コロナ禍が始まって以降、多人数での会食やパーティへの出席、果ては夜の銀座通いが発覚するなど、新型コロナ対策を担う政治家たちの情けない姿が相次いで報じられている。中でも特に国民をイラつかせた姿といえば、そのダラシないマスク姿だろう。
言うまでもなくマスクの着用は新型コロナ対策の基本中の基本。周囲への感染リスクを減らすことはもちろん、社会生活を続けながら少しでも経済活動を回すための社会マナーでもある。
厚生労働省もことあるごとにマスク着用を告知してきた。 先日も、大学入学共通テスト試験会場での「鼻出しマスクで失格事件」が報じられ、鼻マスクへの問題意識が高まった。
にもかかわらず、そのメッセージを発信する政治家たちのマスクに対する意識は驚くほど低い。 その姿を写真で振り返ってみよう。(取材・文=常田裕/清談社)
片耳掛け、マウスシールド…“バリエーションの麻生”
アベノマスクと安倍元首相を除けば、「国会議員とマスク」で、最も国民の話題となってきたのが麻生太郎副総理大臣だ。
海外メディアに「ギャングスタイル」と評される独特のダンディズムを持つ麻生副総理にとって、マスクの着用はよほど苦痛だったのだろう。コロナ禍の当初から、鼻出しや、マスクを片耳に引っ掛けたままでしゃべり続けるといったスタイルが目立ち、国民からはツッコミが相次いだ(これは配布されたアベノマスクが小さすぎたせいもあるかもしれないが)。
その後の記者会見では透明なマウスシールドがお気に入りだったが、これも飛沫が飛び散ってしまうため、かなり早い段階から「マスクとしての効果はほぼない」と指摘されていたはず。効果の低さに関しては西村康稔経済再生相や三原じゅん子厚生労働副大臣など多くの議員も警告を発していたが、麻生副総理の耳には届いていなかったのだろうか。

コロナ関連でも間違ったメッセージを連発して国民の不安を煽ってきたことは周知のとおり。
「(2月に突然決まった休校要請で、保育費用など補償のスキームについて聞かれ)つまんないこと聞くねえ。言われて聞くのかね? 上から言われてるわけ? かわいそうだねえ」(20年2月)
「これは風邪だから、はやり病だから」(20年5月)
「(日本の死者数が少ないのは)国民の民度のレベルが違うから」(20年6月)
「お金に困っている方の数は少ない。ゼロではないですよ。困っておられる方もいらっしゃる。だが、現実問題として(10万円の特別定額給付金で)預金、貯金は増えた」(20年10月)
また、年明けの会合でも、「誰が悪いとか飲食店が悪いとか、若いのがどうとか悪者探ししたがるけど、悪いのはコロナだからね」と、政治家としての責任感はどこへやらだ。
最近になってようやく大き目のマスクを装着しているようだが、鼻出しスタイルよりは、はるかにダンディに見えることだけは間違いない。
国会でマスクをずらしては指を舐め…菅総理
安倍政権時代は官房長官として、そして昨年9月からは総理大臣としてコロナ対策の指揮を執ってきた我が国のリーダー・菅義偉総理も、今年1月の国会では指をなめながら原稿をめくっていた。
菅総理のコロナ対策は決してうまくいっているとは言い難い。多くの反対の声が上がる中、昨年10月にGoToトラベルキャンペーンをスタートさせるも感染は全国規模で拡大。昨年末に宣言した「勝負の3週間」にも敗北し、年明けに2度目の緊急事態宣言を発出するまでに追い込まれてしまった。
国民への説明は明らかに不足しており、支持率も急落。つい先日の国会では、コロナ禍の影響で経済的困窮にあえぐ家庭に対する給付金の有無について質問され、「最終的には生活保護がある」と言い放った無神経ぶりにも批判が集まっている。
わざわざマスクを外して“密”な会話…加藤官房長官
昨年7月、参院の厚生労働委員会で“密”な会話を交わしていたのは、当時の安倍政権下で厚生労働大臣を務めていた加藤勝信官房長官。話をしている相手は、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(当時は新型コロナウイルス感染症対策専門家会議・副座長)だ。
コロナ対策で陣頭指揮を担ってきた二人だが、残念ながら今のところ失敗続き。特に加藤氏は厚労相として対応した「ダイヤモンドプリンセス号」の件で、「市中感染という概念がちょっと分からないんですけれど」という発言があったように、感染症に対応するには専門知識が足りないようにうつった。
昨年5月には、厚労省が医者に相談する目安として示していた「三七・五度以上の発熱が四日以上」という文言を削除する際に、以前から都道府県には柔軟な対応を求めていたとして、この文言を基準と捉えられたことを「われわれから見れば誤解」と述べた。まるで国民や保健所の理解不足が原因かのような発言も物議を呼んだ。
イソジンを大プッシュ、吉村洋文大阪府知事の「鼻マスク」
昨年のコロナ対応で全国区に名前を売ったのが吉村洋文大阪府知事。連日のようにメディアに登場して情報を発信する姿に対し、「吉村寝ろ」の好意的なエールが相次いだ。写真は昨年6月に大阪府の新型コロナウイルス対策本部専門家会議に出席した際のものだ。
とはいえ派手にぶち上げた「大阪モデル」は基準がグダグダで尻すぼみに。早ければ昨年秋にも接種が始まると豪語した「大阪ワクチン」もいまだ実用化に至っていない。他にも「嘘みたいな本当の話」として、コロナ対策にイソジンを推奨するなど、科学的根拠の薄い対策に飛びついて大風呂敷を広げる言動は、称賛の一方で失笑も誘っていた。
また、連携していた大阪維新の会の盟友・松井一郎大阪市長も、トップダウンで雨がっぱの寄付を呼び掛けたところ、「医療現場で使える代物ではない」と批判を浴びた。
この二人はコロナ対策のドサクサに紛れて大阪都構想の住民投票を推進したコンビであることも忘れるわけにはいかない。都構想は否決され松井市長は任期満了後での引退を宣言している。そんな二人が率いる現在の大阪は、人口当たりの新規感染者数などの指標が東京を上回る医療崩壊寸前の状況だ。