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コロナを語る「専門家」、信頼できる人とできない人……どう見極めればよいのだろう - 佐々木 俊尚

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 どの情報が正しく、どの情報が間違っているのかを判断するのがとてもむずかしい時代になっている。ツイッターやウェブメディアなどインターネットの情報はもともと玉石混交だし、では新聞やテレビを信用できるのかというと、福島第一原発事故から新型コロナ禍にいたる間に、完全に信頼は失墜してしまったと私は受け止めている。

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 では専門家の意見なら信じられるのか。しかしこれも確実ではない。「専門家」と呼ばれていても、怪しげなことを言う人が少なくないからだ。たとえばコロナ禍では、たくさんの医師や研究者がテレビのワイドショーに出演したり、ツイッターで発言したりしている。「医師が感染症について語ってるのだから信頼できるだろう」と多くの人は思ったし、私も初期は漠然とそう思っていたが、実はそうでもなさそうだというのは、2020年春に緊急事態宣言が出るぐらいのころからだんだんわかってきた。


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 さらに厄介なのが、もともとは信頼できる専門家だったはずが、テレビに出演して持て囃されているうちに、だんだんと信頼度を落としていってしまうという「闇落ち」のような人もいるという現実だ。

信頼できる専門家がテレビに出て「闇落ち」する理由

 私も仕事で接触することが多いが、テレビの世界というのは、けっこう魔界である。魔界というのは、怖いプロデューサーやディレクターに恫喝されるとか無理強いされるとかそういうことではなく、まったく逆である。テレビのスタッフはみんな優しい。優しすぎて恐縮してしまうぐらいに皆さん物腰柔らかくて丁寧だ。

 だから出演者は素直な人になればなるほど、スタッフが求めているものを察するようになって、それに合わせて発言するようになっていく。その空気に反してでも言いたいことを言う専門家はいるけれど、そういう人はだんだんと呼ばれなくなったりして、姿を消していく。気がつけば、番組の空気に染まった人だけが残っていくということになる。

 全員ではないと信じたいが、テレビの人は、科学には弱い。もちろん科学番組を作ってる人たちはそんなことはないが、ワイドショーを作ってるような人たちはたいてい科学に弱い。「テクノロジーが人を幸せにするのでしょうか」というような昭和的な反テクノロジー・反科学的な姿勢が、ジャーナリズムにはいまも重要で有効だと信じてる人が多いのだ。そんな考えはとっくに時代遅れなのに。

 だからテレビのスタッフには科学的な専門家を見抜く知識はそもそもないし、もともとが反テクノロジー・反科学な人たちだから、そういう考えに沿ってくれるような「専門家」を求めてしまう。発言を強要することはないけれど、そういう空気感に染まってしまう「専門家」だけがテレビの現場に残ってしまう。おまけにそういう「専門家」は、空気への順応力がもともと高いこともあって、物事をめちゃめちゃ単純化してわかりやすく話すことが得意だったりするので、ますます手に負えなくなる。これが「闇落ち」の構図だ。

ツイッターでも「有名人」が「悪名人」に

 闇落ちの穴は、テレビのスタジオにだけではなく、ツイッターにもぽっかりと開いている。なぜならツイッターでは、過激で目立つことを言ったほうがバズりやすいからだ。当初はまっとうな発言をしていた人も、つい口走ってしまったことが思わぬバズになったことに味をしめてしまい、同じことを繰りかえすようになる。気がつけば闇に落ちている。

 闇落ちしたワイドショーのコメンテーターもツイッターユーザーも、「これで私は有名人になった」と内心喜んでいるのかもしれないが、その世界の専門家集団や良識ある人たちからは、眉をひそめられている。有名人ではなく、言ってみれば「悪名人」である。

 そして問題なのは、悪名人たちは決していなくならないということだ。福島第一原発事故のときにさんざんデマ的な言動をふりまわした人が、いまもテレビのワイドショーに普通に出ていたりする。新型コロナでおかしなことを言ってる医療関係の人も、きっとそのままテレビで重宝され続けていくのだろう。テレビや新聞の業界が根本的に変わらない限り、この構図は終わらないと思う。そしていまのマスメディアに、そんな自浄作用はない。

 だから一般社会のわたしたちは、この構図が改善されることをあまり期待できない。できることがあるとしたら、自己防衛しかない。つまり、より良い情報がちゃんと得られるような迎撃体制をとっていくということだ。

 そこで、わたし自身がかねてから行っているひとつの迎撃方法を紹介しよう。それは専門家の「集団知」をフォローしていくという方法である。

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