前号は今年の日本経済を取り上げたので、今回は世界経済を取り上げてみます。年が明けてまだ1か月と少々ですが、今年の経済見通しは去年に比べればさすがに楽観的になっています。その典型がご存じIMF「世界経済見通し」(WEO)の1月版ですが、コロナワクチンの普及と各国政府による財政出動が強気の根拠となっている。日本から見ていると、正直「本当かいな?」と疑いたくなるところもあります。
さらに楽観の極みを行くのが米国の株価です。先週後半にはNY市場のダウ平均が3万ドルを割り込んで、「すわ、バブル崩壊か?」と思われましたが、今週は元気に盛り返しています。確かにGAFAの好決算には文句のつけようがないのですが、素直に信じていいかどうかはなおも悩まく感じています。
●最新の1月WEOは去年より楽観的
年の初めにチェックすべきは、国際情勢ではユーラシアグループのTopRisksであり、世界経済ではIMFのWEO(世界経済見通し)である。当溜池通信では、年初にこの2つを紹介することが恒例行事になっている。2021年のTop Risksは、早々と1月4日に公表されたけれども、最新版のWEO公開は日本時間で1月26日夜となった1。
昨年公表された4つのWEOは、タイトルからして”The Great Lockdown”(4月)とか、”A Crisis Like No Other,An Uncertain Recovery”(6月)などと悲観的であった。コロナ下の世界経済予測という、困難極まりない仕事であったのだから無理もないところである。ところが年明け後の今回は、“Policy Support and Vaccines Expected to Lift Activity”(政府支援とワクチンが経済活動を活性化させる見込み)とかなり明るいトーンとなっている。
○1月版WEOのヘッドライン上記の表を見ると、昨年は中国経済以外はすべてマイナス成長であったのだが、今年はほとんどの経済圏でもプラス成長を見込んでいる。
前回の昨年10月見通しと比較してみると、特に米国経済の上方修正が目立つ。コロナ被害では世界でダントツ1位であるにもかかわらず、米国経済は好調なのである。ちなみに2月3日時点の米国の感染者累計は26,431,799人、死亡者数累計は446,744人である。とうとう第2次世界大戦の死者数(405,399人)を上回ってしまった。やはり2020年は、米国史における転換点ということにならざるを得ないだろう。
同じ時点の日本の感染者数は391,626 人、死亡者数は5,794人であるから、文字通り「ゼロが2つ」違う。何度も繰り返して恐縮だが、日米の感染状況はまったく別世界なのである。その日本経済は、第3次補正の成立を評価して21年が∔3.1%、22年が∔2.4%とやや上方修正されている。これであれば2022年末には、何とかGDPが2019年末の水準を回復することになる。逆にユーロ圏は下方修正となっていて、これはコロナ感染の再拡大が理由だが、2022年になっても2019年末の水準を下回ることになる。
興味深いのは原油価格の上方修正で、今年は何と2割高が予想されている。これも世界経済の回復を反映してのことだが、今やESG投資で化石エネルギーが悪玉視される時代となっており、このままいくと新規の石油開発投資が不足しそうである。数年後には、またまた「1バレル100ドル越え」といった事態を招いてしまうのではないだろうか。