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焦点:空売り投資家に強まる風圧、中傷・殺害予告も


Svea Herbst-Bayliss

[28日 ロイター] - 世界的な株価上昇が続く中、ある企業の将来の株価下落に賭ける取引で利益を狙う空売り投資家が思わぬ苦境に立たされている。なりふりかまわず空売り投資家に戦いを挑もうとする市場参加者が次々に出現しているからで、ついには殺害をほのめかされる空売り投資家も出た。

ジム・チャノス氏が率いるキニコス・アソシエーツ、カーソン・ブロック氏のマディ・ウォーターズ・リサーチ、アンドリュー・レフト氏のシトロン・キャピタルといった名の知れた空売り業者は、研究者にとっては株式市場のリターンを正確に予測してくれるありがたい存在だ。しかし批判派から見れば、相場操縦をするひどい連中ということになる。

今週になって、彼らは再び脚光を浴びた。米ビデオゲーム販売のゲームストップや、米映画館チェーンのAMCエンターテインメント・ホールディングス、カナダのソフト会社ブラックベリーなどの銘柄に対し、個人投資家やアルゴリズムを駆使するトレーダーから買いが大量に流入。空売り勢のポジションはガタガタに崩されたのだ。

空売り投資家への非難は激しさを増している。事情に詳しい関係者によると、ネットに「用心した方がいいぞ」と書き込まれるばかりか、命を奪うという脅迫すらある。空売り投資家側が当局に捜査を要請する事態にもなった。

株式市場を舞台にした攻防という点で、最も象徴的なのはゲームストップ株の動きだ。複数の有力ヘッジファンドが値下がりに賭けていた中で、個人投資家主導の膨大な買いが入り、株価は1774%も跳ね上がった。

シトロン・リサーチのレフト氏は、標的企業を空売りする理由となる独自の調査結果を公表する手法を編み出した人物で、今回のゲームストップ株問題でも主役の1人。ネット上では今回、ずっと中傷を受けていると明かす。揚げ句の果てに、ある夜には注文した覚えがないピザが家に届き、さらには自身の名前で出会い系アプリ「ティンダー」に偽アカウントが作成されたという。

「空売りはもともと難しいものだが、低金利と政府の経済対策が株価を押し上げている最近の状況ではなおさら困難になった」と語るのスプルース・ポイント・キャピタルのベン・アクスラー氏。スプルースは企業が隠している「脆弱性」をあぶり出す綿密な専門調査が得意で、しばしば空売りも行う。

ただ空売り投資家は、今年は新たな局面に入ったと口をそろえる。レディットやロビンフッドといったプラットフォームが個人投資家間の強力な情報交換と取引の手段として普及。これと相まって、空売り投資家も自分たちの見解を単に投資銀行の調査部門だけでなく、もっと広範に伝える必要に迫られ、シーキング・アルファやツイッターなどにサイトを立ち上げるようになったからだ。

ハーバード・カレッジ・コンサルティング・グループが今月、24歳未満の投資家230人強に実施した調査では、31%が稼ぎを「手っ取り早く」したいと考え、30%がレディットを利用しているという事実が判明している。

足元では空売りのコストも増大した。金融分析会社S3パートナーズのマネジングディレクター、Ihor Dusaniwsky氏は、ゲームストップの株式を保有するミューチュアル・ファンドは少なく、貸株数は限られると指摘する。

S3パートナーズにデータに基づくと、ゲームストップ株での貸株料率は30.58%。市場で最も空売りされているテスラ株と比べると、100倍を超える高コストという。

一方、AMCエンターテインメント、ベッド・バス・アンド・ビヨンドなどの株価が天井知らずの高騰を見せていること自体が、投資家のさらなる先高観測を強めている。

レフト氏も今年の荒っぽい取引が市場の地合いそのものにも影響を及ぼしていると認める。「1人の5歳児がかかってくるなら私も受けて立てるが、1000人でかかって来られてしまったら、とてもかなわない」と語る。同氏はゲームストップ株の急上昇に伴い、空売りポジションを手じまった。「私は市場を尊重する気持ちを持っている」と負けを認めている。

こうしたショートスクイーズ(踏み上げ)は苦い教訓だ。

ヘッジファンドのケリスデール・キャピタルを率いるサム・アドランジ氏は「われわれの仕事は、企業の実態について、企業側が説明し投資家が考えているようなものではないと証明することだ。自分の投資先の綿密な調査をしない市場参加者が増えているご時勢に、われわれのやり方が1つのマーケットになっているのは間違いない」と強調する。一方で、ひとつ間違えれば、傷はとてつもなく大きくなる以上、慎重の上にも慎重を期す必要があると付け加えた。ケリスデールもこれまでしばしば、標的企業の調査結果を公表した上で空売りを仕掛けてきた。

スプルース・ポイントのアクスラー氏も「空売り投資家にとってハードルは上がり続けている」と環境が逆風であることに同意する。

それでも同氏は「われわれもいつかまた日の目を見られる」と述べ、特に金利が再び上昇し、政府の経済対策が途切れる時期がチャンスだとの考えを示した。

(Svea Herbst-Bayliss記者)

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