1日にクーデターが起きたミャンマーに進出している日系企業の工場で生産を停止する動きが出ていたが、スズキは3日午後、ストップしていたヤンゴンにある自動車工場の生産を明日から再開すると発表、経済活動への影響は限定されてきている。
同社はクーデターの発生を受けて、ヤンゴンにある2つの工場で四輪車の生産を1日午後から停止し、安全を確認できるまで様子を見るとしていた。同社では従業員の通勤での安全確保の見通しが立ったことで生産の再開を決めた。一方、ヤンゴンで2013年から自動車部品を生産しているデンソーは同日の午後から工場の生産を一部中止しているという。
今月、ヤンゴンで小型ピックアップトラック「ハイラックス」の生産を開始する予定だったトヨタ自動車は、「現地の情報を収集中」だとしている。
2月は成田―ヤンゴン間で週2便の直行便を運航させる予定だった全日空は、クーデターを受けて12日の現地発便まで運休を決めている。
一方、ミャンマーで8割のシェアを持つビール大手のミャンマーブルーワリーに出資しているキリンホールディングスは、現時点ではビールを生産している工場は正常に稼働しているという。
またイオンは現地企業との合弁でスーパーマーケット「イオンオレンジ」の店舗を11展開しているが、一部で営業時間を短縮しているものの、ほぼ正常に営業しているという。
証券では大和証券グループは、ヤンゴン駐在員の安否の確認はできたという。クーデター後の1、2日と閉鎖されていたミャンマー証券取引所は3日には再開されている。
ジェトロによると、現地に進出している日系企業は1月末現在436社あり、現在、進出した企業から現地の情勢についてヒアリングをしている。
ミャンマーはアジアで最後に残された経済フロンティアとして、経済開発に期待が集まっていた。
懸念される長期化の影響
日本とミャンマーとの経済関係は、2012年の両国の首脳会談を受けて強化され、日本からはインフラの整備などで経済支援を拡大させてきた。中でもヤンゴン南部に設けられた日本とミャンマーが共同で開発する「ティラワ経済特区(SEZ)」はその象徴的存在となった。
2014年に日本とミャンマー政府、日本の総合商社3社などが参画して同経済特区に事業会社を設立、特区立ち上げを推進してきていた。この特区には総面積2400ヘクタールの工業団地が作られ、スズキがすでにこの団地に進出して四輪車を生産、続いてトヨタは同団地に完成車工場を建設し、2500台規模で小型ピックアップトラックを生産する計画をしている。
ミャンマーは2011年の民政移管を受けて欧米諸国からの経済制裁が解除されたことから世界から有望な投資先として注目され、外資の投資規制も緩和されて海外からの開発援助や直接投資が流入し、鉄道、電力などインフラ投資が活発化してきていた。
日本を含めた外国資本はこれから本格的な投資を開始しようとしていや矢先に、予想していなかったクーデターに直面することになった。クーデターによる軍政が長期化すれば、これまで積極投資してきた外国資本は逃げ出す可能性もある。