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改めて確認。緊急事態宣言の目的はZEROコロナではない。

栃木県を除き、緊急事態宣言が延長された。医療体制整備がまだ整っておらず、現に受入病床数にゆとりがない現実、強い措置を求める立憲民主党や共産党などの政治的攻勢、新型コロナの脅威を煽るマスコミの状況などから、政権維持に欠かせない支持率をにらまざるを得ない政府与党にしてみれば、政治的にやむを得ない決断だったと言えるだろう。

ただし、客観的にみた場合、今の日本のやり方を含め、いわゆるロックダウンにどこまでの効果があるのかは不明。

中国のように、感染者が出ると1000万都市だろうが100万都市だろうが、交通を遮断して自宅からの外出さえ禁止してわずか数日で全員にPCR検査を行い、それを複数回行って完全な封じ込めをはかるというやり方でも取れれば話は別だが、欧米のような小売店・飲食店のほぼ全面的な営業禁止でも感染者はゼロにはできない。

ましてや、日本のように特定業種の営業時間制限に留まる程度の社会的距離戦略であれば尚更のこと。

ここで、欧米のような、そして日本のようなロックダウンでは、新型コロナウイルスの根絶はできないことを再確認する必要がある。

また、中国やニュージーランドのような徹底的なやり方を取ったとしても、世界にこれだけ蔓延してしまっている現況からすれば、感染者をゼロに近く押さえ込み続けるには、永遠の鎖国を続けた上で強権的な封鎖を繰り返すしかなく、いつかは限界が来るだろう。

だから、いくら緊急事態宣言をしても、いくらオープンにPCR検査を拡大しても(この点は「穴の開いたバケツに〜」参照)、どこかの党がスローガンにしているような、ZEROコロナは不可能。

では、なぜロックダウン戦略を取るのか?

それは、結局のところ新型コロナウイルスが普通の感染症として日本という国に受け入れられるまでの時間稼ぎ。その基本を忘れてはならない。

このパンデミックの初期、イギリスのインペリアル・カレッジのファーガソン教授らのグループ、そしてハーバード大学のリプシッチ教授のグループが、相次いで同様の論文を発表した(NATIONAL GEOGRAFIC)。

それによれば、

「ICU病床の逼迫具合をトリガーにして『社会的距離戦略(論文中では学校や職場を閉じ、集会を禁止するなどの準ロックダウン的状況を想定)』の開始と解除を繰り返し、2022年までかけて集団免疫を獲得できることになっている。」

これが発表されたのは、2020年3月だが現在までの流れはまさにこの予測どおり。

結局のところ、医療機関の逼迫を防止するために感染者増に併せてロックダウン戦略を取ったとしても、ゼロにまで持って行くことはできないので、ある程度のところで解除し、それを繰り返して「医療的対処水準を超えるオーバーシュート」が起こることを防ぐ、というものだ。

昨日(2月1日)の日本のアクティブな入院治療等を要する者の数(厚労省オープンデータ)は46319人。1万人あたり3.7人なので、上記グラフからいけばそろそろ解除の時期。

社会的距離戦略を取り続けても、低減には限度があり、決してゼロにはできない。

一方で、これを取る期間が長ければ長いほど、社会に与えられるダメージは大きくなる。ダメージを直接的に受ける飲食店のみではなく、その従業員として働くアルバイト・パートの方や、やその取引先の卸売業者、さらにはその仕入れ先の農産物生産者、漁業関係者や物流業者にまで、幅広く影響はあり、期間が長引いていることから、その効果は、ボディブローのように日本中に浸透しつつある。

したがって、一定のレベルにまで数字が下がれば、躊躇無く社会的距離戦略は解除することが必要。医療的対処水準だけでなく、人々の暮らしも政治は守らなければならないからだ。

その観点からすれば、医療的対処水準を高める努力も必要。解除の時期をより早めることが可能になるからだ。

この点の努力が、今まで日本ではおざなりにされてきた。これまでずっと指摘したところだが(最近のものとして「浮かび上がった医療側の課題」)、昨年末ころよりマスコミなどもこの点に目を向け始め、今回の特措法・感染症法の改正において、特措法にこそ明記されなかったものの感染症法に「医療機関」という文言が明記され、勧告対象となったのは大きな前進だ。

そろそろ結論。この論文発表時と異なり、現在はワクチンが完成し接種がもうすぐ始まろうとしているが、それが十分に国民に行き渡るまでにはやはり1年以上の月日を要するだろう。

したがって、この戦いはまだしばらくは続く。そういったスパンを考えたとき、国民や社会にとって耐えきれない負担をもたらすZEROコロナが緊急事態宣言の果たすべき目標ではないことを再確認する必要がある。

緊急事態宣言の果たす役割を十分に理解して、できうる限り早期に解除措置を取ることも政権の大切な課題だ。

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