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「新卒一括採用」を就活"解禁日"に考える~まずは、70年代のように「大学4年の9月から」に戻したら?!

「新卒一括採用」は「20世紀の遺物」で見直すべき!

本日12月1日から、再来年の春に入社する大学生向けの企業説明会などが解禁となる。また今年も、丸の内や新宿で、個性のない全身黒づくめの無表情な若者達のスーツ姿に出くわすことを考えると、私は少々気が重くなる。昨年から2ヶ月遅らせたわけだが、1年半先に就職する学生が、一塊でオフィス街を動き回る椅子取りゲームに狂騒する様をみると、「就職活動の早期化・長期化」のそしりは免れないと思う。就活ビジネスを生業をしている皆さん以外は、ほんとのところ、素朴に「20世紀の遺物」ではないかと疑問に感じている人は多いのではないか。

 そんな中、「"新卒一括採用" 不平等で見直すべき? メリットは?」(11月26日産経朝刊)という見出しで、明大・加藤久和教授が、 「早急に見直すべきだ」と論じている。
 加藤教授は、元・国立社会保障・人口問題研究所室長で、少子高齢化の原因と影響などが研究テーマ。著書に「世代間格差」があり、この問題解決を語るにふさわしい人のひとりだと思う。

「不条理で、見直し必要。通年採用」が加藤教授の主張

 主張は端的で、「毎年の景気に左右されて採用数も変動する中、新卒時の1回にチャンスが限定されるのは不条理」。そして、「高度成長期で社員を大量採用する時代ではなく、終身雇用や年功序列といった従来の日本型雇用システムは崩れ始めており、企業がグローバル化を進める中で、採用形態も見直すべき時期」で「通年採用」をいうことだ。

「新卒一括採用」って、墨守するほどメリットがないのでは?

 新卒一括採用のメリットとして紙面で挙げられているのは、大学生にとっては、「廃止すれば、既卒者と新卒者が競合になり、競争激化」「通年採用が一般的になると、高望みなどをして延々と就職活動」「大学の教育力が不十分な中、初めて真剣に社会に向き合う機会の喪失」、企業にとっては、「採用の効率化とコスト軽減に寄与。新人を一度に教育でき、社風維持」くらいだ。

 私は、ほんとにこんなメリットくらいしかないなら、「廃止」でもよいとさえ思う。よく考えてほしいが、現役大学生にとって、新卒一括廃止すると、ほんとに既卒との対比で競争激化になるのか。"新卒好き"なのは大企業であって、それは過去の採用人事政策の"社内的評価"としての成功体験や前例踏襲主義からきてるだけではないか。中途採用で、ある程度社会人経験のある人との競合にはなるかもしれないが、未就労既卒者が急に有利になるとは考えにくい。むしろ現在、既卒者で新卒の時と企業の対応が違うので困っている人が多いことは、マイナビですら認めている(注1.)。

(注1.)「卒業後3年以内は新卒扱い」となったことに関する影響については、「卒業後に新卒扱いで企業に応募できた」(47.2%)や「卒業後も就職活動を続ける気になった」(35.6%)止まりで、既卒未就労者の半数以上が、厳しい環境におかれていることが判明している。(出所: 「2012年度マイナビ既卒者の就職活動に関する調査 結果報告」 )

 2点目の「通年採用が一般的になると、高望みなどをして延々と就職活動」も甚だ根拠が不明だ。現在就職が決まらない学生も、多くは早くから大企業だけでなく、中小企業にもあたっている。だから「延々」は新卒一括システム下でもあり、関係ない。通年採用下だけに起こるものでもない。

 3点目の「就活で初めて社会に向き合う」も後付でしかない。こんな社会経験不足の学生を出さないためにも、大学での修学環境は社会が監視し、守らなければならないのではないか。社会に向き合うのが、本格的な社会体験(ボランティアや国内外の留学等)や就業体験でなく、就活で行うのが初めてというのでは、あまりにお粗末で寂しい話だ。

就活に不安を感じる学生は9割とは"むべなるかな"で当然では?!

