
新型コロナウイルス騒動で“受診控え”をする人が増えたことで、驚くべき現象が生じている。昨年1~8月は前年同期に比べて、インフルエンザや肺炎、急性気管支炎など、「呼吸器系の疾患」による死亡者数が1万4000人以上も減少したというのだ(厚生労働省が公表する死因別死者数より)。
【一覧】コロナ前(2019年)とその後(2020年)を比べの「心不全」での65歳以上の死者数は2295人減、「脳梗塞」では1915人減など、死者数の減少
さらに、注目すべきは「循環器系の疾患」の死者も前年と比べて7963人も減ったことだ。昨年1~8月の死亡者数を見ると、急性心筋梗塞は1万9797人で前年同期から1635人減、同様に心不全は5万5027人で2407人減、脳梗塞は3万7316人で1956人減となった。
新潟大学名誉教授の岡田正彦さんは、循環器系疾患の死亡者数が減ったことは、医原病(=医療ミスや過剰医療などによって、体調不良や病気が引き起こされること)と関連する可能性があると指摘する。
「心筋梗塞と脳卒中の薬にはさまざまな副作用があるので、受診控えによって服用をストップすることで死亡者数がむしろ減った可能性もあります。ただし、心不全の薬は適切に使えば症状を和らげるので、コロナによる受診控えが心不全の死亡者減につながった理由ははっきりしません」
血圧を下げる降圧剤についても、岡田さんは医原病のリスクを指摘する。
「特に降圧剤で血圧を下げすぎると、脳に血液が行き届かなくなり、認知症を加速したり、意識がもうろうとして転倒するリスクを高めます。降圧剤はのんでものまなくても5~20年後の死亡率そのものは変わらないとの研究もあるため、私は降圧剤はできるだけ処方しないようにしています」
生活習慣病全般の投薬リスクを指摘するのは『医者に殺されない47の心得』の著者で、医師の近藤誠さんだ。
「高血圧、高脂血症、糖尿病といった生活習慣病の薬でも、服用には必ずリスクがある。それぞれのリスクは軽微でも、生活習慣病の薬は服用者が数百万人から数千万人にのぼるため、医原病で亡くなる死亡実数はある程度の人数になると見込まれます。またコロナ禍においても、生活習慣病の患者の多くは受診と服用を続けているとみられ、薬による医原病は減っていないと考えられます」
コロナ禍は、医療のリターンとリスクをいま一度見直す良い機会なのかもしれない。
※女性セブン2021年2月11日号