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多党化は国民にとって歓迎すべきこと

ひとびとの価値観や立場が多様化するにつれ、政党が多極化するのは自然なことです。国民の大多数が、公共工事や助成金などの利権とは無縁で、また組合にも組織されていないので、なおさら社会の多様性は政治にも反映されてきます。実に多くの政党がでたことで、なげやりにわけがわからないと評論するマスメディアには困ったものですが、さらに混乱させ、ノイズとなっているのは、政党としての要件を満たしているのかと疑問に感じる組織や個人をも政党として扱おうとするからです。

例えば「新党日本」です。これは田中康夫さんそのもの、議員個人の立場に過ぎず、政党とはいえません。よしんば主義主張が立派だとしても、仲間を集めることができないとすれば、政治を動かす能力がないということです。「新党改革」についてもいえます。2名しかいないのですから。まずは組織をつくることが先決で、いまは申し訳ないけれどノイズでしかないのです。

さて、政党の主張を明確にし、国民が決める政治に近づこうとすればするほど、政党はある程度増えます。55年体制といわれる資本主義を守ろうとする保守勢力と、社会主義革命あるいは社会主義化をはかろうとしていた革新勢力が対立していた時代は、政策の違いは、政権党のなかの派閥で争っていればよかったのです。しかしベルリンの壁が崩壊して以降は資本主義対社会主義の対立は意味を失いました。そうなって日本の場合は、革新勢力が衰退していきます。革新勢力の第一党の旧社会党も、村山総理の誕生を最後に、自民党に飲み込まれ消滅します。

保革の対立を失うと、当然、同じ保守と言っても、理念や価値観、支持母体による政策の違いが浮上してくるのは当然です。もともと共産主義化を阻止するために席を同じくしただけなのですから。

国民が選びようのない党内調整で決められていく政治はそれで破綻します。党内の派閥という党内政党の争いや、調整で政治を決めていた自民党が政権を失ったのも当然でした。また政治が利権化し、家業化し、二世議員ばかりとなると政治も劣化してきます。だから「自民党をぶっ壊す」と自らを否定することでしか生き延びることができなかったのです。

対抗勢力として政権をとった細川内閣はあまりに脆弱でした。また民主党政権が誕生したのですが、残念ながらいずれもが、「非自民」という限界を背負っていたように今になっては思えます。

そこに集まってきたのは、やはり理念や価値観、また政策で一致した人たちというよりは、政治が家業化した自民党の候補になれなかった人たち、また生き残りのために合流した旧革新勢力の人たちの寄り合い所帯に過ぎなかったからです。

「自民」か、「非自民」かという貧しい選択は、わかりやすいとはいえ、いずれも党内は雑居でしかない組織を選ぶことになってしまったからです。違いがあるとすれば、自民党が建設業界を、また民主党が組合を支持母体とし、その影響力が大きいことぐらいでしょうか。

しかし、公共工事の恩恵を受ける建設業界がいかに就労人口が多いといっても、総人口の10%にもなりません。また日本の労働組合の組織率は20%を切っているだけでなく、組織率や影響力は長年低下傾向にあります。つまり、ほとんどの国民にとってはどの政党を支持しても、また所属したとしても恩恵がなく、政策によって利害を考えるしかないのですが、受け皿がなかったといえます。民主党はマニフェストで新しい政策を掲げて支持を得ましたが、政権を取ってみると実際には国民が納得できるだけの実行ができず、失望させてしまいました。

そんななかで政策の違いから民主党が分裂したのは歓迎すべきことです。違いが以前よりも明らかになりました。ようやく国民が政策で選べるようになったのです。地方分権、官僚による中央集権体制からの脱却を主張する維新の会と、みんなの党の主張もほとんど同じで明確です。合流できなかったのは、やはり人間は理屈だけでなく、感情でも動くためにしかたなかったのでしょうが、やがては統合されるものと思います。嘉田滋賀県知事が党首となった日本未来の党は、環境から政策を考えるというひとつの流れとしておそらく女性票を集めるでしょう。

こうやって見ていると、まだ「脱戦後」の55年体制の古い体質を引きずっているのが自民党です。雑居政党であり、だから公共工事という先祖返りと、金融政策にしか党内一致を見出せなかったのでしょう。

政権を取ればなんでもありというのでは、政策よりは地元の利権で動くということにもなってしまう危険性をも抱えます。野党になった後に、党内の改革ができなかった、だから与党を批判するだけの、かつての55年体制の体質から脱皮できなかったのです。非常に不安定な構造をもった政党であり、おそらく政権の座についても、この激動する時代に耐えることは難しく、また短期政権で終わると思っています。現在の自民党への支持率も皮をむけば、民主党政権への批判票がかなり含まれているのではないでしょうか。

自民党も分解すべきで、その試金石となるのがTPPでしたが、やはり玉虫色で終わらせてしまっています。党内事情がそうさせるのです。弱みを持っていることを安倍総裁はわかっているから、よけい他の党の批判に力がはいってしまうのです。それは自らに自信がないことの裏返しでしかありません。

国民がそれぞれの政党の理念や価値観、また政策で選ぶ選挙にようやくなりつつあるといえ、それが定着するのは時間がかかるかもしれません。マスメディアの報道もこの流れについてきておらず、コメンテーターの解説も的が外れたものが目立ちます。

しかし、ようやく国民が政策を選べるようになったことは、日本の民主主義を進化させるためには大いに意義があると感じています。重ねて言いますが、論点を複雑化させ、そういった流れに水を差しかねない個人政党は、いずれかの政党に合流するか、潔く無所属の立場を取ることが国民の利益であり、政治家としての良心ではないでしょうか。

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