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毅然と生きた福島の人々

今日は、内外情勢調査会の講演で福島県のいわきに来ている。今年、いったい何度、いわきに来ただろうか、と思う。

拙著『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日』(PHP研究所)の「取材拠点」になったのは、このいわき市だった。

福島第一原発の吉田昌郎前所長とは東京でお会いしたが、吉田氏の部下たちには、ほとんどいわきを拠点に福島県内で取材させてもらった。すっかり馴染みの地である。

昨年3月、日本が危うく「三分割」されるという絶望的な状況で、凄まじい闘いを展開したのは、素朴な福島の浜通りの方々だった。私の取材にも、「あたりまえのことをしただけ」と、言葉少ない人がほとんどだった。

しかし、「家族」のため、「郷里福島」のために、暴走しようとするプラントと命をかけて闘いつづけた人々の姿に、私は何度も心を揺さぶられた。

力及ばず福島県内に大きな被害がもたらされた。その影響は、いつ果てるともなく現在もつづいている。避難を余儀なくされ、人生そのものが変わってしまった方も多い。そんな中で闘いつづけた無名の人々の姿を私は詳しく書かせてもらった。

今日の講演では、この原発事故のことと、私が2年前に出した『この命、義に捧ぐ』(集英社)の主役、根本博・陸軍中将のことを両方、話をさせてもらった。根本中将も福島出身の方だからだ。

毅然とした生き方を貫いた根本中将の姿が、私には、今回の事故の際、原子炉建屋に何度も命をかけて突入していった人々の姿と重なって見えた。

あの最悪の原発事故の中で、日本を救ったのは「福島の人々」だったことを忘れてはならないと思う。しかし、その人々が、今も自分がどこに勤めているか、知られないように生活しているのは事実だ。

東電に勤務していることが知られたら、非難に晒され、家族に迷惑がかかるという危惧は今もつづいている。あの事故を引き起こしたのが「東電」ならば、“日本三分割”という岐路にそれを土壇場で止めたのは、その東電の「現場の人々」だった。

東電への“怒り”と共に、現場への“感謝”は、同時代に生きる人間として、忘れてはならないもののように思う。

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