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仏、「外出禁止強化」見送り


トップ写真)マスク姿で週次会議に出席する仏、ジャン・カステックス首相
出典)Chesnot/Getty Images

Ulala(ライター・ブロガー)

フランスUlala の視点」

【まとめ】

・新規感染者数落ち着き・下水中ウイルス減少・変異ウイルス流行が緩やかで
「外出禁止強化」見送り決定。

・医療関係者は外出禁止強化を、外食産業関係者は規制緩和を望む。

・各業種の立場踏まえ、政府の有効な感染抑止策打ち出し求められる。

先週、フランスでは、3回目の「日中を含む外出制限」が行われると散々メディアで騒がれていたが、そんなメディアに対応する政府関係者は「まだ何も決まっていないのだからあまりそういった報道はしないで欲しい。」と、イライラしていたという。

しかしながら、報道の過熱はやまなかった。そんな状況の中、1月29日の金曜日の夜に遂に会見が開かれた。ジャン・カステックス首相は、「まだ感染拡大を回避するチャンスがある。」とし、外出禁止の強化を見送ることを発表したのだ。

カステックス首相は会見で、変異ウイルスの感染拡大の恐れが高まっているため、夜間外出制限に加え、31日からはEU域外の国との間で不要不急の出入国を原則禁止した。また、デパートなど2万平方メートル以上の必需品以外を売る大型商業施設を閉鎖するとした。


(写真)生活必需品以外を売る大型商業施設の閉鎖指示に従い、休業する老舗デパートのLes Galeries Lafayette
(出典)Pierre Suu/Getty Images

そして、オリヴィエ・ヴェラン保健大臣がジャーナル・ドゥ・ディモンシュ紙(JDD)から受けたインタヴューでは、外出禁止の強化を見送った理由が説明されている。

この4日間、感染者数がほとんど増加しなかった

金曜日に国防委員会で話し合われた時点で、4日間の新規感染者数がほとんど増加していなかったことが理由の一つとなった。

確かに、先週の新規感染者数を見ると、増加傾向はなく一定の安定を見せている。

先週の新規感染者数

4240人(25日)(月曜日は週末に検査する人数が少ないので少なくなる。参考:前の週の月曜日3736人(18日))

22086人(26日)

26916人(27日)

23770人(28日)

22858人(29日)

下水中の新型コロナウイルスが微量に減少した

このように、検査の結果でわかる新規感染者数が横ばいになったのに加えて、下水中の新型コロナウイルスが微量の減少が確認されている。

フランスでは、間接的に新型コロナウイルスの感染状況を知るために排泄物に含まれる新型コロナウイルスの量を調査している。感染したとしても発症には平均で5〜6日、長い場合は2週間かかることもあるため、検査の結果で感染状況を把握するには時差がでてくるのだ。

だが、下水でウィルス量を調べることにより、現時点での感染状況をほぼ翌日に予測できる
。その下水での検査において、イル・ド・フランスでウィルス量が多少減少しているという。これは夜間外出禁止令の効果を意味する可能性があるとヴェラン保健大臣は説明した。

■ 変異ウィルスの流行が他国より激化していない

会見では、変異したウイルスが感染拡大を加速させるおそれがあるとして、フランスとEU域外の国との間の出入国を31日から必要不可欠な場合を除いて禁止すると発表されたが、しかしそれでもフランス国内の変異ウィルスの流行状況は他の国よりもゆるやかだという。

2回目の変異ウィルスの流行状況調査結果では、現在、全体の新規感染者の10%を占めていることが分かった。これは前回より50%の増加となったが、70〜100%の増加があった他の国よりは激しい増加ではない。

■ 意見が分かれるフランス国民

以上のことより、3回目の「日中を含む外出制限」はとりあえず見送ることなったのだ。しかし、ヴェラン保健大臣は、「変異ウィルスの流行のため、再度流行が拡大する可能性は十分ある。しかしながら、それは現時点で可能性なだけだ。もし今後実際に感染が大幅に広がった場合は、躊躇なく外出禁止の強化を行う。」ことも付け加えた。

会見後に行われたJDDの調査によれば、60%のフランス国民は、外出禁止を強化することに賛成すると回答されている。会見前の過熱したメディアの報道では、現在までに行われてきたあらゆる規則の影響で、経済的、メンタル的に落ち込む人がいることが多く伝えられていた。しかしながら、大半のフランス国民は感染を抑えるために外出禁止を強化することを望んでいる姿がうかがえる。

特に、医療関係者の疲労は激しく、マルセイユなどではすでに病床が足りなくなっており、他の地域の病院に患者を移動しなんとか保っている状態だ。そういう状況の中、なんとか患者数を抑えるためにも外出禁止を望む医療関係者は多い

しかし、一方、閉鎖を強いられているレストラン関係者は、経済的にも、働けないという心理的にも追い詰められている状況であり規則を緩和する声が多い。ニースでは、約100人の客を招いてランチ営業を決行した経営者も現れた。また、2月1日から規則を無視してレストランを全国一斉に開店しようと呼び掛けているシェフもおり、すでに複数のシェフや一般の数千人が賛同している状況だ。

業種や立場によりフランス国内でも受ける影響の差も大きく、意見の相違も激しい状況でもある。フランス全体としての一致団結が呼びかけられるが、どこまで続けられるだろうか不安もよぎる。フランス政府はこういった状況を踏まえたうえで、今後も有効な感染抑制対策を立てることが求められている

参考リンク
Olivier Véran au JDD : “On pourra peut-être éviter la nouvelle vague”SONDAGE. Les Français prêts pour un reconfinement… souple

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