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「PCRは毎週無料、ワクチンも開始」イタリアからみても日本のコロナ対策は遅い

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イタリアでは昨年暮れから新型コロナワクチンの無料接種が始まっている。ミラノ在住のジャーナリスト・新津隆夫氏は「イタリアでは自分のような在留外国人も無料でワクチンを接種できるし、PCR検査も簡単に受けられる。報道でみるかぎり、日本のコロナ対策には切迫感がなく、五輪開催に集団免疫の獲得が間に合うか心配だ」という――。

ローマの介護付き老人ホームで行われた新型コロナワクチン接種の模様(2021年1月7日撮影)
ローマの介護付き老人ホームで行われた新型コロナワクチン接種の模様(2021年1月7日撮影) - 写真=ロイター/アフロ

「家族が集まれないクリスマス」の後で

歴史に残るであろう「家族で集まることができないコロナ禍のナターレ(クリスマス)」。その連休明けの12月27日は「ワクチンの日」と定められ、欧州連合(EU)で一斉に新型コロナウイルスCovid-19のワクチン(以下「新型コロナワクチン」)の接種が始まった(実際の接種開始は28日から)。

イタリアでも毎週47万回分が供給される予定で、ワクチン接種計画表も発表された(接種はすべて無料)。

フェイズ1(1~3月)医療関係者と80歳以上の高齢者(国民の5%に到達)
フェイズ2(4~6月)60~79歳の人、免疫不全のある人や持病のある人、障がい者(国民の15%に到達)
フェイズ3(7~9月)エッセンシャルワーカー(生活業務従事者)、刑務所(国民の50%に到達)
フェイズ4(10~12月)残りの人々(国民の90%が接種済みに)。

筆者の接種順は「フェイズ2」

このカレンダーに従えば、筆者のワクチン接種の順番は、冒頭で挙げた4段階のうちのフェイズ2(4~6月)にあたる。イタリアでは在留外国人も労働ビザを持っている者は国民健康保険に強制的に加入することとなり(保険料は年金とともに税金に含まれる)、地域の保険を通して自宅近くの開業医をホームドクター(かかりつけ医)として指定される。

筆者一家のホームドクターは、60歳を超えたシチリア出身の独身の女医さんだ。とっつきは悪いが非常に熱心で、他の専門病院で受けた治療結果も必ずオンラインでみてくれている。(イタリアでは個々の受診者のカルテが、病院や診療科の枠を超えて一括オンライン管理されており、これは優れたシステムだと感じる)。これまでもインフルエンザなどのワクチンはホームドクターの元で接種してきたので、今回もなにかしらの連絡があるだろう。

問題はあるがありがたいイタリアの医療制度

順番待ちが長い、医師の当たりはずれが大きいなど、筆者や家族が経験してきたイタリアの医療に不満がないわけではない。それでも、滞在外国人も利用できる国民皆保険制度のおかげで、イタリア国民と同じタイミングでワクチン接種が受けられるのは率直にありがたいと感じる(別の話だが、コロナ給付金も支給された)。

軽症の場合は自宅待機となるのは日本と同様だが、PCR検査は日本よりもはるかに受けやすい。筆者の近所にも何人かいた自宅待機の感染者は、陰性になるまで1週間おきに検査を受けていた。

筆者には気管支拡張症という、悪化すると肺炎にもなる持病があり、昨年1月にこちらで肺炎球菌ワクチンの接種を受けた。その際に接した肺の専門医は「抗体はたくさんあるに越したことはない。ワクチンは打った方がいいと思う」と話していた。そうした経験もあって、個人的にはワクチンに対してはポジティブに受け止めており、新型コロナワクチンの接種についても、ホームドクターの判断に従うつもりでいる。

もし東京五輪が開催されれば、夏には仕事のために日本に行くことになるだろう。そのことを考えても、ワクチン接種は避けて通れなさそうだ。イタリアから日本のニュースをみていると、欧米に比べて新型コロナの犠牲者が極端に少ないことが、かえってワクチンで集団免疫を獲得することの必要性を実感しにくくしているように感じる。どうかするとヨーロッパより、社会活動の再開が遅くなるのではと心配だ。

厚生労働省の資料によると、日本でのワクチンの接種開始は欧米より2カ月ほど遅れそうだ。先行するイタリアでも、後述するようにワクチン接種はなかなか政府のスケジュール通りに進んでいない。果たして日本は、五輪開催までに必要なレベルの集団免疫を獲得できるのだろうか。

コロナ対応の医療関係者は優先接種

知り合いの医療従事者に聞いてみたところ、すでにコロナ患者に接する看護師や医者は優先的にワクチンを接種されたという。一方、同じ病院内でもリハビリ部門などのスタッフは後回しにされているとのこと。ミラノのコンピューター断層撮影(CT)検査センターの受付事務をしている友人は「ワクチン接種は医療関係者も義務ではない。アレルギーなどの不安を持つ人は拒否しているし、副反応の不安は払拭(ふっしょく)されていない」という。

しかしながら、イタリアでは昨年11月の時点で1500人以上の看護師が、また12月28日のデータでは273人の医師が、コロナ感染により命を落としている。すでにワクチンを接種した別の医療関係者の知人によると、彼女の病院では感触として医療スタッフの90%以上が接種しているだろうという(他人の接種の有無を口外するのは個人情報保護の観点から禁じられているため、はっきりしたデータは不明とのこと)。

地域ごとの接種状況にはばらつきが

年明け早々にワクチンの接種スケジュールが発表されると、イタリア国内には一様に安堵(あんど)の空気が流れた。とはいえ、イタリアでもっとも感染者の多い、筆者が住むロンバルディア州では、コロナ医療最前線といえるサッコ病院に届いた1万1000本の注射器のサイズが違っていて(しかも改めて取り寄せた次の注射器もサイズ違いだった)、接種開始が遅れる一幕もあった。

地域ごとの接種状況にもばらつきがある。イタリアは元々都市国家が集まってひとつの国を形成したという建国の歴史があり、現在でも各地方が持つ自治権が大きい。

イタリア北東部、南チロル地方にあるドイツ語圏のトレンティーノ=アルト・アディジェ州では、ワクチン接種に反対する人が多く、医療関係者を除けば予定の接種数をこなせていない。ボルツァーノ県評議会のトーマス・ウィドマン氏は「80歳以上の方と持病をお持ちの方は、感染したときのリスクが高いので接種してほしい」とメディアを通して訴えたが、この地方では接種開始1週間の目標である60%を大きく下回る、29%の住民にしか接種できていない。

注射器の入荷トラブルがあったロンバルディア州ミラノでは、この地でもっとも影響力を持つ右派政党「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ党首が毎日のように「ワクチンは不要! 義務化するな!」と大声で訴えている。サルヴィーニ党首はかつて連立政権を組んでいた左派政党「五つ星運動」のベッペ・グリッロと並ぶ、反ワクチン的主張で知られる政治家で、副首相兼内務大臣時代の2018年には、子供への各種ワクチン接種を義務づける法律の廃止において大きな役割を果たしている。

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