■企業精算したトイザらスが復活するもコロナの影響でいきなり閉鎖した。トイザラスの商標権を保有するツルーキッズ(TRU Kids)が2019年末にオープンした2店舗の閉鎖を明かしたのだ。
ツルー・キッズの広報は29日「新型コロナウイルス感染拡大を受け店舗戦略について、より集客が見込めるロケーションやプラットフォームへ軸足を移す戦略的決断を行いました」と発表した。
ツルーキッズによるとニュージャージー州パラマス地区にあるウエストフィールド・ガーデン・ステート・プラザSCのトイザらスを1月15日に閉鎖。続いてテキサス州ヒューストン近郊にあるギャラリアSCにある店舗も19日に閉店したという。
この2店舗は、2018年に企業清算したトイザらスをトゥルー・キッズ社が商標権を買収し、IoTのショールームを展開するベータ(b8ta)と提携して翌年末に復活させていたトイザらスだ。
トイザらスといっても約6,000平方フィート(約170坪)しかなく、以前の店舗に比べるとかなり狭い。店舗面積が狭い理由として、新トイザらスは従来型の小売業のように商品を売って儲けるビジネスモデルを採用していなかったためだ。
小売業界の改革を目標に掲げるベータでは、IoT製品をお店の棚に並べる棚貸し代「スロッティング・フィー(Slotting Fee)」で利益を得るビジネスモデルをとっている。
食品メーカーがお店の棚に商品を置かせてもらうためにお金を払うスロッティング・フィーはスーパーマーケットでよく行われている商慣習だ。
出品者となるIoTメーカーはベータに展示スペースを借りる形で出品することになる。賃貸料はその広さにもよるが1ヶ月2,000ドル〜というわかりやすい価格設定となっているのも特徴だ。
そのかわり売上の100%はメーカーが得ることができるのだ。
新トイザらスも玩具メーカーが出品者となるビジネスモデルを採用している。新トイザらスはまたソフトウェア企業のリテールネクストと提携しており、店内にあるカメラから割り出した顧客行動等、販売データも共有できる仕組みとなっていた。
つまり出品者らは、出品期間中に何人のお客がその商品に興味を持って立ち止まったのか、またどれだけ手に取ったのか、何個が実際に販売されたのかという定量的なデータを得ることができたのだ。
これらのデータを生かして新商品の工夫や改善、次回の商品開発につなげていく。基本的に接客による売り込みはおこなわないものの、スタッフがお客にヒヤリングをおこなうこともある。
しかし棚貸しとなるB8Taのビジネスモデルもお客が売り場に来ないという問題で黄信号がともってしまっている。
パンデミックの影響でモールから撤退する大手チェーンストアが後をたたない。集客力を落としたモールから更にお店が撤退するという負のスパイラルに陥っている。モールの空洞化でそもそも売り場に人がやってこないのだ。
店内でもさらなる感染リスクを気にして商品を気軽に触れなくなっている風潮もある。デモンストレーション用に置かれた商品はお客が触った後、消毒される。わかっていても誰にとっても気持ちのいいものではない。
人が来ないし気軽に試用も行わないため定量データもとれなくなっている。これでは出品料を払ってまで売り場に出品する意味がない。
ビジネスモデルを変更し10店舗まで展開するという新生トイザらスの目標は果たせなかった。b8taの「棚貸し」ビジネスモデルもパンデミックが続けば経営悪化となるのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。再生トイザらスの閉鎖はコロナの影響が大です。が、破綻・消滅したチェーンストアの復活は極めて難しいと思っています。一つにはイメージが悪いから。企業はイメージがすべてといっても過言ではありません。イメージとは、解釈。ニーチェが言ったとされる「事実というものは存在しない。存在するのは解釈だけである」ということ。もっとも分かりやすい事例が、父と娘によるお家騒動が続いたことで業績を悪化させ、企業価値を毀損した大塚家具です。
家族間の確執がメディアで大きく取り上げられた当時、大塚家具の宣伝になっていると言われていました。一方、後藤は2015年当時、「PRとして最悪です。『店に寄るけど買い物しない』『話題にするけど買い物しない』ような人が増えるだけです。家族が崩壊している家具屋さんから、一家団らんの象徴となるダイニングテーブルを買いたいとは思いません」と指摘していました。大塚家具に悪いイメージがついてしまい事実上の失敗でした。
理由が異なっていても2度も失敗したことで、イメージが悪すぎるためトイザらスの(店舗展開での)復活はもうないと思っています。