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旅行代理店、航空会社は大打撃 五輪中止で経営危機に陥る会社名

東京五輪が中止になると、窮地に陥る企業とは(時事通信フォト)

 東京五輪「中止」が日に日に現実味を増してきた──。もし、このままコロナが収束せずに東京五輪が中止となった場合、日本経済はどれほどの損失を被ることになるのか。関西大学名誉教授の宮本勝浩氏が解説する。

【表】売上高・前年比15.4%減のアシックス(ゴールドパートナー)、約60%減のJAL(オフィシャルパートナー)…スポンサーレベル別、五輪協賛企業の業績推移

「経済損失は4兆5000億円超になると考えられます。これは実に日本のGDPの約1%に相当する金額です。これまでの設備投資の経済効果は完了していますが、大会開催中の“観戦客などの消費効果”や大会終了後の“レガシー効果”が消失することになる」

 すでにその影響は現われてきている。東京商工リサーチが1月27日に発表したレポートによると、昨年2月以降、新型コロナ関連の経営破綻は累計971件。その中には五輪開催によるインバウンド需要を見込んでいた企業の倒産例も少なくない。

 中止の影響が最も大きいのが、大会を支える「オフィシャルスポンサー」企業だ。東京オリンピック・パラリンピックの国内スポンサー企業は、出資額が最上位の「ゴールドパートナー」15社を筆頭に、「オフィシャルパートナー」が32社、「オフィシャルサポーター」21社の計68社だ。

 具体的な金額は公表されていないが、それぞれがスポンサーランクに応じた出資を拠出する。最も出資額が少ないオフィシャルサポーターでも10億円以上を負担しているとされる。

 前回大会まではスポンサーは「1業種1社」の縛りがあったが、日本オリンピック委員会(JOC)はその枠を撤廃。各業界の競合が相乗りする“呉越同舟”状態となったため、東京五輪のスポンサー料は過去最大だった北京大会の3倍にあたる「3500億円」と、史上最高を記録した。

 さらに昨年「1年延期」が発表された際には、220億円の追加出資に応じたため、総出資額は3720億円となった。スポンサー企業は事業が五輪と密接に関わっているため、中止決定は「経営危機」に陥るリスクとなりうる。

払い戻し資金をどうする……

 特に厳しい状況にあるのが、「旅行代理店」と「航空会社」だ。池田総合会計事務所代表で税理士の池田陽介氏が解説する。

「近畿日本ツーリストを傘下に置くKNT-CTホールディングスの決算短信を見ると、昨年4~9月の『営業活動によるキャッシュ・フロー』が32億円の赤字です。本業で獲得したキャッシュより、仕入れや人件費など社外に出たキャッシュが多かったということ。キャッシュ不足の前兆であり、厳しい経営状態に追い込まれつつある。五輪特需の喪失はその追い打ちになりかねません」

 ほかにJTB、東武トップツアーズと大手旅行代理店は3社がスポンサーを務める。大会チケット販売を担う旅行代理店は観戦チケット込みの五輪ツアーを販売している。

 昨年11月に大会組織委員会は希望者に観戦チケットの払い戻しを受け付けたが、国内向けに販売済みの445万枚のうち約18%の81万枚分しか申請がなかった。もし中止になれば、残りの82%の分のチケットやツアーのキャンセルがのしかかることになる。

 同様に経営難に陥るリスクがあるのが航空各社だ。池田氏が続ける。

「オフィシャルパートナーの日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)は、2020年度の予想売上高が前年比で6割前後の減少です。『営業活動によるキャッシュ・フロー』を見ても1000億円以上のマイナスになっています。政府は五輪開催による訪日観光客を4000万人と見込んでおり、これが失われることは航空業界にとって死活問題です」

 両社は五輪特需を見越して数年前から大型機を目玉とする新型航空機への1兆円規模の投資を進めてきたものの、納入延期となっている。

 航空会社と関係の深い「空港」も厳しい。経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。

「羽田空港ビルを運営する日本空港ビルデングは、2020年度の350億円の赤字に加えてこれまでの設備投資の負担もある。五輪に向けた滑走路の拡充などのために2016年から1750億円を先行投資してきただけに、旅行客需要減少の影響は大きい」

 同様に成田国際空港も2018年から、空港内の案内カウンターやトイレなどの「ユニバーサルデザイン化」のために50億円規模の投資をしている。

 スポンサー企業には含まれないが、五輪でのインバウンド需要を見越して建設・開業ラッシュが続いてきた「ホテル業界」も苦境に立たされている。ホテルチェーン大手のアパグループはコロナ禍により前期(2020年11月期)連結決算で経常利益は前年同期比で300億円以上マイナスの20億円程度だった。9割以上減益という深刻な状況だが、今年も新たに21の施設・4000室超の新規開業を控えている。

※週刊ポスト2021年2月12日号

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