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様子見ばかりの加藤官房長官答弁で露呈する「プリンシプル(原理)なき外交」

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アメリカでバイデン政権が発足し、トランプ前政権のルールなきアメリカ第一主義からルールを重視した国際協調主義へアメリカ外交の大転換が行われています。一方で、ロシア・ミャンマー・中国などの権威主義的国家では、基本的人権の尊重・国民主権・ルールの遵守といった先進民主主義国家の原理(プリンシプル)とは相いれない動きが顕著になっています。

ロシアでは、反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の釈放を求めるプーチン政権への抗議デモが先月末にロシア全土で行われましたが、治安当局はモスクワ中心部を事実上封鎖するなどして、80以上の都市で4千人が拘束されました。

ミャンマーでは、軍が、明白な証拠がないにもかかわらず、昨年行われた選挙で大規模な不正が行われたと主張してアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領のほか与党国民民主連盟NLDの幹部を相次いで拘束し、非常事態宣言を出して政権を掌握しました。

中国では、全国人民代表大会常務委員会(全人代)が海警法を成立させ、2月1日から同法が施行されました。中国海警局は日本の海上保安庁に相当する海上法執行機関(沿岸警備隊)ですが、実際には軍と一体化しており、その海警局の具体的な任務内容を規定したのが、今回成立施行された海警法です。

海警法は法執行権限が及ぶ範囲を「管轄海域」と規定していますが、これが曖昧で、中国政府が恣意的に南シナ海の南沙諸島や尖閣諸島まで管轄海域だと主張する可能性があります。そして、海警法は外国公船に対して強制的措置をとれると規定していますが、このこと自体が国際法違反と指摘されており、海警法の施行は国際秩序との決別を宣言するものだと批判を浴びています。

いずれも、民主主義やルールを軽視する権威主義的リーダーが、自身の権益を守る(または拡大させる)試みであると言えます。権威主義者のなりふり構わない蛮行に対して、日本政府は強い態度で非難し欧米諸国のように制裁を科す意思は示しておらず、下記の加藤官房長官の官僚的なコメントから分かるように様子見に徹していると言えます。

  • ロシアのプーチン政権への抗議デモに関して
「深い懸念を表明する。政治的動機に基づくナワリヌイ氏の逮捕・拘束を非難し、即時かつ無条件の釈放を求める」「引き続き状況をよく注視して邦人保護に万全を期していく」

  • ミャンマーのクーデターに関して
「スーチー氏の解放を求めるとともにミャンマーの現状に対して重大な懸念を表明する」「関係国との連携を図り、事態の推移を注視し、何が効果的かとの観点から、今後の対応を検討したい」

  • 中国の海警法施行に関して
「国際法に反する形の運用があってはならない」「引き続き高い関心を持って注視する」
海警法の施行に関しては茂木外相も同様のコメントを出しましたが、海警法自体が国際法違反と指摘されているのにそのことに言及しない弱腰な姿勢では中国の暴走は抑えられないでしょう。

日本国憲法の三大基本原理が基本的人権の尊重・国民主権・平和主義である以上、日本国の外交もそれに整合的な形で行われるのが筋です。しかしながら、実際には自民党政権下で行われてきた外交は近視眼的に実利を求める傾向が強く、自民党首班政権が世界に対して憲法の三大基本原理の普及に向けて積極的に行動したと言えるケースは少ないのではないでしょうか(なお、1957年に「日本外交の三原則」というものが発表されてはいますが、相互に矛盾しているので実施不可能だとの強い批判があります)。

特に、安倍前首相と菅首相は自身が立憲主義・民主主義のプロセス・説明責任を軽視してきたことから、他国で起きている非民主主義的な動きに関しても、日本の利益に大きく影響するものでなければ総じて関心が薄かった印象があります。

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