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プロ野球、知られざる「育成選手の世界」引退4選手が告白…年俸240万円に散った“夢”

元ソフトバンクの幸山さん

 コロナ禍により開始が危ぶまれていた、2021年のプロ野球春季キャンプが、2月1日よりスタートした。2020年のドラフト会議で注目を集めた楽天・早川隆久(22)や阪神・佐藤輝明(21)らは一軍スタートと、早くも “即戦力” として、首脳陣からの期待の高さが窺える。

 一方で、三桁の背番号を背負い、支配下登録を目指して奮闘する男たちもいる。ソフトバンクの千賀滉大投手(27)や甲斐拓也捕手(28)、周東佑京選手(24)ら “育成出身の男たち” が話題となっているが、「彼らは奇跡的な存在。ほとんどの育成選手は数年以内に消えていく」(スポーツ紙記者)という。

 育成選手に夢はあるのか――。志半ばで引退した元育成選手らに、現役時代を振り返ってもらった。まずは、元ソフトバンクホークス育成選手で、現在は國學院大学に通う幸山一大さん(こうやまかずひろ、24・元ソフトバンク)。支配下登録選手との格差について、こう話す。

「生活の面では、育成選手は全員寮に住み、寮費は3万円と安いうえに、3食分の食費も含まれていたので、支配下選手との格差はあまり感じませんでした。道具に関しても、スポンサーから年度始めにグローブやバットが支給されました。ただ、追加で頼むと、自腹で払う必要がありました。

 また、育成3年間で支配下登録されなければ、ソフトバンクの場合はクビになります。育成は、支配下よりも下手だということで、朝早くから練習が始まり、練習時間は支配下に比べて長かったですね」

 ソフトバンクの育成選手は20名ほどが在籍し、年間80試合がおこなわれる。他球団より試合数が多く、アピールするチャンスに恵まれているが、選手層が厚いため、支配下登録率は12球団でいちばん低いという。

「二軍で首位打者になった田城(飛翔・現オリックス育成)でさえも、支配下登録されなかったですからね。足が速かったり、規格外のパワーがあるとか、何かひとつ突出したものがないと、支配下登録されるのも難しいし、ましてや一軍には上がれない。

 周東さんとは、1年間だけ一緒にやったんですが、やっぱり走力はすごかったですからね」

 一方で、「ソフトバンクの育成はうらやましいですよ」と語るのは、元広島カープ育成枠で投手だった岡林飛翔さん(おかばやしつばさ、21・元広島)。

「ソフトバンクと巨人は、そもそも選手の数が多いですから、実戦経験も豊富。カープの育成選手は4〜5人程度しかいなくて、二軍の試合にもなかなか出られませんでした。正直、プロという実感はあまりなかったですね」

 そして、わずか2年で戦力外を通告されたという。

「年俸は240万円でしたが、寮暮らしで3食つき月3万円だったので、苦ではありませんでした。クビは、2年めシーズンの成績やイップスという点から、薄々予感していました。

 コーチの指導は技術面ばかりで、イップスになったときにも心理的なサポートはなかったです。支配下だったら、違ったかもしれませんが……」

 その岡林さんと同じ年に現役を引退し、2020年、國學院大学に入学した元千葉ロッテ・島孝明さん(22・元千葉ロッテ)は、こう振り返る。

「僕の場合は最初から育成契約ではなく、ロッテの支配下でプレーしていたんですが、怪我で投げられないことが多く、3年めの終わりに球団側から育成を打診されました。しかし今後の人生を考えた場合、プロ野球に残るよりも、大学で勉強しなおしたほうがいいなと思ったので、打診を断わり引退しました。

 収入がガクンと減って、野球をやりながらお金をもらえていたことが、どれだけ幸せだったかを身に染みて感じます。もう一度プロの世界に戻れるチャンスがあったら? いや、もう戻らないですね(笑)」

 一軍で出場経験がある元プロ野球選手が、育成選手を取り巻く厳しい実状を明かす。

「僕がいたチームは、12球団のなかで育成選手のレベルはいちばん低かったと思います。『よくプロ野球選手になれたな』って思う選手もいました。

 ソフトバンクと巨人が育成選手を獲ってるから、とりあえず他球団も育成枠を設けているのが実情ですよ。一軍のコーチが一軍の選手を指導するのは簡単なんですが、育成をまかされているコーチは、大袈裟にいうと小学生に一から教えるようなものですから、かなり大変だと思いますよ」

 また、支配下登録されたとしても、そこから一軍に上がることは、さらに困難だという。

「実際にあった話ですが、支配下登録されて二軍で好成績を残した選手がいたんですが、一軍に昇格したのは別の選手。でも、『なんで一軍に上がるのは俺じゃないんだ』なんて首脳陣に言うと、昇格が遠ざかるから言えない。

