図はちょうど10年前の「アラブも春」と似ていると伝えています。
2011年1月25日にエジプトのカイロで、30年もトップの座についていた当時のムバラク大統領に対して、フェイスブックやツイッターを使って民主化を求めた運動です。
先週のゲームストップ株を取り巻く動きをめぐっては、億万長者のイーロン・マスク氏から急進左派として知られるAOC=アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員までヘッジファンドをとっちめる姿勢を評価したとしています。
これに対して株取引アプリ「ロビンフッド」は先週、「レディット」で推奨されていたような投機的な取引を禁止。本来は自社を守るための措置だったが、「アラブの春」で当局がインターネットを止めたのと同様に、結局、エスタブリッシュメント=機関投資家を守る結果となったと指摘。
そして、「アラブの春」と同じように個人の反乱は世の中を変えられず、富裕層は果実を摘み取り、貧乏人=個人はその負担を負うとまとめています。
ABCのインタビューで著名エコノミストのモハメド・エルエリアン氏が「レディット」がウォール街に仕掛けた戦争はアラブの春と同じだと述べたということです。
「アラブの春」について「リーダーなしで人々がデモを行い、思わぬ結果をもたらした」と述べて、デジタル新世代がSNSを使って変革をもたらしたという認識を示したとのことです。
エルエリアン氏は、個人投資家が金融システムに戦いを挑んだ理由として、▼外で消費できないため個人がよりお金を持っている、▼「レディット」が集団で行動する手段を用意した、▼「ロビンフッド」のような簡単な株取引アプリが登場した3点を挙げて、富の不平等、所得格差、機会の不平等を念頭に、人々の怒りが理解できるとも言います。
The EconomistはThe real revolutionon Wall Street(ウォール街の真の革命)の中で、オンライン掲示板「レディット」が発端となった金融市場の混乱について、ハイテクと金融の融合により、取引手数料がほぼゼロとなり、これまで密室でしか知り得なかった重要情報が容易に入手できるようになったことで「金融の根本的な変化を反映した」と伝えています。
これを技術的に支えているのは米カリフォルニア州の株取引アプリ「ロビンフッド」で、取引はシカゴの仲介業者が担い、フェイスブック同様にデータを収穫しているとしています。
インサイダー取引や金融操作に関するルールは今の時代に合うように見直すべきだと指摘。
一般の投資家がウォール街の邪悪な金融のプロをやっつける物語はネットフリックスのドラマにもなるだろうが、実社会では真の金融革命が起こり得るとしています。
記事
- 2021年02月06日 09:26
【金融市場版“アラブの春”】
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