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「罰則がない方が不自然」「むしろ燃やしたりする人が出てくるのではないか」 賛否両論の“国旗損壊罪”を議論

 日本を侮辱する目的で日の丸を傷つけると処罰できる「国旗損壊罪」。今国会で提出される見通しとなっているが、なぜこのタイミング、何のためなのか。

【映像】“国旗損壊罪”賛成派・反対派に聞く

 そもそもこの法案は、2012年に当時野党だった自民党が一度国会に提出していたものだ。自民党の石破政調会長(当時)は、日本の国旗を損壊したら外国の国旗を損壊した場合と同じ刑罰に処すべきと訴えていた。しかし、この時は衆議院が解散となり廃案に。

 インターネット上では「ヘイトスピーチがダメなら、国旗への侮辱もダメでしょ」「表現の自由を保障している憲法に違反している」など賛否両論が上がる。国旗損壊罪は必要なのか、不要なのか。1月29日の『ABEMA Prime』で議論した。

■自民党・長尾議員「罰則がない方が私は不自然だと思う」

「国旗損壊罪」は自民党「保守団結の会」が1月26日に下村政調会長に国会提出を要請し、下村氏も容認する考えを示している。

「保守団結の会」所属の長尾敬衆議院議員は「“シンボル”に対して敬意を表するというのは、自国あるいは他国の国旗に対しても敬意を表するということ。我が国の国旗に対して、侮辱を目的に汚損をするといったことへの法律が今まで存在していなかったことが、逆に私は非常に恥ずべきことであると思う。このタイミングで普通の形にしていきたい」と話す。

 国内での国旗破損事例を見ると、1987年に沖縄国体で男が日の丸を引きずり下ろして燃やし、器物損壊の罪などで有罪判決。2008年に靖国神社で男性が持っていた国旗を中国人が奪い踏みつけ、器物損壊容疑で逮捕された。

 器物損壊罪ではなく、新たな法律が必要なのか。長尾氏は「器物損壊という形ではなく、やはり国家のシンボルである国旗に対して敬意を表していくというところで、罰則がない方が私は不自然だと思う」と話す。

 一方、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は「論点がずれている。敬意を表するためでなく(国旗を)毀損した場合に罰する法律で、法律と敬意を示すことは関係ない」と指摘。長尾氏は「ひろゆきさんがこの問題に疑問を持たれることについて、僕は逆に疑問だ」と述べた。

 コロナ禍で他にも優先すべきことが考えられる中で、この法案を今通す必要はあるのか。「2012年に自由民主党の手続きをもって法案提出という機関決定を終え、いよいよ審議するという時に衆議院の解散があった。なぜこのタイミングかと言われれば、去年でも一昨年でも良かったわけだが、自民党の中でもう一度この法案を出していこうということ」。

■若新雄純氏「『日本を侮辱』という話だからわかりにくい」

 品川区議会議員で弁護士の松本常広氏は、「国旗損壊罪」に反対の立場をとる理由について、「規制にはいろんな対応があって、指導などがある中で刑事罰が前提。刑事罰を科す以上、何か理由が必要になってくると思う。日本で誰かが国旗を燃やすということが想像しづらい中で、この法律を出すには敬意と“何を守ろうとするのか”という目的が必要。

外国国章毀損罪はすでにあって、これがあるから日本でも日の丸について作った方がいいという意見はたくさんある。外国の国旗を守るのは怒りを買うからで、実際1950年代か60年代に、日本の国民が中国の国旗を燃やしたか引きずり下ろしたということで、中国が怒って外交上の問題が出た。これは日本人の尊厳ではなく、外交上の問題。今回何を守りたいかといったら、“日本人の集団的な感情”におそらくなると思う」と話す。

 また、感情を守ることに対する懸念として、「感情で気をつけなければいけない名誉毀損は個人の権利。これを日の丸という形で、特定の集団の尊厳といったもので考えていく場合、長尾氏に考えていただきたいのはヘイトスピーチの罰則化。日本人のプライドや名誉を守るという意味なら、例えば民族のシンボル、宗教のシンボルといったものも守ってくれないと困るという議論が出てくる。私は表現の自由を守る立場なので、そうしたものがどんどん広がっていくことを懸念している」と続けた。

 慶應大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「『日本を侮辱』という話だからわかりにくい。日本は人でも法人でもないコンセプトみたいなもので、愛国者に侮辱を加える目的で破壊した者を罰するという案だとすれば、世の中には愛国者という人が一定数いるのでわかりやすい。僕はX JAPANのYOSHIKIを神だと思っているので、YOSHIKIが侮辱されたら怒りを覚えるが、侮辱した人が直ちに逮捕されるかというとそれは表現の自由。その辺で議論されることだ。愛国者を侮辱することが罪になるかを考えればわかりやすいと思う」と、議論の本質について疑問を投げかけた。

■松本氏「すべての表現は表現で対抗するべき」

 ここまでの議論を受け、国旗損壊罪は本当に今必要なものなのか。改めて2人に聞いた。

 長尾氏は「国家というのはあらゆる私たちの生活の根源であるし、その象徴たる国旗に対してどの国籍であれどの国家であれ、除去や撤去あるいは汚損をする行為はやらないでほしいと思う。すでに大切にしてくれているというムードはもちろんあると思うが、その中で時に侮蔑する行為が現実にある。あるいはこれからもし発生することがあるようであれば、それは本意ではないので、この法案の中で議論してもらえればいい」と述べた。

 松本氏は「こういう法律ができた時に何が怖いかというと、むしろ燃やしたりする人が出てくるのではないかということ。反日や反政府的な人たちがある意味、“自分が英雄になりたい”と。場合によっては表現の自由に違反するということで、憲法訴訟を起こすようなことも起こり得る。そういったものを今の段階で生み出していくことに何のメリットがあるのか。(国旗損壊罪は)集団の名誉といったものを守ろうとする法律。私は表現の自由が極めて重要で、すべての表現は表現で対抗するべきだと思っている。もちろん名誉毀損は別だが、そういった立場からするとぜひ慎重に考えてほしい」と訴えた。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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