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政府はコロナ禍をソフトランディングさせることができるか?

■3月一杯まで延びた「コロナ特別雇用調整助成金」

 「コロナ特別雇用調整助成金」は当初、2月一杯までということになっていたが、1月22日の厚生労働省の発表では、取り敢えず3月一杯まで延長されたらしい。

 その延長の判断指標は、「緊急事態宣言が解除された月の翌月まで」ということになったらしく、仮に2月7日で緊急事態宣言が解除されれば、3月一杯までということになり、緊急事態宣言の解除が3月までズレこめば、4月まで延長ということになる。

 しかし、緊急事態宣言の解除だけを指標にするのもどうかと思う。政府はマスコミの行き過ぎた報道を是正する力を有していないと思われるので、この先もコロナ禍は緊急事態宣言の解除に関係なく、収まらない可能性が高い。一旦、火が点いてしまった庶民のパニック心理は、感染状況の実体とは関係なく、そう簡単には収束しないのではないかと思われる。

 企業が「雇用調整助成金」をもらうために従業員を休業扱いにすると、当然、従業員に支払うお金は少なくて済む。しかし、当の従業員はそれで不満を感じているかというと、おそらく多くの人は今のままの方が楽だと感じているのではないかと思う。

■“フルタイムで10割の給料” vs “ハーフタイムで9割の給料”

 例えば、1ヵ月に20日間勤務の会社で、10日間を休業扱いにしている人がいた場合、10日間の給料は通常通り会社から支給されるが、残りの10日間は会社から給料は出ず、代わりに国から8割分の給料が支給されることになる。

 仮に、この会社の月給が20万円だった場合、10万円は会社から支払われ、8万円が国から支給されることになる。つまり、半分(5割)の労働時間で通常の9割分の給料が支払われることになる。

 会社から10万円 + 国から(10万円×80%=)8万円18万円

 どうしてもローンの支払い等で満額(この場合は20万円)必要というような人でもない限り、“フルタイムで10割の給料”と“ハーフタイムで9割の給料”を比較すれば、後者の方が良いという人がほとんどだろうと思う。

 倫理的に善いか悪いかはともかく、残念ながら、現制度は働かない方が得をするという制度になっていることは否定できない事実だ。

■「1日6万円のコロナ補償」は“売上”ではなく“利益”と比較するべき

 現在実施されている飲食店の夜間時短補償にしても、20時以降に営業しなければ、1日6万円が支給されることになっている。店舗の規模と従業員の人数にも依るが、数人程度の所帯であれば、6万円をもらった方が得だという店舗も結構あるのではないかと思われる。

 テレビのニュース番組で、「20時以降に10万円以上の売上があるのに、6万円では足りない」と言っている人がいたが、この意見は少しおかしい。

 国から支給される6万円を、店舗の売上と比較するのは間違っている。比較するべきは、売上から経費を除いた利益の方である。

 飲食業の利益率は比較的高いとも言われるが、実際は千差万別であり、牛丼チェーンのような店舗であれば、利益率はかなり低い。昔は利益率が数%と言われていた時もあった。

 多めに見積もって、仮に牛丼1杯500円で利益が100円だった場合、20時以降に牛丼600杯を売上げなければ利益は6万円に届かないということになる。20時以降に牛丼600杯も販売するほど繁盛しているような店舗があるだろうか? もし無いのであれば、国から6万円の補償金をもらった方が経営的には合理的ということになる。

■コロナ禍をハードランディングするべからず

 先述した企業と店舗の現状を観ると、コロナ禍による国の補償は、皮肉にも企業経営や店舗経営には欠かせないものになってしまっていると言うことができる。これらをいきなり打ち切って0にするとハードランディングして経営破綻する企業が数多く出てくると思われるので、さすがにできないだろうし、そのような梯子を外すような真似はするべきではない。政府は、いきなり0にするのではなく、段階的に支給額や支給率を引き下げていく手段を採ることが望まれる。

 現在、「コロナ特別雇用調整助成金」が8割支給なのであれば、6ヶ月単位か1年単位で7割、6割、5割、4割、3割…と引き下げていけば、どこかの時点(数年後)で、助成金をもらうよりも働いた方が良いという判断になると思われるので、被害を最小限に抑えてソフトランディングすることができる。

 政府からは「予算が無い」という言葉をよく耳にするが、その辺は全く問題ではない。

 国民に対して補助金や助成金を配ることを「お金を借りること」だと思っている人が大勢いるが、その発想は間違っている。正しくは「お金を増やしている」に過ぎない。

 国がお金を刷って配れば市場にお金が増える。そのお金は税収から得たお金ではないので、返さなければならないという理屈はどこかおかしい。

 お金の量が有限の金本位制であれば、借りたお金は返す必要があるが、お金の信用創造が罷り通っている現代の金融システム下では、税収に関係なくお金を増やすことができる。

 しかし、あまりにもお金を増やし過ぎることによる副作用は考慮しなければならない。現代の政治家が注意しなければならないことは、その副作用のみであり、税収の多寡ではない。

 コロナ禍をソフトランディングさせることができるか、それともハードランディングにしてしまうか。もし後者しか選択できないのであれば、それは人災であり、その政府は無能の誹りを免れない。

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