 プロ野球の世界は『結果がすべて』ではなく、『ゴマすり』の世界。首脳陣自身が生き残るために、監督にゴマをするんですから」

育成施設も12球団随一といわれているソフトバンク

 最後に、巨人で育成から支配下登録されて一軍で活躍し、現在は(株)エイジェックスポーツマネジメントでトレーニングマネージャーを務める星野真澄さん(36・元巨人)に話を聞いた。

「育成と支配下とのいちばん大きな違いは、一軍の試合に出られるかどうか。僕のときは三軍はなかったので、二軍扱いでしたが、『契約金がない、年俸が抑えられている、一軍に出られない』というのが育成契約。当時は支度金300万円、年俸240万円でした。

 育成の年俸は、規定などもないと思うので、チームによって違うかもしれませんが、240万円より安いことはないと思います。人道的にも厳しすぎるじゃないですか」

 星野さんは、育成から入団年に一軍昇格を果たして活躍。その後、怪我で再度育成契約になったが、そこから2度めの支配下登録入りを果たすという、数奇な野球人生を送った。

「入団して、オープン戦期間中の3月の終わりには支配下登録されたので、僕は昇格が早かったんですよ。2度めの育成契約は、股関節の手術をしたときです。『実力不足で支配下を外されるならいいですけど、怪我で育成に戻すのはやめてください』と伝えたんですけどね……。手術費用などは、全部球団が持ってくれました」

 育成と支配下では、金銭面でも待遇の差は歴然だったと、星野さんは続ける。

「支配下に上がると、二軍の最低年俸をもらえるんです。当時は440万円ですね。一軍に上がって投げさせてもらって、2年めで1300万円まで上がりました。その翌年は二軍だったんで、年俸も下がって1050万円でした。そこからは緩やかに下がり続けて、みたいな感じですね。

 山口(鉄也)さんっていう、いい先輩(育成の星で、最高年俸3億2000万円)がいたので、年俸1億円を目指してやっていましたね。

 2度めの支配下のときは、二軍でいい成績だったんですよ。最多登板(3勝2敗3S防御率1.25)で、年間を通して成績も残せたのですが、それでも一軍に上がれなかったので、さすがに察しました。『一軍では使えないって判断をされたんだな』と。トライアウトに挑戦したもののオファーがなく、引退を決意しました」

 2020年の巨人は、育成出身の松原聖弥(26)がシーズン中盤から二番打者に定着するなど活躍したが、ソフトバンクや巨人などの常勝チームの育成選手は、「じつはキツい」と星野さんは続ける。

「チームが強いってことは、中継ぎ、抑えとか、打者もそうですけど、入れ替わりが少ないんですよ。安定した成績を残す選手がたくさんいるってことなので、そうすると『育成から上げてこよう』という話に、なかなかならない。『いま勝てているから、とりあえずいいでしょう』ってなっちゃう(笑)。そうなると、選手はどうにもできませんしね」

 また星野さんは、プロの世界にはどうにもならない “才能の壁” があることを思い知らされたという。

「『ある程度、自分に知識をつけて対戦すれば、勝てない相手はいないのでは』と思っていたら、ちょっと無理な打者もたくさんいましたね(笑)。規格外なんです。

 内川(聖一・当時DeNA)さんに、インハイのカットボールを投げたんですよ。左対右なんで、胸元に入っていくような球でしたが、170kmくらいの弾丸ライナーでレフトスタンドに打ち込まれました(笑)。

 普通、あの球は引っ張ったらファウルなんですよ。きれいにパチーンと叩いて、球が切れずにフェンスを越えていくっていう、その答えは僕の中になかった(笑)。キャッチャーの阿部(慎之助)さんから、『気にしなくていいよ、ソロでよかった』って言われましたけどね。

 あとは、ソフトバンクの松中(信彦)さんと対戦したとき、初球のまっすぐをフェンスまであと何cmってところにツーベースされて。そのときも阿部さんから、『三冠王だし、全日本の四番だし、お前のストレートなんて効かねえよ』って言われたんです。でもそれ、僕のドームでの最速球だったんですよ。148kmとか出て。

 そういうのを痛感したときに、『野球のやり方を間違ってたな』って思いましたね。自分の力を最大限発揮したところで、どうにもならない人たちがいるんだと気づかされました」

 2020年末、12球団の育成選手56人がクビを通告された。一方、2011年に育成ドラフト4位でソフトバンクに入団した千賀の年俸は、ルーキーイヤーの150倍近い4億円に。明日を夢見る選手にとって、“育成ドリーム” は、かなうものと信じたいが……。

(週刊FLASH 2021年2月16日号)

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