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「野球界の松岡修造になりたいんです」 “4年連続日本一”ソフトバンクを支えるベテラン・松田宣浩がいまも最前線で声を出すワケ - 林田 順子

 昨シーズン、巨人との日本シリーズを危なげない4連勝で制し、4年連続日本一に輝いた福岡ソフトバンクホークス。

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 毎年、快進撃を続けるチームの柱となっているのは、不動の三塁手として活躍し、今年38歳となる松田宣浩だ。プロ生活も15年を越えたとなれば、自身のプレーだけではなく、チームの中でベテランとしての役割も求められるようになる。

 松田はいま、そんな自身の立場をどう捉えているのだろうか。本人に話を聞いた。


 

◆◆◆

ムードメーカーを意識し始めたのは2012年から

ーー松田さんといえば、ホームランのたびに湧き起こる「熱男」コールなど、ソフトバンクのムードメーカーとしても長く活躍されていますよね。

 2011年までは川崎(宗則)選手がそのポジションでチームを引っ張ってきていたんです。でも、2012年に川崎選手がメジャーリーグに行くことになって。そのときに川崎選手に呼ばれて、「俺の立ち位置はお前に任せたから」と言われました。ムードメーカー的な役割を意識するようになったのはそこからですね。

 ただ、いきなりやれと言われても、どうしたらいいか分からなかった。大体、実績も出ていないのに、1人だけはっちゃけてると思われても嫌じゃないですか。成績や技術といったプロ野球選手としてのポジションと、盛り上げ役としてのポジションの両方でちゃんと目立っていかないといけないな…と。

 そういうところから始まって、怪我なく全試合出場したり、日本代表に選ばれたり、優勝に貢献できたり――。少しずつ実績が自信につながって、昔より今の方がしっかり声を出せるようになった。いまは8年前よりもチームを盛り上げて、元気に先頭に立つキャプテンになれていると思います。

35歳くらいから「ベテラン」と呼ばれたくなくなった

ーー松田さんはベテラン選手でありながら、誰よりも声を出していますよね。

 そもそも僕、ベテランと言われるの嫌いなんですよ。

 昔は早くベテランになりたいと思っていたんですけど、実際にベテランと言われる年齢に近づき始めた35歳くらいからどんどん嫌いになって。「ベテラン」って言葉のイメージは「ゆっくり、どっしり、発言だけ。ものを言う、オーラがある、怖い」って感じでしょ(笑)。

ーーとはいえ、チーム内では年長者の方に入りますし、周りも松田さんの言動を重んじますよね。

 そうですね。だから、軽はずみな発言はしないようにしています。僕が若いときもそうだったんですが、チームの上の人がぼそっと言ったことで、意外とグサっとくることがたくさんあるんです。「本当お前ダメだな」って言われれば「まじでダメなのかな…」とか、「ほんま打てないな」って言われたら「打てないのかな…」とか。

 親しくなるほど、つい言ってしまいがちだけど、その一言が選手をダメにする重りになってしまうかもしれない。何かを言ったり、アドバイスをするのは監督やコーチの仕事。ベテランだから何を発言してもいいわけじゃない。それよりも監督やコーチにはできない、若い選手が野球をやりやすい環境づくりこそがベテランの仕事だと思っています。

 そして若い選手は若い選手なりにそこから自分で感じて、自分で力をつけて、自分で結果を出して上がっていけばいい。普通の会社と野球とは少し違うフィールドではあるけれど、そういう部分は一緒なのかなとも思います。

チームで一番声も出して、しっかり成績も残す

ーーベンチで誰よりも声を出しているのも、環境づくりの一環ということですか?

 というか、そもそもベテランだから声を出さない、若手だから声を出すというのはおかしな話じゃないですか? スポーツ界の昔からのしきたりだからって、そんな馬鹿な話はないですよ。

 強い、弱い関係なく、同じチームにいるのならみんなで同じ気持ちになってプレーをするべきなんです。小中高、大学、社会人はもちろんですが、日本野球界のトップであるプロ野球選手こそ、ベテランがみんなの手本になるように率先して声を出していくべきです。

ーーそう思っていても実行するのはなかなか大変ですよね。

 成績を上げて、声もチームのムードも上げて…となると、正直年々、きつくなってきます(笑)。ただ、野球だけをやっていたら37歳の今まで、僕はプレーしてこられなかったと思うんです。チームで一番声も出して、しっかり成績も残す――そんな風に自分で自分にプレッシャーをかけることで成長できた部分もあるのかなと。

