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包括指定の意味を考える1

10月28日、厚生労働省は、脱法ハーブの成分として使われる合成カンナビノイドの一部について、包括的な規制を導入すると発表しました。わが国の薬物規制にとって、未経験の一歩が踏み出されたわけですが、さて、具体的には何がどう変わるのか、そのイメージがなかなかつかみきれないところがあります。

当ブログでは、包括規制のあり方について繰り返し取り上げ論じてきましたが、具体的な導入が示された今、あらためて包括規制の導入とはどういうことか、考えてみたいと思います。具体的な規制案がまだ発表されないので、今は方向性しかわかりませんが、現実に即して、できるだけわかりやすい説明をするよう心がけます。

●包括指定によって約760種の合成カンナビノイドが規制対象に

これまでは、脱法ドラッグに使われる薬物について、1つずつ調べて個別に麻薬や指定薬物に指定してきたのですが、この方式では、とかくイタチごっこになってしまいがちです。そこで、細部が少し違うだけの類似薬物をまとめて規制対象に指定する、包括指定という手法が生まれたのです。

その方法は、化学構造の基本骨格に基づいて、想定しうるあらゆる置き換えのパターンのすべてを包括的に規制対象にするというものです。今回指定される基本骨格に関しては、化学的に想定した置き換えパターンを数え上げたら、規制対象が約760種に及んだというわけです。計算上は、置き換えパターンの数はもっと多いのですが、指定薬物に該当しないものなどを除外した結果、この数値になったようです。もっとも、そのほとんどは化学的に可能というだけで、まだ現実に合成されたこともなく、いずれ脱法ハーブの成分として登場するかもしれない次世代候補として水面下に控えている存在ですが、今回の包括規制によって、その登場があらかじめ阻止されることになります。

●対象は、合成カンナビノイドのうち最もメジャーなグループ

今回は、合成カンナビノイドのうち、もっともメジャーなグループをまとめて、一気に指定薬物に指定されるということです。

このグループを代表するのが、「スパイス」に添加されて、ヨーロッパで最初に出回った合成カンナビノイドのひとつJWH-018です。この化合物は、人体にあるカンナビノイド受容体CB1への結合力(親和性)が高く、脱法ハーブに添加するのに好都合な性質を持っていたようで、JWH-018が規制された後、その化学構造に類似したものが次々に登場し、製品化されてきました。このグループは、規制に対応して種類を切り替えながらも、合成カンナビノイドの主流として、脱法ハーブに使われ続けてきた、最もメジャーなグループであったといえるでしょう。

これまで日本の脱法ドラッグ市場に登場し、順次、麻薬や指定薬物として規制対象になってきた合成カンナビノイドは33種、そのうち15種は、このグループに属しています。ざっくり言って、これまでに登場した合成カンナビノイドのおよそ半分が、このグループに該当します。10月に新たに指定薬物に追加された10種の合成カンナビノイドの中にも、JWH-398、MAM-2201、JWH-182など、このグループに属するものが多数含まれています。

このグループは、脱法ドラッグ市場に最も多く登場していて、とくに強力といわれるものも多数含まれています。今回発表された包括指定によって、脱法ハーブに添加される合成カンナビノイドの主流を構成してきたグループが、そっくり規制対象になるわけです。
主力の成分を封じることで、脱法ドラッグ業者は次の一手を有効に繰り出すことが、かなり難しくなることでしょう。

●今回はあくまで第一歩、次の手が肝心

しかし、基本骨格で分類すると、合成カンナビノイドには8グループあるといわれるなかで、今回指定されたのは1グループだけです。たしかに、今回包括指定の対象とされたグループは、脱法ハーブに使われる合成カンナビノイドの主流を占めるものですが、ほかにも、基本骨格の異なるグループが存在し、実際に脱法ハーブの成分として使われてきています。

その意味で、今回の規制は、「ハーブ」製品に使われる成分を大幅に制約するものですが、合成カンナビノイド全体を排除するものとまではいえません。

さらに、脱法ドラッグに使われる薬物は、合成カンナビノイドだけではなく、覚せい剤に似たタイプや、幻覚系の薬物など、それ以外のものが多種多様にあります。最近では、覚せい剤に似た薬物が乾燥植物に添加されて「ハーブ」として出回り、いろんな事件や事故につながっているのです。

今回は手を付けていない部分が、まだまだ山のように残されているわけです。
私は、今回は、あくまでも第一歩であると受け止めています。引き続き、残りのグループに対して、包括指定を含めた迅速な指定を続けていくことが、肝要なのです。

次回は、包括指定の導入で、現場の動きがどう変わるのかを考えてみます。

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