 私は、企業や就活ビジネス側ではなく、学生や大学にとって現行システムはデメリットが多いと考える。今年1月に、広島など中国地方5県の大学3、4年生(大学院生含む)計250人を対象に聞いた「就職活動に関するアンケート」(中国新聞社)の結果がある。見出しは「就活に"不安"を抱くのは3年生の9割強」というショッキングなものだった。 不安の理由は、過半数が「内定を受けられない」、行きたい企業や夢が見つからず、進路を描けない。 そこからは、就活を始めたばかりの3年生のうめき声が聞こえてくる。それが、就活周りで、うつや自殺を誘発してくるのではないか。

入学後、むしろ自由に就活をさせることで「就活ラッシュ」を緩和し、「大学4年9月」以降に官民挙げての"大就職フェア"実施!

 では、どうしたらよいか。私は大学入学後、学生・企業双方のコンタクトは、インターン、アルバイトなどと同様に、自由にしたらよいと考える。これで、新卒一括採用のような「混雑」は解消され、双方は冷静になれ、個性と選択が出せる。現に、外資系企業は国内で"自由に泳いでいる"矛盾も解消される。

 学生達は周りを気にせず、早めの就活をする者もいれば、おのおの修学や留学やインターンなどの就業体験・社会体験に打ち込みやすくなる。入学早々就活しても、企業は厳選採用のこの時代に、リスクを取って「青田刈り」する組織など少ないだろう。「早ければ早いほど有利か」というものではない。現在でも、今年4月に途上国での自主的なギャップイヤー(就業・社会体験)を終え、帰国した魅力ある4年生の学生は、厳選採用のせいか枠が残っていて、半年遅れから就活をして見事に人気企業に内定した猛者がいる。

 仮に、ユニクロのように、1年生にも内定という「青田刈り」があっても、それは双方の価値観であり、よいではないか。今の就活は建前はフェアだが、内実は大企業では指定校制(ターゲット校)があったり、リクルーターもターゲット大学に顔を出しで、透明感を欠いて不信が募る。

 そして、「大学4年9月」から、「卒業までの半年間と卒業後の3年間」は、産官学挙げて「就職フェア」にする。若年者雇用(タックスペイヤー養成)を促進するキャンペーン期間にする案だ。いわば「新卒一括採用」のフルモデルチェンジ版だが、70年代の会社訪問解禁は9月1日で実績もある。このタイミングで修業を完結させ、就活に加わる学生もいるだろうし、卒業後に就活に軸足を置くものも出現してくるはずだ。またこれにより、既卒になっただけで、断崖絶壁を味わうような処遇の落差はなくなる。

 現在の「新卒一括システム」は制度疲労を起こしており、残念ながら就活生の安全弁にはなっていない。会社が決まらない現4年生は、年越しで10万人規模になるのではないか。私案は、大学の授業(卒論含む)は、割り切って実質3年半にし(就活しない学生は4年)、「大学4年9月」からは学籍はあるが、これから先の働き先・起業を含めた生き方を決めるということだ。世界の大学をみても、必ずしも4年制とは限らない。3年で卒業する国も学科もある。そうすることで、満員電車に先を争って乗るような今の混雑は回避できる。

 40万人の就職希望学生が"恋する"大手人気企業200社といっても、たかだか2万人程度の雇用吸収力でしかない。そして、このような通年採用になると、"一括"の混雑ゆえの1学生のエントリー企業数平均60社(多くは、まともに読まれているかも疑問)といった珍事は、早々に"笑い話"になるのではないか。


 最後に、こんな既成ビジネスをつぶすような案を書いたら、批判を各所で受けると思う。だけど、批判する人のバックグラウンドがどういう立場の人か、若者にはどうか見極めてほしい。

参考記事:「"新卒一括採用" 不平等で見直すべき? メリットは?」(11月26日産経朝刊

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