 逆に、チームとしてもいつまで僕に頼っているんだという思いもあります。まだ引退する気は全くありませんが、あと10年現役とはいかないと思っています。ただ、川崎さんから受け継いだバトンを渡せる選手は、今のところまだ出てきていません。

 だからこそ、まだまだ僕が高い壁となってプレーをして、同時にチーム全体を盛り上げる姿を見せて、僕がいなくなったときに「誰がやるんだ」というのに気づいて欲しいと思っています。

明るいチームは勢いが出やすくなる

ーー暗いよりも明るいムードの方がいいのは、なんとなく分かります。ただ、チームの強さと雰囲気はどこまで関係するんでしょう。

 例えば昔のホークスって明るいイメージが全くなかったと思いませんか? 僕が入団した時も「何、この暗いチーム」って思ったんですよ(笑)。すごい選手はいるんだけど、みんな堅物で雰囲気が重い。そうなると若手の中に、「一軍に行きたくない」という雰囲気が少なからず出るんですよ。川崎さんがいなくなった2012年も、まだまだ昔の雰囲気を引きずっていた。それがなくなったのは2014年の優勝からですね。明るいチームって勢いが出やすくなるんです。持っている力以上のものが出る。

 暗いチームだと負けたとき「なんでこんなにできないんだろう…」という思考に陥っていくんですけど、明るいチームは、練習などの裏付けさえあれば「やってきたことを信じていこう」となる。そうすると本当に思った以上に勝てたりして、いいサイクルにハマりやすい。多少負けても自信があるから落ち込まないし、贔屓目でなく、今のホークスは本当に強いと思います。目に見えない気持ちの強さがなければ、4年連続日本一なんて取れませんよ。

調子が悪い時こそ人一倍エネルギーを使うべき

ーームードメーカーという存在は、自分が調子のいい時はいいと思うんです。一方で、自分の成績が悪いときにチームを盛り上げるというのはとても難しくないですか?

 そうですね。特にプロ野球選手は個人事業主ですから。どんなにチームメイトに「頑張れ」と言っても、自分が試合に出続けないと意味がない。他のチームにも、自分のチームにも“敵”がいる。ライバルよりもひとつでも上に行きたいというのが本音で、そこはとても難しい部分だと思います。

 ただ、プロである以上、それは自分自身でいち早く解決するしかないんです。そのために、僕は調子が悪い時こそ人一倍エネルギーを使うべきだと思っています。頭を使ったり、考え方を変えたり、自分ととことん向き合う。

「イメージすること」の重要性

 それと30代に入ってから、想像することも重視しています。

 例えば試合前は、相手のピッチャーの球種を頭に思い浮かべます。そこから自分が打席に立って、三遊間に飛ばしたり、ライト前に打ち返したり…というのを想像して、目に見えない透明なラインを頭の中で引いていくんです。

 相手がホームランを打たせてくれなそうなピッチャーだったら、比較的簡単なレフト前とかセンター前に、無数にヒットになるラインを描いておく。そうすると意外とその通り打てたりするんです。

 これを言うと若い選手はポケーっとするんですけどね(笑)。イメージできないみたいで。でも、案外ベテランの選手はわかってくれるんですよ。それはやっぱり積み上げてきた成功例の違いなんでしょうね。

野球界の“熱い”松岡修造に

ーー松田さんは日本一も何度も経験されて、個人の表彰も受け、プロ野球選手として多くの実績を積んできています。一方で、それだけ長い間ずっと気を張っていて、モチベーションが下がることはないんでしょうか。

「もういいかな」というのは正直、一度もないですね。プロ野球選手には定年はありません。だから1つのホームラン、1つのヒット、1つの勝利を積み上げていって、現役生活が終わったときに、「何本ヒット打ったんだ」「こんなに打てたんだ」と思えるところまでいきたいんです。自分の数字をどれぐらいまで伸ばして現役を終われるか――。いまはそれがモチベーションになっています。

 あとは、ユニフォームを着ている以上、数字を伸ばすことは当たり前なんですが、その先の目標として、僕、野球界の松岡修造になりたいんです。だって松岡さん、“熱い”でしょ。初めて言いましたけど、実はずっと思っていました。

 僕が熱いと思うの、あの人くらいなんですよ。だから、野球界の松岡修造を目指して、2021年も頑張りたいと思っています! あぁ、ついに言うてもうた(笑)。

写真=三宅史郎/文藝春秋

(林田 順子)

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