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速水健朗『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』★★★★★★★★☆☆

速水健朗の新著『都市と消費とディズニーの夢――ショッピングモーライゼーションの時代』は、近年起こっている都市のショッピングモール化=ショッピングモーライゼーションについて論じている。

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都市と消費とディズニーの夢 ショッピングモーライゼーションの時代 (oneテーマ21)

  • 作者: 速水健朗
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/08/10

今回は、速水氏の著作にある3つの共通点から本書を紹介したい。

まず1つ目は、『自分探しがとまらない』や『ラーメンと愛国』などと同様、タイトルが魅力的だということだ。必ずしも書名は著者本人がつけるわけではないが、著者の優れた着眼点と内容があるからこそ、こうしたタイトルが生み出されるということは間違いない。

それは本書にもいえる。というのも、27歳にもなって言うのもなんだが、ショッピングモールを訪れたときに未だにぼくは、東京ディズニーリゾートに行ったときに湧いてくるあの祝祭的な昂揚感の、その何分の一かは感じてしまっているからだ。個人的には、ショッピングモールとディズニーランドが結びつくというのは、直感的にわかる。

事実、本書においてショッピングモールとディズニーランドは、ウォルト・ディズニーという人物を蝶番にして、歴史的に関連付けられる。

速水さんの批評の共通点2つめは「アメリカ」だ。

本は、著者がショッピングモーライゼーションと名付ける近年の現象をとっかかりに、その深層にある思想を海を渡ってアメリカにまで追い求め、さらにもう一度日本に戻ってショッピングモールの歴史を概観する、という壮大な構成をとっている。

この中で、特に興味深いのはショッピングモールに伏流する思想が扱われる2章と3章。日本の特に戦後史において、「アメリカの影」が超重要なファクターであったことを、氏の著作からは毎回思い起こさせられる。

そして最後、共通点の三つ目は対象へのフラットな視線だ。

ショッピングモールを構成しているのは「資本の論理」であると、本書は何度も指摘している。"資本の論理"や"ネオリベ"、あるいは"グローバリゼーション"というと、知識人の間ではほとんど脊髄反射的に反感を持たなければいけないということが「ルール」みたいになっている。

しかし、速水氏はそうした規範からは自由だ。本来は中流階級や富裕層の台頭の象徴と結びついている世界のショッピングモールを概観しながら、日本が「ショッピングモール途上国」であると指摘するあたり、しかめっ面をしたショッピングモール批判者らを挑発してさえいるようだ。好悪の感情はまず脇へおき、対象に深く潜ってみる。それが、前著『ラーメンと愛国』にも通じる氏のスタイルといえる。

この本に対して、能天気すぎるという批判が飛んでくることは想像に難くない。たしかに、現状で本書が「アッパーミドル」と名指す階層が日本にどれだけいるのかという疑問がなくはない。近い将来、もしかするとショッピングモールは、高すぎて自分では買えない商品群の横をクロックスで徘徊する「ゾンビ」に埋め尽くされるのではないか。そんな笑えない未来も想像できなくない。現状分析の比重が大きいことを物足りないと感じる読者もいるかもしれない。

だが、どちらにせよ、ここまで僕らの身の回りの「なくてはならないもの」になってしまったショッピングモールについて考察するうえで、本書が必須の参考文献になることは間違いないだろう。

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