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「やれるだけやってください。弁護団もいるんで」Netflixで『全裸監督』が実現した舞台裏 - 「文藝春秋」編集部

 アメリカの大手動画配信サービス「Netflix」は今年1月、昨年末の有料会員数が2億人を超えたと発表した。

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 Netflixの作品は190か国以上にオンラインで配信され、映画やドラマ、ドキュメンタリー、アニメなどジャンルはさまざまだ。その多くはNetflixによるオリジナルの作品で、ストーリーと作り手の創造性を最優先にして制作されている。そのため他に類をみない質とエンタテインメント性の高さで、世界中で多くの視聴者を魅了しているのだ。最近では『愛の不時着』が記憶に新しいだろう。

 Netflixの作品は、昨年の第92回アカデミー賞では監督賞や作品賞など計24部門にノミネートされ、今年4月に発表される第93回にも、引き続き多くの作品がノミネートされると予想されている。

 日本で制作された作品では、『全裸監督』が大旋風を巻き起こした。バブルに沸いた1980年代の日本を舞台に、AV業界の帝王として君臨した村西とおる監督の実話をもとに描かれている。地上波ではありえない度肝を抜くシーンの連続に視聴者だけでなく、映像業界でも“攻めのドラマ”として大きな話題を呼んだ。


武正晴監督

 ドラマはシーズン1に引き続き、今年はシーズン2の配信が予定されている。総監督は、映画『百円の恋』『アンダードッグ』など気骨溢れる人物描写を得意とする武正晴。コロナ禍でシーズン2を撮りながら「監督を30年、続けてきてよかったよ」と語った武監督に、Netflixの魅力や現場の様子をたずねた。

◆ ◆ ◆

 実は2000年代に入って一時期日本の映画界にがっかりしていたんです。素晴らしい監督のもとで助監督として面白い現場も多々あったけれど、費用や観客の顔色をうかがうことばかりでまるで風呂敷を畳んでいくようにやることが小さくなって映画もどんどん先細りして。「やりたいことと全然違うじゃん」「貧乏くせえな」と思ったこともあった。

 小道具ひとつでもそう。撮影でコカ・コーラが必要になっても、本物は使わない。似たものを作ってそれを撮るのがみんなのルーティンワークになってた。「なんで、そんなことしてるの?」と尋ねたら、「いつもやってるんで」と答える。

「本物を使っちゃえよ」というと、「駄目です」「なんで?」「文句いわれます」「いわれた時に考えればいいんじゃない?」「裁判になるといけないですし」。使いたかったら交渉して許可を取って、お金が必要なら出せばいい。でも、その作業に手間も費用もかかるからやらなくなっていた。

 それで現場が「何か、しょうがねえじゃん」という雰囲気に陥るのがすごく嫌だった。じゃあ僕ぐらいは一発、頑張らなきゃ、なんとかしなきゃ、ってずっと思っていて。

『全裸』はやりたかったことを爆発させた

 そんな時に「どうぞやってください」ってNetflixの人が拾ってくれたんですよ。「やれるだけやってください。文句をいわれたら対処します。うちは弁護団もいるんで」って。これはもう本当に大きなチャンスだった。やらなくていいことから解放される。美術の人が徹夜してありもしない架空のジュースを作らなくて済む。

 Netflixは「映画を作るつもりでやってください」ともいってくれて。それはかっこよかったですよ。だから『全裸』ではスタッフも腕のある職人も、俳優も今までのやりたかったことを全部、爆発させた。

 たとえば演出では、あの時代をノスタルジックに見せるのではなく、アップデートさせたんです。衣装のデザインを全部現代のシルエットに変えるとか、色使いも元来のものから変えて今ならこの感じとか。リアルで攻めるか、もしくは嘘をつくかで「じゃあ、嘘をつこうぜ」とした。

 嘘をつくというのは映画の作り方としてどの時代も同じで「この時ジーパンはないけど、かっこいいから穿かせちゃおう」というノリのこと。僕らが60年代の物語を作る時と一緒ですよ。「なんかかっこいい」とか、片や「だっせぇ」とか、過去を面白がって振り返ることってあるじゃないですか。過去を懐かしむのでなくて、過去のいいところだけ取って、駄目なものは「新しくしちまおうぜ」という演出にしたんです。

◆ ◆ ◆

 作り手のクリエイティビティが存分に生かされる現場に、武監督は「今では、みんなNetflixへ行けよっていってますもん」と語る。コロナの時代に『全裸監督』のシーズン2を撮り続けられたのも、Netflixの支援があったからこそ、という。

 武監督による「『全裸監督』で突っ走る」の全文は「文藝春秋」1月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。

(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2021年1月号)

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