■地代に二倍以上の差
計画では定員29人の地域密着型特別養護老人ホームと通い15名、宿泊5名、登録29名の小規模多機能居宅介護事業用の施設が建設される予定だった。2月3日の厚生委員会への行政報告によると、取り下げた理由は、公的機関が持つ土地を使用した経験などを元に算出したが算定した地代と国が示した地代額の差が2倍以上と大きな開きがあったことが理由だ。
委員会では、このような大きな開きになった理由は何か、事業者の算定が甘かったのか、国の額の算定根拠は? といった質問が相次いだ。
答弁では、国の額の算定基準は分からない。通常、市が推薦した事業者を国が認めて交渉が行われるが、額は、当初から明確ではなく、途中で明らかになるのだという。
今回の場合は、令和2年6月19日に国の概算額が提示されたところ二倍以上の差があったことで、事業者が市からの支援なども含めて事業計画を再検討したが安定した施設運営は難しいとして令和3年1月13日付で取り下げとなった。
■森友問題が影響?
答弁の様子を聞いていると、どうやら決裁文書改ざんしたとされる森友問題の影響で地代が明確になり交渉の余地がなくなったように思えてしまった。国の算定根拠が分かれば、事業者でも算定しやすいが、根拠が明らかになっていない以上、同じことが他でも起きるかもしれない。また、政権が介護離職ゼロを掲げ、国有地を活用することを進めていたこともあり、この土地を活用して特養施設を整備する方針を市がたて、応募し財務省と折衝してきた経緯がある。それが、最近は聞かくなったとの答弁もあったことを考えると、国の介護離職への関心が薄れたことも影響したのか、とも思ってしまった。
いずれにせよ、残念な結果だ。市としては、別の方法で必要な定数の確保やこの土地の利用について引き続き検討するとしている。
【資料】
2021年02月03日厚生_中町3丁目国有地活用による地域密着型特別養護老人ホーム等整備事業について.pdf